ikkieの音楽総研

第159回 洋楽編 AEROSMITH ―― スティーヴン・タイラーが衝撃の解散宣言......その真偽のほどは?!

2016 / 07 / 05

先日、ラジオ番組に出演したスティーヴン・タイラーが、AEROSMITHは解散すると発言して世界中のロックファンを震撼させた。来年フェアウェル(さよなら)ツアーを行って、それでバンドは解散するという。ただし、フェアウェルツアーは永遠に続くかもしれないよ、とジョークを交えて語っており、真偽のほどはわからない。ジョー・ペリーは、フェアウェルツアーを行う可能性は高いがあくまで選択肢のひとつだ、とインタビューに答えているし、なんとなくスティーヴンの先走りのような印象も受けるんだけどね......。さて、今回はそのAEROSMITHを久しぶりに取り上げますよう!

  aerosmith0705.jpgAEROSMITHは73年にスティーヴン・タイラー(Vo)、ジョー・ペリー(G)、ブラッド・ウィットフォード(G)、トム・ハミルトン(B)、ジョーイ・クレイマー(Dr)の5人でデビューしたアメリカを代表する......というより、現存するロックバンドの中では世界一と言ってもいいほどのバンド。そして、そのデビュー以来、ジョーとブラッドの一時脱退はあるものの、デビュー当時のメンバーのままで活動を続けている稀有なバンドでもある。オリジナルメンバーのまま一度も解散せずに40年以上活動していて、なおかつ第一線で活躍し続けているバンドとなると、AEROSMITH以外にはいないんじゃないか(THE ROLLING STONES はさらにキャリアが長いけど、亡くなったメンバーもいるしね)。そして、AEROSMITHは今なお現役のバンドとして、発表の間隔は年々開いてきているものの、新作も発表しているし、全盛期のメンバーで再結成しても、残念ながら懐メロバンドと化していることも多い他のベテラン達とは違う。 それでも、AEROSMITHの活動は決して順風満帆だったわけではなく、今回のような解散の噂が出たのも一度や二度じゃない。先に書いたようにジョーとブラッドが脱退していた時期もあったし、トムとジョーイが体調不良で離脱していた時期もあった。トムとジョーイの体調は回復しているそうだけど、全員がもう60代だし、何が起こってもおかしくない年齢になってきているんだよね......。そして、体調不良以外の解散の危機は毎回スティーヴンと他のメンバーとの確執だとされているのも気になるところ。その時々で確執の原因は違うようだけど、スティーヴンはバンド外での活動にも積極的なようだし、前回の解散騒動も、個人での活動を優先するかのような発言をして、他のメンバーの怒りを買ったことが発端だったはず。

『Back in the Saddle』
  AEROSMITHといえばこれ! という曲は、
人によっていろいろあると思うけど、俺はこの曲かな。
イントロのドカーンと爆発するところはライヴで聴くと超アガる(笑)。
 


以前から引っかかっていることがある。来日公演で大ヒット曲の『I Don't Want to Miss a Thing』 を演奏中、スティーヴンの花道に飛び出しての熱演に客席が大いに盛り上がっているのに、他のメンバーがひどく退屈そうにしていたんだよね。とくにジョーは、まったくやる気がなさそうにアンプに寄りかかってギターを弾いていて思わず笑ってしまったんだけど、ジョーに限らずあんなふうに演奏しているアーティストを見たことがなかったから、ちょっとショックだった。そういう演出だったのかもしれないし、それほど気にすることでもないのかもしれないけど、普段のジョーとはあまりに違ったからね。もう10年以上前のことなのに、いまだにはっきりと覚えている。......賭けてもいい。スティーヴン以外のメンバー......、少なくともジョーはあの曲が好きじゃないはずだ。

『I Don't Want to Miss a Thing』
 ヒットメーカー、ダイアン・ウォーレン作曲。
この人の他の曲は嫌いじゃないし、これも良い曲だけど......
エアロがやらなくてもなあ。
 


『I Don't Want to Miss a Thing』は良い曲だし、シンガーとしては歌い甲斐のある曲だろうと思う。それでもポップ過ぎるし、外部ライターが書いた、いわゆる売れ線狙いの曲なわけで、大ヒットもしたけど、AEROSMITHがやるべき曲じゃなかったと思う(元々はスティーヴンのソロ曲じゃなかったかな?)。ライヴであの曲を聴くたびに、バラードならもっと良い曲が他にあるでしょ、と思うし、あの日のジョーのやる気がなさそうな姿を思い出す。スティーヴンはAEROSMITHの絶対的なシンガーで、バンドの方向性もスティーヴンが決めれば良いと思うけど、良い曲であれば売れ線でも厭わないというスティーヴンと、売れ線でも曲による......というような他のメンバー達との温度差が見え隠れするんだよね。そして、その温度差は、現在のスティーヴンのセレブ的な活動というか、単なるロックシンガーに留まらない活動の理由であるようにも思う。

『What it Takes』
 エアロのバラードなら俺は断然こちらを推します。
これも外部ライターとの共作だけど、男臭くてものすごくエアロっぽい。
このアルバムのツアー観に行ったなあ......
 


良い意味で単なるロックバンドの楽器陣と、AEROSMITHという巨大な器からもはみ出しそうなスティーヴン。40年以上もバンドをやっていると、そりゃいろいろあると思う。それでも、あの5人が集まった時の爆発的なケミストリーは、何物にも代えがたい特別なものだ。どんなバンドでもいつかは解散する。それはわかっている。わかっているけど、もっともっと先のことであってほしいなあ......。











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