ikkieの音楽総研

第154回 洋楽編 PRINCE ―― 追悼プリンス 〜 比類なき才能の貴公子、逝く 

2016 / 04 / 26

熊本を中心とする九州地方の大地震の被害にあわれた方、ご家族やご友人が被害にあわれた方、皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興と復旧を祈っています。こういう時になんと言葉をかけていいものか、こういう原稿を書いていていいものか……と、何かが起こるたびに悩んでいますが、被害にあっていない地域に住んでいるならば、変わらぬ生活を送ることも重要だと自分に言い聞かせ、今回も原稿を書かせていただきました。音楽総研を読んで、少しでも楽しい気分になってもらえたら幸いです。

prince1604b.jpg ……と、楽しい原稿をなんとか書こうと思っていましたが、またしても悲しいニュースが飛び込んできました。4月21日、プリンスが亡くなってしまったとのこと。この原稿を書いている時点では死因ははっきりとしておらず、インフルエンザが悪化したなどの噂が流れています。昨年のMOTÖRHEADの2人に続き、今年に入ってからデイヴィッド・ボウイ、グレン・フライ(EAGLES )、キース・エマーソン(EMERSON, LAKE & PALMER )……、他にもここには全て書けないほど、ロック界のレジェンドたちが立て続けに亡くなっていて、今年はいったいどうなっているんだと思っていたところにまさかの訃報……。先にあげたアーティスト達は高齢だったり、あまり表舞台に出てこなくなっていたりと、ある意味で諦めがつくようなところもあったけど、プリンスはまだ57歳で、しかも昨年アルバムを発表したばかりだし、ライヴも精力的に行っていた。プリンスが亡くなるなんて想像もしていなかったし、今でも信じられない……。

プリンスは78年(当時なんと19歳!)にデビューしたミネアポリス出身のアメリカ人アーティスト。ファンクやR&B、ロック、ソウル、ヒップホップなどの様々なジャンルを自身の音楽に取り込みつつ、そのジャンルの垣根を軽々と越えた独自のサウンドを作り上げ、一般の音楽ファンはもとより、世界中のアーティストから絶大な支持を得ています。デビュー以来、ほぼすべての楽曲の作詞・作曲、アレンジ、プロデュースをプリンス自身が手がけており、さらにレコーディングではほとんどの楽器を一人で演奏。しかも、どの楽器を演奏しても超一流という、おそるべき才能の持ち主です。そして、一時期を除き、デビューから常にオリジナルアルバムを年に最低でも1枚(2枚以上の年も)発表する驚異的な創造力……。あんまり安易には使いたくない言葉ですが、プリンスは、まさに天才でした。

『Let’s Go Crazy』
プリンスはYouTubeを嫌っていたらしいのでちょっと悩んだんだけど……、
やっぱり紹介させてもらいますね。
この曲のエンディングの激しいギターにやられました。
 


俺が初めてプリンスを聴いたのは84年発表のアルバム、『Purple Rain 』が大ヒットしていた頃だったんだけど、しばらくはプリンスのナルシスティックなルックスや、ねっとりとした歌い方がちょっと苦手でした。当時の俺はまだ小学生だったし、まさに紫色をしたプリンスのエロティックな世界観は、ちょっとセクシー過ぎたかも。それでも『Let’s Go Crazy 』のエンディングのギターソロを聴いて……そう、最初は歌ではなくギターでした。狂おしく叫ぶかのような激しいギターに、「俺もこんな風に弾いてみたい!」と、心を鷲掴みにされちゃったんだよね。もちろん、キャッチーで不思議な中毒性のある楽曲たちの魅力に気付くのにはそう時間がかからず、気が付けばプリンスの音楽そのものに夢中になっていたんだけど。プリンスのギターは、シンガーとしては上手いといったレベルではなく、専業ギタリストと比べてもまったく遜色がないどころか、世界でもトップクラスの実力だ。ファットなサウンドと、慟哭する泣きのギターは、一聴してすぐにプリンスだとわかる個性的なものだし、もっと評価されてもいい。まだまだ過小評価されていると思うよ。歌の印象が強過ぎるのかなあ。

『The Morning Papers』
こういう優しい曲もプリンスの魅力です。
ちょっとCULTURE CLUBを思い出すのは俺だけかなあ。
 


また、THE BUNGLESシーラ・E など、他のアーティストに提供した楽曲も多く、とにかく才能に溢れた人だったと改めて思う。しかも良い曲ばかり! シニード・オコナー (シネイド、シンニードとも表記)が歌った『Nothing Compares 2 U 』なんて、超が付く名曲だ。そして、どの曲からもプリンスらしさを感じるんだよね。どの曲もプリンスが歌っているところが想像出来る。本当に特別な人だった。

近年のプリンスは、YouTubeをはじめとするインターネット上での著作権問題などから、ミュージックビジネスに不信感を抱き、毎年必ずなんらかの形で発表していたアルバム(サウンドトラックも含む)の製作を止めていたりもしたけど、14年には活動を再開、この2年の間に4枚のアルバムを発表するという旺盛な創作意欲を見せていただけに、今回の訃報が残念でならない。プリンスはこれまでに何度か来日しているけど、毎回タイミングが合わず、実はライヴを観たことがなかった。次は絶対に行こうと思っていたのに、それはもう無理なんだな……。まだ信じられないけど……。

『Purple Rain』
圧巻……!! ほんとに惜しい人を亡くしました……。
 












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