シネマピア
シグナル
僕はいったい何と接触し、どんな途方もない力を手に入れてしまったのか――? 『マトリックス』シリーズのローレンス・フィッシュバーンをキャストに迎え、USAトゥデイ誌に「スタンリー・キューブリックとデヴィッド・リンチを合わせたような作品」とまで言わしめた本作。先の読めないストーリー展開に翻弄される、新時代のSFスリラーだ。
恋愛面が上手くいかなくとも、外見がちょっと残念であっても、不自由な肉体を持ってはいても、青春を懸命に生きている仲良し男女3人組。大学のPCをハッキングしてきたハッカーの居場所を突き止めたはいいが、乗り込んだ先は廃墟と化していた......。
内容を説明しすぎる映画には興醒めするが、説明が足りなすぎる映画もまた欲求不満が残る。本作は明らかに後者であり、それを自覚しているのだろうか、マスコミ向けパンフには監督インタビュー形式での作品説明がある。それだけ難解なのだ。謎が謎を呼び続けて雪だるま式に膨れ上がったとしても、ラストですべてが氷解するのならそれこそがミステリーの醍醐味だ。だが、本作のラストを観てそれまでの謎がすべて解ける観客は非常に少ないだろう。作品を作っている側は中身を知り尽くしているため、どうしても主観的に作品を作り上げてしまう。「観客にどの程度伝わるか」を、事前に、客観的に、作品の外側から知ることは実に難しいことなのだ。
とは言え、こうした謎だらけ手法は悪い面ばかりとは限らない。例えば日本のアニメ作の『エヴァンゲリオン』シリーズでは、それこそ謎解き自体が観客の楽しみであったりもする。本作も同様、わからなくて結果匙を投げるのではなく、鑑賞後には謎を知りたくて知りたくてたまらなくなってくるのだ。
USAトゥデイ誌が言う「スタンリー・キューブリックとデヴィッド・リンチの再来」も、まさにそういった要因にも端を発しているだろう。本作はとにかく無口、寡黙なのだ。テイストのダークさで人を惹きつけ、SF好きの欲望をすべて叶えるかのようなストーリーが素晴らしい。願わくは、先の監督インタビューの内容を盛り込み、観客によりわかりやすい説明を加え、将来ぜひともセルフリメイクをして頂けないだろうか。それくらい、SF好きを虜にしてしまう作品なのだ。
監督:ジャウム・コレット=セラ『アンノウン』
脚本:ブラッド・イングルスビー『ファーナス/訣別の朝』
出演:リーアム・ニーソン『シンドラーのリスト』『フライト・ゲーム』、エド・ハリス『アポロ13』『ポロック 2人だけのアトリエ』、ジョエル・キナマン『ドラゴン・タトゥーの女』『ロボコップ』
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:5月16日(土)全国ロードショー
公式サイト:run-allnight.jp
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