ikkieの音楽総研

第175回 洋楽編 SIA ―― 顔の見えないシンガー、シーア......魂の慟哭

2017 / 01 / 17

年が明けてから、日に日に寒くなっている気がしますねえ。どこか南の島にでも移住しようかしら……なんてことをなかば本気で考えている今日この頃でございます。1月21日にはTAI-ONの新年一発目のライヴ(LOVE TKO にて!)があるんだけど、雪が降ったりしませんように。さて、今回の音楽総研はソングライターとしても知られるシンガー、シーアをご紹介! シーアの歌声は、俺にとってここ何年かで一番の衝撃でした。

m170117sia.jpg シーア はオーストラリア出身のシンガー・ソングライター。90年代半ばにCRISPなるバンドで活動を開始し、97年にソロシンガーとしてデビュー。数年の間、シンガーとしては商業的に成功せずにいたものの、ビヨンセ リアーナ ブリトニー・スピアーズ などの大物アーティスト達に楽曲を提供し、ヒットメイカーとして名を知られるようになる。しかし、シーア自身はあまり表舞台に出なくなっており(バセドウ病を発症したせいもあったとか……)、日本での知名度は低く、俺も彼女のことは知りませんでした。CRISPはアシッドジャズのバンドだったというから俺の守備範囲ではないし、ビヨンセやリアーナの曲を誰が書いているか、なんてことは気にしたこともなかったしなあ。

俺がシーアの歌声を初めて聴いたのは2年ほど前のこと。友人宅でケーブルテレビに流れていた『Chandelier 』のPVを観たんだけど、それまではなんとなく画面を観ていただけだったのに、まず少女ダンサー(マディー・ジーグラー)の奇妙なパフォーマンスに興味を惹かれて画面に釘付けになり、さらに、叫び……というより、慟哭に近いシーアの歌声を聴いた途端に鳥肌が立ってしまった。シンガーとしてのテクニックはもちろん、それを超えた“魂”とでも言うべき力を感じさせる歌声。感動したというよりも、マディーの奇妙かつ凄まじいパフォーマンスとあわせて、「これは何なんだ?」という驚きのほうが大きかったと思う。衝撃だった。

『Chandelier』
 このPVは本当に衝撃的でした。
シーアの歌声とマディーのパフォーマンスの相乗効果で凄いことに!圧巻。
 


PVにはシーアがまったく出てこないので、どんな人だろう……と検索してみると、なんとシーアは一切顔を出さずに活動をしているらしく、またしても驚いた(活動初期には顔を出していたようだけど)。ライヴやテレビに出演しないわけではなく、テレビに出演しても顔の半分が隠れるウイッグをかぶり、さらに後ろを向いて歌うという徹底ぶりで、ほとんどやらないというライヴでも、やはりそのスタイルらしい。顔を出さずに活動をしている理由は諸説あるようだけど、見た目ではなく、音楽で判断をしてほしい、という気持ちもあるようだ。日本人の俺の感覚では、欧米の女性アーティストは過剰なセックスアピールが歌の邪魔をしていると感じることも多いし、見た目を売りにせず、音楽だけで判断するのは賛成なんだけど、PVやライヴではアーティストの表情も重要だったりするよね。しかし、その足りない部分はダンサーのマディーがかなりの割合でカヴァーしている……どころか、シーアの魅力を倍増させているといっていい。

『Alive』
 登場するのは日本の天才空手少女、高野万優ちゃん。
なんと、女優の土屋太鳳がマディーばりの素晴らしいダンスを披露する別バージョンのPVもあります。
 


近年のPVにはマディーが登場しているものが多いし、テレビ番組でのライヴ(生演奏という意味で)でも、まるでシーアの分身かのようにマディーがパフォーマンスをしていて、楽曲のメッセージを余すところなく伝えているし、ステージの隅で後ろを向いて歌うシーアの背中からも、それは十分に伝わってくる。ここでいうメッセージとは歌詞の具体的な内容のことではなく、その歌に込められた感情やソウル……魂のこと。顔を見せないからこそ、マディーが踊っているからこそ、観客はシーアの歌声に集中出来るんだろう。ライヴなのに! こんなの見たことないぞ……。

『The Greatest』
 明言はされていないようだけど、フロリダで起きたゲイクラブの襲撃事件の犠牲者に捧げられたPVだそう。
マディーを含めて49人のダンサーが(事件の犠牲者と同じ人数)パフォーマンス。
マディーが流す虹色の涙が印象的……(レインボーカラーはLGBTの象徴です)。
 


シーアの歌声は、静かに歌う低音パートでは黒人かと思うほどの深みがあって、激しく歌う高音パートはロックシンガーのように力強く、ところどころでしゃがれたりもする。そこがまた楽曲の切なさを加速させていて、すごくソウルフル。歌い手としてのタイプも声質もまったく違うんだけど、ジャニス・ジョプリンを連想したりもした。世の中にはパフォーマーやエンターテイナーとして優れているシンガーもたくさんいるし、それはそれで素晴らしいけど、俺はやっぱり、歌そのものに力のあるシンガーに魅力を感じる。技術的な巧拙の問題じゃなくて、どれだけ歌に魂を込められるか。物凄く上手いのに、心に響かない歌を歌うシンガーっているでしょ? 楽器の演奏もしかり。上手いだけの人には、感心はしても感動しないんだよね。シーアは技術的にも優れているけど、その技術は感情を伝えるために必要なもの。そう、シーアは感情的なだけのシンガーとも違う。さらにソングライターとしても優れている。……凄いね。

欧米でもほとんどライヴをやっていないようだから、日本でライヴが観られる可能性は低そう。それでも、この歌は生で聴いてみたい。日本に来てくれないかなあ……。そしてもしも実現するなら、その時はぜひマディーも一緒に!



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とにかくここから  アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/ 













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