シネマピア
メイズ・ランナー
巨大な迷路に囲まれた少年たち。はたしてここから生きて脱出することはできるのか? この迷路に隠された秘密とは? 全米をはじめ55カ国で初登場NO.1という空前のメガヒットを記録した本作。1年間に渡りニューヨークタイムズのベストセラーリストにとどまった大人気小説を原作に、あらゆる謎が観る者を包み込むSFミステリー大作だ。
上昇するリフトの中で意識を取り戻した主人公。到達した地上は広場となっており、周りを高い壁に囲まれている。「先住民」である他の少年たちが言うには、この壁は迷路であり、誰一人としてここから外の世界へ出ることができた者はいないのだという。かくして、主人公もまた迷路の秘密を解くべく、少年たちの仲間に加わるのだが――。
密室の中の集団。それも思春期真っただ中の同年代の男性が大多数の集団……ということは、あんなことやこんなことが? と想像せずにはいられないのだが、彼らは全員品行方正で理性の強い性質なのか、そうした暗部の描写は一切ない。そもそも本作自体がティーンズ向けであり、主題も「そこ」ではないので、そうしたことがあろうがなかろうがそれは彼らのプライベートな部分であるので、そもそも描く必要はないのだ。他にも諸々、リアルそうに見えて実はリアルではない、まるで「童話」のような描写がもどかしい。サバイバルものと来ればダニー・ボイル監督の『ザ・ビーチ』のエグいリアリティをどうしても求めてしまう。だが、本作の客層はティーン狙いなのだから、それを望むのは酷といえば酷なのだ。
人間という生物が集団になり、社会を形成したときに生じる仲間意識、ヒエラルキー、なわばり意識、規律、規律を破る者……そうした要因が入り乱れて揺れ動くさまが本作の人間ドラマの大半を形作る。大作ならではのダイナミックなアクションの演出にも大いに驚かされ、楽しめるところだ。
原作が3部作ということもあり、本作ですべてが完結しているわけではない。かなりの謎が残されたまま、というよりは謎の上にまた新たな謎が積み重なり、観客に欲求不満を残させてのジ・エンド。続編が絶賛製作中とのことなので、頭にはてなマークをぎっしり詰め込んだままその続編を待たねばならないのが、ちと辛すぎる。製作者側にとってみれば、観客を「待てない気持ち」にさせることが成功のひとつの基準点だろう。私もまた、まんまとその策略にはまった一人だ。
原作: ジェイムズ・ダシュナー「メイズ・ランナー」
監督:ウェス・ボール
脚本: ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T. S. ノーリン
出演:ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラリオ、アムル・アミーン、トーマス・ブロディ=サングスター、キー・ホン・リー、ウィル・ポールター、パトリシア・クラークソン、ブレイク・クーパー、デクスター・ダーデン、クリス・シェフィールド
配給:20世紀フォックス映画
公開:5月22日、TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/mazerunner/
©2014 Twentieth Century Fox Film
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