ikkieの音楽総研

第62回 洋楽編 UNISONIC
――期待通りいやそれ以上、80年代から来たジャーマンメタルの"新星"(?)

2012 / 10 / 16

毎度80年代のアーティストしか登場していない、と言っても過言ではない音楽総研ですが、今回はなんと、2012年にデビューアルバム を発表したばかりのアーティストを取り上げます! 「UNISONIC」! ……まあ、メンバーは皆80年代から活躍している人たちばっかりなんだけどね(笑)。

UNISONICは元「HELLOWEEN 」のシンガー、マイケル・キスクと、「PINK CREAM69 」のデニス・ワード(B)、コスタ・ ツァフィリオ(Dr)に加え、「ASIA 」、「GOTTHARD 」、「KATMANDÜ 」等での活動で知られるマンディ・メイヤー(G)で結成。それだけでもマニア垂涎のスーパーバンドだったのに、HELLOWEENでマイケルと活動を共にしていた「GAMMA RAY 」のカイ・ハンセン(G)までもが参加。へヴィメタルマニアの間では、間違いなくここ数年でいちばんのブライテストホープでしょう。

unisonic.jpgマニアでない方のためにそれぞれについて触れておくと、彼ら(スイス人のマンディを除く)は皆、ジャーマンメタルを語る上で外すことができないアーティストで、とくにカイとマイケルのいたHELLOWEENは現在のジャーマンメタルのスタイルを作り上げたといってもいい最重要バンドです。ジャーマンメタルって何かって? 簡単に言うとドイツ産のヘヴィメタルのこと(そのまんま)。LAメタル以上にサウンドの共通項があって、アニメソング並みのドラマチックな曲調と、朗々とメロディを歌い上げるヴォーカルが大きな特徴です。

初期のHELLOWEENは、ドイツの一バンドの域を超えていなかったと思うんだけど、マイケルが加入してスタイルを確立させてからは、完成度の高いアルバムを立て続けに発表し、後続のバンドたちに大きな影響を与えました。メタルファンがジャーマンメタルと聞いてまず思い浮かべるのはHELLOWEEN的なサウンドのはず。ただ、そのスタイルを作った張本人の二人はバンドを脱退……。カイは新たにGAMMA RAYを始めたけど、マイケルは「もうメタルはやりたくない」と発言、マイペースな活動を続け、あまり表舞台に出てこなくなりました。

一方のPINK CREAM69はドイツのバンドながら、どちらかといえばアメリカナイズされたハードロックをプレイするバンドで、いわゆるジャーマンメタルとはちょっと違ったけど、楽曲の質は高く、そのシーンでも一目置かれる存在だったと記憶しています。そして、シンガーのアンディ・デリスがマイケルの後任としてHELLOWEENに加入するという因縁(?)も。

HELLOWEENは今も良質な作品を作り続けているけど、マイケルとカイがいたころのサウンドを求めているファンが多いのも事実。でもまあ、再結成は無理だろうからせめて二人で……と期待しながらも、マイケルはやらないだろう、と諦めかけていたと思う。そこへUNISONIC結成のアナウンス。ファンはマイケルの表舞台への復帰を大歓迎したけど、そのメンツから「あの音」ではないだろうと予想されたし、最初は、マイケルの声が聴けるなら……ぐらいの感じだったと思うんだけど、なんとカイの加入が発表され、当然、ファンは色めき立つわけですよ。

でも、ヘソ曲がりの俺は、カイの加入は喜ばしいけど、これでこのバンドに対する期待の色合いが変わるな、とも思ったんだよね。カイとマイケルが一緒にやるとなると、どうしたってHELLOWEENの再結成的なニュアンスが強くなるし、ファンは「あの音」を求めるだろうしね。新しいバンドへの純粋な期待とは違ってくる。そして何より、もう一人のギタリスト、マンディの影が薄くなるじゃないか! と(笑)。そう、俺はこのメンバーの中では、誰よりもマンディに思い入れがあるのです。いろんなバンドを出たり入ったりしていて、そろそろどこかに腰を落ち付けてほしい、と思っていたところにこのニュースだったから、期待してたんだけど、そこにもう一人スターが入ってきちゃうと……。サウンドがHELLOWEENに寄り過ぎるとマンディの音楽性とは離れていくし、長続きしない気もする。

ただ、発表されたアルバムを聴いてみたら、マイケルがあの驚異的な歌声で朗々と歌い上げてはいるものの、HELLOWEEN色は薄めで、ジャーマンメタルというよりはメロディアスなハードロックという印象。いや、これはいい! 久しぶりに最近(笑)のCDをヘヴィロテしています。彼らのコアなファンが物足りなさを感じているであろうことも予想できるけど、マンディのファンとしては、ちょっと安心しました。完成度の高さには誰も文句が無いだろうし。ただ、おまけのHELLOWEENナンバーのセルフカヴァーが当然ながらハマっていて、こんなの聴かされたら、ファンの「本当はこれが聴きたいんだ!」って想いは強くなるだろうし、いろんな意味で早くも次作が心配……。














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