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第227回 洋楽編 THIN LIZZY――ツインギターのお手本はアイルランドの至宝!
2019 / 02 / 05
先月末から、新しいバンドのレコーディングを始めています。メンバーに聴かせるためのデモなんかはよく録っているけど、本格的なレコーディングは久しぶり! なんだかアドレナリンが出まくりで、すごく楽しんでおります。そうそう、新しいバンドにはもう一人ギタリストがいるんだけど、二人のギターの絡みが楽しくてねえ。GUNS N’ ROSESのスラッシュ とイジー みたいだと、調子に乗っているところです。わはは。
さて、今回は俺がツインギターの理想的なスタイルだと思っている、THIN LIZZYを久しぶりに取り上げます(ガンズじゃないのかよ)。前回書いたゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム にもTHIN LIZZYの曲が収録されていて、やっぱり良いバンドだなあ、とあらためて聴き直しておりまして。THIN LIZZYの最大の魅力は、中心人物だったフィル・ライノット (Vo,B)の歌と、フィルその人だと思うんだけど、今回はツインギターという観点から、THIN LIZZYの魅力を大いに語ろうかと。
まあ、一口にツインギターと言っても、AC/DCのようにリードギターとリズムギターがはっきりと分かれているバンドもいれば、NIGHT RANGERのようにリードギタリストが二人というバンドもいるし、それこそTHE BEATLES にしたってジョン・レノン とジョージ・ハリソン のツインギターだったわけで、そのスタイルは様々。THIN LIZZYは二人のリードギタリストがいるバンドだけど、THIN LIZZYならではと言えるのは、やはり二人のギタリストによるハーモニー! NIGHT RANGERもハーモニーはやるけど、THIN LIZZYほどじゃないんだよね。他のバンドでここまでハモるのはIRON MAIDEN ぐらいしか思い浮かばないけど、IRON MAIDENにしたって、THIN LIZZYの影響を受けているんじゃないかなあ。
『The Boys Are Back in Town』
THIN LIZZYといえばこれ!
ギターはスコット・ゴーハムとブライアン・ロバートソン。
ブライアンはなんで法被着てんのかな。
ただ、実は69年の結成時から73年のサードアルバム まではエリック・ベルの一人だけがギタリストで、ツインギター体制になったのは74年の4作目 からでした。スタート時点からその特徴的なツインギタースタイルだったわけじゃないんだよね。でも、4枚目からは一貫してギタリストが二人います。エリックの脱退後にはまずフィルの旧友だったゲイリー・ムーアが加入……したものの、数か月で脱退、ゲイリーの後釜には解散までフィルと活動を共にしたスコット・ゴーハムと、ブライアン・ロバートソンが加入。この二人が在籍した期間が彼らの黄金期と呼ばれていて、俺もこの二人のコンビがベストだと思っています。二人のギターは70年代のギタリストらしく、ブルージーなプレイが主体だけど、メロディアスなハーモニーを多用し、これぞTHIN LIZZY! というスタイルを確立させました。
『Waiting For An Alibi』
ゲイリー在籍時の名曲!
このMV、フィルがダンディでカッコイイっす。
ブライアンの脱退後にはゲイリーが出戻り、HR/HM史上に残る名盤、『Black Rose a Rock Legend 』 を発表するも、ゲイリーはツアー中に失踪、そのまま脱退してしまう。以降はバンド・エイドの『Do They Know It’s Christmas? 』をボブ・ゲルドフ と共作したULTRAVOX のミッジ・ユーロや、スノーウィ・ホワイトらが助っ人的に参加。しかし、安定しないバンド体制や人気の低迷……、さらにメンバーのドラッグ・アルコール問題もあり、THIN LIZZYは解散を表明。ラストアルバムと、フェアウェルツアーに向けて起用されたのが、のちにWHITESNAKEに加入することになるジョン・サイクスでした。ジョンの若々しくメタリックなギターがバンドに刺激を与えたのは明らかで、THIN LIZZYは前作の不振を吹き飛ばすほどの名盤、『Thunder & Lightning 』を発表。のびのびと弾きまくるジョンのプレイが印象的です(ジョンの速弾きにハモるスコットも凄い!)。個人的には少々ヘヴィ過ぎだと思わないでもないけど、フィルらしい哀愁ただようメロディアスな佳曲も多いし、THIN LIZZYらしいハーモニーも聴けるいいアルバムです。HR/HMファンには、いちばん人気のある作品じゃないかな。
『Dancing in the moonlight』
ジョン・サイクス時代の曲も紹介するべきなんだろうけど、
こういうちょっとオシャレなプレイもあるのを聴いてもらいたくてね。
それにしても、フィルの歌声の素晴らしいことといったら!
さて、ここまでハーモニーを推してきたけど、THIN LIZZYのギタリストたちの魅力はそれだけではなく、ヘヴィメタルからジャズ、ボサノヴァまで弾きこなす幅広さも、彼らの大きな魅力だ。とくに、ブラジル系の血を引くフィルのペンによるボサノヴァ調の楽曲からは、彼らがただのロックバンドではないことをひしひしと感じるし、そこに乗るギタリストたちのプレイも、その辺のロックギタリストには思いつかないであろうプレイが目白押し! この辺はジャズロックをやっていたゲイリーの影響もあるのかな? いやもう、ギタリストは必聴だよ。
ジョン・サイクスの加入によって復活したかのように見えたTHIN LIZZYは、それでも83年に解散。そして、86年にはフィルが亡くなってしまう……。実は、ボブ・ゲルドフの依頼により、85年の歴史的なイベント、ライヴ・エイドでの再結成ライヴが計画されていたという。もしもそれが実現していれば、そのライヴ・エイドで解散の危機を脱したQUEENのように、THIN LIZZYにも、フィルにも、今とは違う未来があったかもしれない。……今さら何を言っても仕方のないことだけど。
※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/
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