ikkieの音楽総研

第201回 邦楽編 E.Z.O――Most Underrated Band in the World......過小評価され過ぎ!

2018 / 02 / 06

ここ何年か、家にいる時はiPadに入れてあるアプリで海外のラジオをよく聴いています。AccuRadio というそのアプリはかなり細かくジャンル分けされていて、なかでも特に気に入っているのがMÖTLEY CRÜERATTPOISONといった青春時代に聴きまくっていたバンドばかりがかかる「80s Hair Metal」というチャンネル。すっかり忘れていたような懐かしい曲がかかることが多くて、いつもワクワクしながら聴いているんだけど、この間、日本のバンドのE.Z.O がかかってびっくり。E.Z.Oはアメリカを拠点にして活動していたわけだから、海外のラジオでかかってもおかしくないわけだけど、海の向こうにも浸透していたんだな、となんだか嬉しくなりました。さて、今回はそのE.Z.Oをご紹介! デビュー時の「隠れて何をしていたんだ?」というキャッチコピーがHR/HMファンの間でけっこう流行ったっけ。

20180206_ezo.jpg E.Z.O(イー・ズィー・オー)は、もともと85年にメジャーデビューした札幌出身のFLATBACKER という4人組のヘヴィメタルバンドで、渡米を機にE.Z.Oに改名。87年にアメリカの名門レーベル、ゲフィン・レコードより世界規模でのメジャーデビューを果たしています。これにはけっこう驚いたなあ。LOUDNESSVOW WOWが海外進出を果たしていたとはいえ、まだまだ数は少なかったし、それがFLATBACKERだったというのも意外でね。というのも、FLATBACKERはパンク寄りのかなり過激な歌詞やサウンドで知られていて、日本でもちょっとマニアックな存在だったから、当時のアメリカのロックシーンに合うとは思えなくて。俺の周りでも、「あのFLATBACKERが?!という反応が多かったように記憶しています。加えて、プロデューサーがKISSのジーン・シモンズだというニュースもファンを困惑させる要因だったと思う。FLATBACKERとKISSのサウンドにはほとんど共通点がないし、ジーンがプロデュースなんて凄いと思いつつも、何かの間違いなんじゃないかって気もしていました。

『House of 1,000 Pleasures』
サウンドのみ。E.Z.Oのデビューアルバムのオープニングトラック。ロック史上に残る名リフ!
MASAKIの日本人離れしたヴォーカルも凄い!
 


そうして発表されたE.Z.Oとしてのデビューアルバムは、KISSみたいなサウンドにはなっていなくて安心したけど、予想をはるかに超えた凄まじく完成度の高いハードロックアルバムに仕上がっていて、ほんとにびっくりした。FLATBACKERの完成度が低かったってことじゃないよ、もちろん。E.Z.Oの完成度が高過ぎるのと、もう別のバンドだと言っていいほどサウンドが変わっていたんだよね。聴こえてくるのはたしかにMASAKIの声だし、個性的なギターワークは間違いなくSHOYOだ。でも、FLATBACKERではない……。英語で歌われることで、歌詞からは特徴的だったパンキッシュな要素が感じられなくなったし、FLATBACKER時代のヘヴィさを保ちつつも、曲によってはオシャレ(!)と言ってもいいほどサウンドが洗練されている。この変化は、FLATBACKERの過激さが好きだったファンには厳しかったんじゃないかなあ。俺の場合は……正直に言うと、FLATBACKERは俺の好みからするとアグレッシヴ過ぎたから、この変化は大歓迎でした。そして、これならLOUDNESS以上に成功するんじゃないの?! と思ったのは俺だけじゃないはず。GREAT WHITEGUNS N’ROSESとのツアーも好評だったようだし、アメリカで大成功してもおかしくなかったのになあ。……そう、E.Z.Oは大きな成功を収められないまま、たった2枚のアルバムを残して90年に解散してしまったのです。

『Here it Comes』
これが最初のシングルじゃなかったかな? FLATBACKERとのあまりの違いにびっくりしたなあ。
ミステリアスな雰囲気がほんとにカッコイイし、今になってようやく時代が追いついた感じがするね……。
 


解散して以降の彼らは、MASAKIとHIRO(Dr)がLOUDNESSに加入して、またしても驚かされたけど、00年のLOUDNESSのオリジナルメンバーでの再結成に伴って脱退。その後、HIROはANTHEM に加入し長らく活動を続けていたものの、交通事故の際に負った怪我などの影響から脱退してしまう。MASAKIはニューヨークを拠点にしているインディーズバンドでベースを弾いていて、YouTubeなどでそのサウンドを聴くことが出来るけど、正直なところ、MASAKIほどの人がやるレベルのバンドだとは思えない。しかも今はなぜかベーシストだ。TARO(B)はミュージシャンとしては引退してレコード会社のディレクターになっており、SHOYOはなんと寿司職人 (!)になっているという。

『Million Miles Away』
セカンドアルバム『Fire Fire』収録。曲だけ聴くと日本のバンドだと思えないよね。
 


あれほどの才能を持った人たちが、今はほとんど表舞台で活動していないという事実に、改めて愕然とする。唯一メジャーシーンで活動していたHIROも最近はあまり表立った活動をしていないようだし、寂しい限り……。E.Z.OやFLATBACKERの再結成は難しいと思うけど、違う形でもいいから、またそれぞれの音楽を聴かせてほしいなあ(MASAKIは歌を)。そして、その時には言わせてもらいたい。······隠れて何をしてたんだ?

(文中敬称略)


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