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第84回 ikkieのロック用語解説編 日本上陸、ジャパニーズメタルの黎明
2013 / 08 / 06
一部(?)読者より好評をいただいているロック用語編ですが、今回は、いよいよ日本のハードロック/ヘヴィメタルを解説します! ジャパニーズメタル、略してジャパメタ。でも、ジャパメタって言葉は、あんまり良い意味で使われないんですよねえ......。
松本●さて、今度は海を渡って極東まできてしまった形になるわけですね。ジャパメタ、ジャパニーズメタルの略ですね。
ikkie▲本当はジャパメタと略さずジャパニーズメタルってちゃんと言うべきなんでしょうけど、まあ、誰も言わないですね。で、どっちかっていうと馬鹿にした言葉なんですよ。ヘビメタと同じで。俺はそういう言い方は好きじゃないけど......まあ、ジャパメタとくくってしまうジャンルは確かにあります。もちろんカッコいいバンドもいるんですけど、HR/HMっていうのは、歌詞が日本語になると、途端にダサくなっちゃうんですよね。日本人だから日本語で歌うというのは当然なんだろうけど、どうも歌謡曲っぽくなっちゃうんです。
松本●ああ、なんとなくそんな気がしてました。
ikkie▲日本語って乗りにくいんですよね、ロックに。今は上手にやってるバンドがいっぱいいますけど、昔はどうも......。だからなのか、BOWWOWや紫 (両バンドともに76年にメジャーデビュー)とかが国産ハードロックバンドの走りだと思うんですけど、その辺のバンドは英語で歌ってたりもしてたんですよね。もしかすると、かえって今よりも英語でやるのが自然だったのかも。オリジナルのままやるというか。
日本のヘヴィメタルは、80年代前半、LAメタルと同時期に出てくるんですけど......たぶん、アメリカの若者も、日本の若者も、同じように70年代、80年代にイギリスのバンドを聴いてたんでしょうね。で、大阪がブームの中心でした。東京にももちろんいましたけど、大阪(関西)のバンドが圧倒的に多かったんですよ。日本のバンドでHR/HMというとやっぱりLOUDNESSだと思うんだけど、まず、この人たちが大阪出身で。まあ、LOUDNESSはアイドルバンドだったLAZY にいた人たちが作ったバンドなので、もともとネームバリューもあったし、あんまり地域は関係ないのかもしれないけど、他にもEARTHSHAKER とか44MAGNUM とか、LOUDNESSと同世代のバンドが大阪にたくさんいたんですよね。
LOUDNESS 『In The Mirror』
ジャパニーズメタルの金字塔。海外のアーティストにも影響大
★ikkie★
余談ですが、アニメ化もされた少女マンガ『愛してナイト 』に関西のジャパニーズメタルブームがちょっと描かれています。劇中に登場する主人公のバンドはNOVELA がモデルとされているし(NOVELAはプログレだけど)、44MAGNUMがモデルのバンドも登場します。この漫画がブレイクのきっかけにもなったとか。この2バンド以外にも、ACTION やPRESENCE など、いろんなバンドの歌詞がバンド公認で使われており、まだロック初心者だった俺は、登場するバンドのレコードを片っ端から聴いてみたものでした。ちなみに、原作者の多田かおるさん(故人)のご主人は、PRESENCE(JUDY&MARYの恩田さんも在籍)の西川茂さん。
ikkie▲また、中心が大阪だったいうのもあってか、ルックスも派手だったんですよ。金髪とかって、あの当時はそんなにいなかったと思うんですけど、例えば44MAGNUMはメンバーが全員金髪で。美形のメンバーもいたし、カッコ良かったなあ。でも、日本のHR/HMバンドの「〜だぜ」とかいう歌詞とか、歌謡曲っぽいメロディがね、俺は苦手だったんですよね。言葉の乗せ方が、音符一個に文字一個、みたいになるんで、どうしても歌謡曲みたいになっちゃう。今はノスタルジーもあって結構好きなんですけど、あの当時は苦手でした。でも、自国のバンドが好きな人たちというのは当然いるので......だから、同じHR/HMというジャンルの音楽が好きでも、日本のバンドと海外のバンドとにファンが分かれるんですね。今はどうかわかんないですけど、昔はほんとにパカっと分かれてて。で、まあ、俺は海外のバンドのファンだったけど、ギターキッズでもあったんで......日本人は器用だし、上手い人が結構いたんですね。
松本●はいはい。
ikkie▲ギターヒーローが何人かいて。だから、苦手と言いつつも、わりと日本のバンドも聴いてたかな。特にLOUDNESSの高崎晃さんのファンで、よく聴いてました。ま、LOUDNESSは途中から英語で歌ってたし、アメリカやヨーロッパでもすごく人気があるから、洋楽を聴いているようなつもりだったかもしれないけど。でも、もともと......最初にそう呼ばれるようになったのはLOUDNESSとか44MAGNUMとか、あの辺の人たちだと思います。で、そういうバンドのことを、洋楽好きな人たちが「どうせジャパメタだろ」っていう言い方をするんですよ。
EARTHSHAKER 『More』
J-POPを知らないメタラーはカラオケで必ずこの曲を歌います。
日本のHR/HMバンドの中で最初に武道館でライヴを行ったバンド
松本●いわゆる、卑下する対象として言うと。
ikkie▲そうですね。で、好きな側は好きな側で、今度は愛情を込めて「いやー俺はジャパメタ好きだからさ」って言っちゃうという。
松本●根深い対立が広がっていくわけですね。
ikkie▲そうそう。若い子たちは知らないですけど、アラフォー世代だと、今でも「俺、ジャパメタはダメなんだよね」っていう人はいますね。
松本●プロの方にはそれじゃ意味が通じないと否定されるのに、バーテンダーを無理やり略してバーテンとか言うのと一緒だと思うんですが、ハードロックとヘヴィメタルっていうのを、日本ではヘビメタと略して言うわけですよね。で、そこに「(笑)」が付いてるのは否定出来ないところがあるじゃないですか。「ヘビメタ(笑)」と。
ikkie▲絶対、そうですよね。HR/HMファン以外は。
松本●色物として見てしまってる部分はありませんかね。音楽とは全然別で。まあ、なんとなくその、氏神一番(カブキロックス )が頭に浮かんでるんですけれども。
ikkie▲X JAPAN ではなくて?
松本●そちらはすごく熱狂的なファンが回りに多かったから、そうは見えなかったのかもわからないんですが。
ikkie▲ヘビメタっていう言い方は、たぶんLOUDNESSの時代からあったと思うんですけど、一般的に言われだしたのって、絶対『元気が出るテレビ』だと思う(※インディーズ時代のX JAPANも出ていました)。色物扱いされだしたのは、あの番組が大きいんじゃないかな。ビートたけしのその当時のインタヴューとか読むと、あの人がバカにしてるわけじゃないのはわかるんですね。ちゃんと演奏する場所を作ってあげたいみたいなことも言ってたし、それはそれでいいんですけど、あの......"早朝ヘビメタ"だの、なんだのってのがね。カレー屋のカウンターとかでギター弾いたりとか、そういうことをやらせたじゃないですか。
松本●ありましたねえ。
ikkie▲で、すごい格好してましたよね。すごく派手なイメージだった44MAGNUMとかより、もっと派手で、奇抜だった。派手な色の髪の毛をツンツンにして......スプレー一本使って髪を立てるとか。あれがヘビメタのイメージじゃないですか?
松本●そうです、やっぱり。
44MAGNUM 『I Just Can’t Take Anymore』
ルックスの良さはダントツ! 和製MÖTLEY CRÜEなんて声もありました。
昔は苦手だったけど、今聴くといいなあ
ikkie▲それで、ギャーッ! とか叫んでみたり、火を吹いてみたり、っていう。別にみんながみんな火を吹くわけじゃないですからね(笑)。音楽と関係ないところばかりクローズアップしてねえ。そういう意味でのヘビメタっていうのはあの番組だと思うんですよね。一般的になっていったのは。
松本●そうですね。『元気が出るテレビ』の影響はあったかもわかりませんね。
ikkie▲で、氏神一番さんとかは......ヘヴィメタルというか、ハードロックは好きなんだろうけどな、っていう感じで、ちょっとそこからも外れてる感じです。ハードロックでもないと思うし、本人もヘビメタって言われるのは嫌なんじゃないかな。また、『イカ天』とかのバンドブームも入ってくるんで、ニュアンスが変わってきますしね。『イカ天』でまた、ヘビメタっていう言葉のイメージがもっと悪くなっていくんですけど。
松本●さらにお笑いのほうによっていく。
ikkie▲あの番組の審査員の人たちって、HR/HM好きな人があんまりいなかったと思うので。違うジャンルの人たちが多かった気がします。まあ、HR/HMバンドもいくつかあそこから出てますけど、あの辺りで、またちょっとおかしなイメージが付いちゃったと思うんですよね。
松本●そうですね。たぶんikkieさんから見たら、全然その(色物的なバンドの)範疇に入らないハードロックのバンドであるとかヘヴィメタルのバンドも、いわゆる色物的なバンドも、日本では"ヘビメタ"というカタカナ四文字でくくられてしまう可能性があるわけですよね。私が最初に聞いたメタルってどういう意味なんですか、っていうのも、それが言下にある気がしますし......。それなら寂しい話ですね。
ikkie▲そうですね。まああの、裾野が広まればいいのかもしれないですけど、こちら側からしたら、歪んで伝わってるな、ってのもあるんで。でも俺らもね、例えば知り合った人にどんなのやってるの?って聞かれたら。"ヘビメタ"と笑って言ったりしますけど。それがわかりやすいんだろうな、と思うので。「いや、俺は北欧メタルに影響を受けた様式美のバンドやってるんだよね」なんて言ってもちっともわかんないだろうし(笑)、あえてそんな言い方したりしますけどね。まあでも、あの言葉は、あの当時のミュージシャンにとっては結構辛い言葉だったんじゃないですかねえ。
松本●それがまた残っちゃってもしょうがないんで、その辺は音楽総研を読んでもらって。
ikkie▲ははは! ぜひそうしていただきたいですね。
松本●いやあ、ここまでヘヴィメタルにしぼって聞いてみましたけど、地域ごとの差とか、非常にわかりやすかったです。本当に知らないことばかりでしたから。
GALNERYUS 『Hunting For Your Dream』
現在のジャパニーズメタル代表、GALNELYUS。
シンガーはなんと、あの小野正利さん!
さて、今回はここでおしまい。虐げられ続けた(笑)、ヘヴィメタルへの誤解を少しでも解くことが出来たなら幸いです。ヘビメタと略さず、ヘヴィメタルと呼んでくださいね。そして、次回からはHR/HMに限らず、プログレッシヴロックやニューウェイヴなど、いろんなジャンルについても解説しますよ!
※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
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