ikkieの音楽総研

第35回 洋楽編 THIN LIZZY
――"アイリッシュ・センチメンタル"に浸ってみる秋

2011 / 09 / 20

気がつけばもう9月も半ばを過ぎてしまいましたねえ。それでもこの暑さは続くんですかねえ……。
さて、今回は涼しそうなお国、アイルランドの英雄とも称されるアーティストを紹介しましょう。「THIN LIZZY」です!

THIN LIZZYは1971年にデビューして1983年に解散するまで、数々の名曲を発表し、活動の中心だった英国のみならず、世界中で愛されたバンドです。ここ日本でも大人気だったらしいけど、「LED ZEPLLIN」ほど知られたバンドではないし、本格的なロックファンじゃないと知らなかったりするのかな?
俺はリアルタイムではほとんど知らなかったから、その辺はよくわからないんだけど……。ごぞんじでない方もこの機会に聴いてみてくださいね。ブリティッシュ・ロックの魅力を、これでもかと体現しているバンドです。

thinlizzy.jpg 俺は「ゲイリー・ムーア」が在籍していたことで、その存在を知りました。メンバーたちはTHIN LIZZY以外でもいろいろとゲイリーと共演していて、例えば、ゲイリーの代表曲『パリの散歩道 』では、バンドの中心人物フィル・ライノットが歌っています。

そうそう、「WHITE SNAKE」にいたギタリスト、ジョン・サイクスも在籍していました。WHITE SNAKEにジョンが加入して初めてのアルバムをレコーディング中に、フィル・ライノットが亡くなって、その死を悼んだジョンがスタジオに帰って来なかった……なんて話しもあったりしてね。俺のお気に入りのアーティストとことごとく絡んでいるのですよ。なので、音を聴く前からきっと気に入るだろうと思っていたし、実際聴いてみてもすぐに気に入りました。

THIN LIZZYの魅力はやっぱり、アイリッシュ・フレイバーあふれるメロディ、フィルの深みのある低音の歌声、二人のギタリストによる美しいハーモニー、ブライアン・ダウニーのメロディアスと言ってもいいドラマチックなドラム……って、長いわ! なにが「やっぱり」だ。
でも、もうひとつだけ加えると、フィルが書いた歌詞がとても良いらしいです。……らしいですって……ええ、俺の語学力では、内容がわかったとしても、言葉選びの素晴らしさまでは理解できないのですよ(泣)! そんなわけで評判をお伝えしました。ちなみに、フィルは詩人としての顔も持っていて、詩集を三作発表しています。英語が堪能な方はぜひ。

ちょっと余談だけど、メンバーたちの故郷(全員ではないけど)、アイルランドという国は悲しい歴史の上に成り立っているからか、「U2」や「ボブ・ゲルドフ」のように政治的なことを歌うアーティストも多いです。THIN LIZZYは政治的なことを歌っていたわけではないけど、やっぱり、お国の事情が影響しているのか、どこか憂いを帯びた曲が多いように思う……のは俺の偏見か、願望か。英国だけでなく、アイルランドという国のアーティストにもどうにも特別なものを感じるワタクシでございます。

ゲイリーがそうだったように、THIN LIZZYも……というより、フィルかな。フィルもアイルランド人としてのルーツを大切にして、音楽を作っていた人でした。わかりやすいところでは、アイルランド民謡のメロディを取り入れていたりします。これがまた、郷愁を誘う哀しいメロディなんだよなあ。晩年はとくにその傾向が顕著でした。そう、先にも書きましたが、フィルはTHIN LIZZY解散後に亡くなってしまいます。ロックスターのライフスタイルを実践し、その犠牲になった人、と言ってもいいでしょう。
ヘロイン注射による感染症が原因でした。ドラッグを礼賛するつもりはさらさら無いけど、そういうものに走ってしまう人の心理には興味があるというか……、心に傷を持っている人の音楽に強く惹かれます。それにしても、ドラッグやアルコールで亡くなるアーティストが多い。生きることが下手な人が多いのか……。

ロックファンは、楽曲だけでなくアーティストの人となりにも大いに興味を持つよね。他のジャンルのファンもそうなんだろうけど、ロックファンはとくにその傾向が強い。音楽が気に入ったならそのアーティスト自身のことも知りたがる。そして曲の裏側にあるストーリーを深読みして(笑)、その曲をより愛するようになる……。THIN LIZZYはまさに、フィルの生き様を楽曲に反映してきたバンドだし、ファンもそれを愛した。うーん、どうもセンチメンタルな文章になってしまうのは、深読みし過ぎだから(苦笑)?

フィルが亡くなって、今年で25年。残ったメンバーたちで今もライヴをやっていたりするけど、やっぱりフィルがいないのはなあ。皆さんにもぜひ、フィルがいた頃のTHIN LIZZYに触れてもらいたいと思います。ロックミュージックの激しさと、切ないメロディが好きなあなた! 俺と気が合いそうなそこのあなた(笑)! 秋の夜長にTHIN LIZZYはいかが?





 










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