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第58回 洋楽編 JOHN SYKES
――誰もが認め、誰とでも揉めるスーパーギタリスト
2012 / 08 / 21
オリンピック、終わっちゃいましたねー。普段はそれほどスポーツに興味がないワタクシですけども、日本選手団の大活躍もあり、珍しく熱中しちゃいましたよ。もちろん、ミュージシャン&ロックファンとしては、競技だけでなく、開会式や閉会式での錚々たるメンツのアーティストたちによるパフォーマンスにも大いに楽しませていただきました。そうそう、前回はオリンピック開催中だったにも関わらず、まったく関係のないアメリカンバンドを紹介したので(笑)、今回は英国のアーティストを紹介しましょうかね。「WHITESNAKE」や「THIN LIZZY」、「BLUE MURDER」等の活動で知られる「ジョン・サイクス」です! ......オリンピックにはまったく関係ないです、はい。
ジョンの存在は、WHITESNAKEに在籍していたころに知りました。前にも書いた『SUPER ROCK '84』のビデオで。当時のWHITESNAKEは、デイヴィッド・カヴァデールとジョンに加えて、スーパードラマーのコージー・パウエル、名手ニール・マーレイというハードロックファンにはたまらないラインナップで、ロック初心者だった俺にも、彼らの凄さは充分過ぎるほど伝わってきたもんです。いやー、凄かった! まあ、やっぱりデイヴィッドやコージーに目も耳も奪われがちだったけど、貴公子のようなルックスでゲイリー・ムーア直系のエモーショナルなプレイをするジョンはとてもカッコよく映ったし、バンドそのものにも夢中になりました。ただ、このメンツは短命で、全員が参加したアルバムは一枚もなく(ジョンが変則的に参加したアルバム あり)、おまけに当時発売予定だった新作にはジョンとニールは参加しているものの、すでに脱退、というか解雇されていたという。THIN LIZZYに参加したのも、解散が決まってからだというし、ついていないというかなんというか......。
そんなごたごたを経て発表されたアルバム はロック史上に残る大名盤で、一曲たりとも捨て曲がなく、ジョンのギタープレイも期待以上。1000万枚以上というとんでもないセールスを記録します。それ以前のWHITESNAKEとはかなりスタイルが変わってしまったから賛否両論でもあったけど、クオリティの高さは疑いようもなく、そして、それはジョンの影響が大きかったのは誰もが認めるところでした。でも、その立役者のジョンは発売前に解雇されているわけで、大成功という美酒を味わうことは出来ず。で、クビになったジョンは、コージーと(ニールもいたはず)バンド結成に向けて動き出すんだけど、大ベテランのコージーと、まだ若くて我が強かったジョンとが衝突し、今度はまた別の大ベテランドラマー、カーマイン・アピスと、「THE FIRM 」にいたトニー・フランクリンとで「BLUE MURDER」を結成。これがまた凄いバンドだった。
WHITESNAKEふうの曲が多かったけど、アルバムジャケットのイメージ通り 、大海原を想起させるスケールの大きな楽曲が収められたアルバムは、ジョン・サイクスにハズレなし! と思わせるのに充分な出来でした(たまにハズレもあるけど)。そして、なにより驚いたのはジョンの歌声。デイヴィッドとTHIN LIZZYのフィル・ライノットのいいところをブレンドしたような、見事な歌声を披露しています。ジョンのヴォーカルには世界中の人が驚いたと思う。ここまで歌えるなんて誰も想像していなかったんじゃないかな。でも、残念なことにセールス的にはうまくいかず、BLUE MURDERは二枚のアルバムを残して空中分解。その後はSYKES名義にしたり、BLUE MURDER名義でまた活動したりしていたけど、今はいったい何をやってるのか......。デイヴィッドとまた一緒にやろうとした時期もあったらしいけど、実現せず。あのアルバム以降、お互いにそれを超える作品は作れていないと思うし、もういい歳なんだから、仲直りすりゃあいいのにね(苦笑)。まあ、いい歳だからこそ嫌な相手には関わりたくないのかな。でも、デイヴィッドなんて、ジョンのバンドのメンバーを引き抜いたりして、気にしてるのがバレバレだったんだけどなあ。
ただ、そうは言っても、デイヴィッドは今も楽しそうにWHITESNAKEをやっている。ジョンは? セバスチャン・バックや、元「DREAM THEATER 」のマイク・ポートノイみたいに、凄いミュージシャンたちとの新バンド結成が噂になってはいつも立ち消え。誰もがジョンの才能を知っているからこそ、必ずといっていいほどスーパーバンド結成のメンバー候補になるのに、それでも実現しないのは性格が物凄く悪いのか(笑)、もしくは、もう悠々自適を決め込んでいるのか。デイヴィッドと一緒じゃなくていいから、また精力的に活動して、エモーショナルなギターと歌声を聴かせてほしい......。「あの人は今」になるのは早過ぎだよ。
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