ikkieの音楽総研

第204回 洋楽編 WARRANT――名ソングライターを擁しながらも誤解されがちだったLAメタル最後の大物

2018 / 03 / 20

180320warrant.jpg YouTubeを見ていると、ちょっと前に流行った曲なんかに「2018年に誰がこの曲を聴くの?」みたいなコメントが付いているのを見かけます。そういったコメントは、おそらく「古い曲だけど俺は今でも聴いてるよ!」という好意的な意味合いなんだと思うけど、俺が好んで動画を見るような曲にはだいたいそんなコメントが付いているし、時代の移り変わりの早さに少々複雑な気持ちになったりも……。さて、今回は「2018年に誰がこのバンドのことを書くの?」とコメントが付いてしまいそうなバンド、WARRANT をご紹介! いや、俺が書きますってば。

WARRANTは、84年にエリック・ターナー(G)を中心に結成されたアメリカのHR/HMバンド。LAメタル最後の大物として(そう呼ばれたバンドはたくさんいたけど)89年に鳴物入りでデビューし、ポップでキャッチ―な楽曲と、アメリカの青春映画に出ていそうなジェイニー・レイン (Vo)をはじめとするメンバーのルックスの良さも相まって、一躍人気バンドになりました。デビューアルバム の売上は200万枚を超え、全米チャートの10位を獲得。そして、シングルの『Heaven 』は全米2位を獲得するという、新人としては破格の成功を収めます。……ただ、日本では本国ほどの人気はなかったような印象があるんだよな。

というのも、一部の音楽雑誌なんかの影響で、WARRANTには演奏が下手で見た目重視の軽いバンドだというイメージがあって、メタルファンなんかからはナメられてしまうようなバンドだったんだよね。それもあってか日本での人気は今一つ盛り上がっていなかったんじゃないかなあ。まあ、たしかに彼らは派手なルックスをしていたし、ライヴでの、メンバーが揃って跪くようなパフォーマンスも軽薄に見えた。明るいパーティソングが多かったことも、よろしくない評判に拍車を掛けてしまったのかもしれない。でも、CDで聴く限りは決して上手いバンドではなかったものの、演奏に関しては同じような評判だったPOISONに比べればちゃんとしているし、何より曲が良かったから、言うほどひどくないのに……なんて俺は思っていたけど。

『Cherry Pie』
どうにもバカにされちゃうことが多かったこの曲だけど、曲調だけならDEF LEPPARDあたりがやってもおかしくないし、楽しいいい曲だよね。
『いけないチェリーパイ』なんていう邦題がまずかったように思います。ちなみにヨレヨレのギターソロはC.C.デビル(POISON)のプレイ。
 


それでもWARRANTがPOISONほどの人気が出なかったのは、今になって思えば、POISONに比べて“決め手”に欠けていたのかも。あくまで俺の個人的な意見だけどね。WARRANTにはPOISONほどの毒がなかった。軽薄さが中途半端だったかなあ……。とはいえ、やっぱり過小評価されていたと思う。さっきも書いたとおり、WARRANTは曲が良かったのよ、とにかく。一度聴けば一緒に歌えるようなキャッチ―なメロディラインは、HR/HMの範疇を超えるほどのポピュラリティがあったし、アルバムに必ず2曲は収録されていたバラードはドラマや映画の主題歌になればきっと大ヒットしていたはず。ジェイニーの書くストーリー仕立ての歌詞はとても評価が高かったから、歌詞の内容がもっと伝われば違ったのもしれないなあ。もったいない。

『I Saw Red』
わたくしのフェイヴァリット。イントロのピアノもギターソロもいい! ちなみに 「I Saw Red」で「カッとした」って意味になるみたい。
牛が赤い布を見て興奮するところからきているらしいけど、カッとした時って視界が赤く染まるような感じもするよね。英語面白い。
 


日本での人気はいまひとつ盛り上がらなかったとはいえ、本国アメリカでは順調にキャリアを重ね、連続してヒットを飛ばしていたWARRANTも、グランジ・オルタナムーブメントの台頭で、他のHR/HMバンド同様に人気が低迷。その影響もあったのか、WARRANTはメンバーチェンジを繰り返し、バンドの顔でメインソングライターだったジェイニーも脱退してしまう。ジェイニーは一時復帰したりもしたけど、残念ながら長続きせずに脱退、そして11年に47歳の若さで亡くなってしまった……。現在のWARRANTはLYNCH MOBなどで知られるロバート・メイソンを後任に迎えて活動を続けていて、アルバム も去年発売されたけど……、うーん、正直なところ、ジェイニーの書く曲こそがWARRANTの最大の魅力だと感じていた俺には、今のWARRANTは物足りないです。

『Heaven』
全米2位を獲得した名バラード。時代を超える普遍的な魅力を持った名曲だと思う。
ジェイニーの冥福を祈ります……。素晴らしい才能の持ち主でした。
 


ただ、ロバートはジェイニーよりも断然上手いし、バンドの演奏力も格段にアップしている。ルックスもずいぶんワイルドになって、以前のような軽薄さがなくなった。ベテランならではの凄味すら感じるもんね。メンバーには申し訳ないけど、ジェイニー時代の楽曲を今のバンドが演奏するライヴは観てみたい! 絶対カッコよさそうだもの。明るいパーティソングを実力のあるバンドが演奏すると文句なしに楽しいし、バラードはより感動する。曲を書いたジェイニーの歌には本人だからこその魅力があったけど、ライヴで聴くことは出来なくなっちゃったしね……。もういないメンバーの曲ばかりが求められるのは複雑かもしれないけど、彼らには今後もバンドを続けてほしいな。あんなにいい曲がたくさんあるんだもの。それにもちろん、ジェイニー時代の楽曲を超える新曲も期待しています!


※この原稿を書き上げた後に、ロバートがDOKKENの元メンバーたちと新バンドを結成 したことを知りました。WARRANTは続けるのかなあ……。解散しないでねー! 


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