シネマピア
わたしは生きていける
第三次世界大戦、勃発。16歳の少女は、それでも生きたいと願う......。『つぐない』で、当時弱冠13歳にしてアカデミー賞助演女優賞ノミネートを果たした若手実力派女優、シアーシャ・ローナン主演により、同名タイトルのベストセラー小説を映画化。世界終末の絶望の中、少女の希望が輝きを放つ異色のサバイバル・ストーリー。
今よりそう遠くない未来。生まれたときに母親を亡くしたデイジー(シアーシャ・ローナン)は、周囲に固く心を閉ざす16歳のパンキッシュなアメリカ人少女。ひと夏を過ごすため、イギリスに住む叔母と従兄弟たちのもとに送り出されたデイジーだったが、やはり誰にも心を許さずに、思春期をこじらせたつっけんどんな物言いばかりしてしまう。長男を一目見たときから芽生えた恋心をひた隠しにしながら。だがある日、どこからともなく轟音が響き渡り......。
本作では、戦争が始まった原因を示す描写はどこにもない。若くして......そう、青春の真っただ中で、屈折しながらも人生を一歩一歩歩んでいた若者が、「生きる」ために戦いから逃れ、国の統制から逃れ、道なき道をただひたすら逃げ続ける。その原動力となる純粋な恋心を、シアーシャが切々と演じる。出会ってから何日も経っていないのだから恋に恋しているような状態なわけだが、だからこそその恋は美しく、戦禍の過酷な状況との対比が際立つ。平時では起きることのない悲惨な出来事のひとつひとつが、デイジーというひとりの女性を強くし、大人にしていく。
もしも戦争が始まったなら起こるであろうリアルな描写の数々には、思わず目を覆わずにいられない。さほど遠くない時代設定だからこそ、それらを単なる架空のものと一蹴することができないのだ。「集団的自衛権」の文字をニュースで見ない日はなくなった昨今の日本で、この時期に本作が上映されるという偶然。それはあくまで"偶然"なのだろうが、今だからこそ、本作を鑑賞することは大きな意味を持つように思えてならない。
原作: メグ・ローゾフ「わたしは生きていける」(理論社)
監督:ケヴィン・マクドナルド『ラストキング・オブ・スコットランド』『消されたヘッドライン』『運命を分けたザイル』
脚本: ジェレミー・ブロック、ペネロペ・スキナー、トニー・グリゾーニ
出演:シアーシャ・ローナン『ラブリーボーン』『ハンナ』『ビザンチウム』、ジョージ・マッケイ『ディファイアンス』、トム・ホランド『インポッシブル』、ハーリー・バード、アンナ・チャンセラー
配給: ブロードメディア・スタジオ
公開: 8月30日(土)、有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
公式サイト:http://www.howilivenow.jp/
©The British Film Institute/Channel Four Television Corporation/ HILN Ltd 2013
Tweet |