ikkieの音楽総研

第249回 洋楽編 HANOI ROCKS―― フィンランドの希望はロック界の生ける伝説となった

2019 / 12 / 10

hanoi201912.jpg すっかり寒くなりましたねー。今年は東京も雪が降りそうな予感もするし、寒いのが苦手な俺は、暖かくなるまで引きこもっていようかとなかば本気で考えております……。さて、今回は来日公演を終えたばかりのマイケル・モンロー がかつて在籍していたHANOI ROCKS をご紹介! なぜだか俺のまわりには昔からHANOI ROCKSファンが多いんだよね。もちろん、俺自身もですが。

HANOI ROCKSはマイケル・モンロー(Vo)、アンディ・マッコイ (G)、ナスティ・スーサイド (G)、サミ・ヤッファ (B)、ジップ・カジノ(Dr)というメンバーで81年にデビューしたフィンランドのロックバンドです。85年に一度目の解散をし、01年の再結成を経て09年に二度目の解散。グラマラスなルックスとは裏腹に、骨太なサウンドで世界中のロックファンから支持されていたバンドでした。知名度の割にレコードセールスはそれほど多くなかったんだけど、GUNS N’ ROSESSKID ROWのメンバーが彼らからの影響を口にしていたこともあって、リアルタイムではない世代からの知名度も高いんですよ。

俺がHANOI ROCKSのことを知ったのはまだ小学生のころで、ロック雑誌に載っていた漫画の『8ビート・ギャグ 』にマイケルが登場していたのを見たのが最初だったと思う。マイケルはプラチナブロンドの髪に碧眼という少女漫画に登場しそうな美形で、「モンちゃん」なんて呼ばれて人気があったんだよね。ただ、DURAN DURANなんかのニューウェイヴが好きだった当時の俺には彼らのパンキッシュなロックンロールはあまりピンとこなくてね。そんなわけでさほど気に留めずにいたんだけど、ある事件をきっかけにまた彼らのことを思い出すことになりました。

『Tragedy』
ファーストアルバム収録。
「HANOI ROCKSといえばこれ!」って人も多いんじゃないかな?

 


初の全米ツアーの真っ最中だった84年の12月に(奇しくもこの原稿を書いている12月8日です)、MÖTLEY CRÜEヴィンス・ニール (Vo)が起こした飲酒運転による事故で、二代目のドラマーだったラズルが亡くなってしまう。ヴィンスはこの事故で収監され、HANOI ROCKSは後任のドラマーを入れるも85年に解散。当時のロック雑誌ではけっこう大きなニュースになっていたのを覚えている。それで久しぶりにHANOI ROCKSを聴いてみて、ようやく彼らのカッコよさに気付いたという……。いかがわしさがたまんないんだよね。

パンキッシュなHANOI ROCKSのサウンドは、俺にとって決して好みのど真ん中ではなかったけど、ラズルの最後のアルバムになってしまった『Two Steps from the Move 』はよく聴いた。KISSのプロデューサーとしても著名なボブ・エズリンがプロデュースしたことも大きいのか、それまでのアルバムよりも完成度が高い。偉そうに言わせてもらうと、“化けた”感じがした。この力作でワールドワイドなレコード契約も結んで、いよいよ「アメリカ進出!」となったところでのラズルの事故は、想像を絶する痛手だっただろう。先に書いたように、GUNS N’ ROSESなどのビッグネームが彼らからの影響を公言していたこともあって、伝説のバンドとして知られてはいるものの、HANOI ROCKSは大きな成功を収めることは出来なかった。あのままツアーが続けられていたらあるいは……と、思わずにいられない。

『Dont' You Ever Leave Me』
ロッカバラードの名曲!

 


解散後のメンバーはそれぞれに活動していたから、HANOI ROCKSの再結成があるとは想像もしていなかった。とくにマイケルは常に第一線で活動していたし、再結成のニュースを聞いた時は耳を疑ったよ。ただ、残念ながらナスティとサミは合流せず、マイケルとアンディを中心に北欧の若手バンドの精鋭が参加した。ナスティとサミはマイケルのバンドに参加したりしていたのにね。でも、メインソングライターのアンディと、フロントマンのマイケルがいればHANOI ROCKSと名乗っていいんじゃないかな。他の名前でも変だし……それに、二人が並んだ姿の華のあることといったら! ミック・ジャガーとキース・リチャーズ や、スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーが並ぶのと同じように胸が躍る。本物だけが持つオーラが、彼らにはある。

『Fashion』
再結成後の楽曲。
メンバーが変わってもやっぱりハノイはハノイなんだよねー。

 


HANOI ROCKSファンだというフィンランド人の女性が、「フィンランド人のことは英語でフィニッシュって言うのよ。私たち、終わっちゃってるの」と自虐的に話しているのを読んだことがある。彼女が言うには、北欧の小国から登場したHANOI ROCKSは、フィンランドの若者たちの希望だったという。自国から飛び出した彼らが、世界中で成功を収めていくのを誇りに思っていたという。現在は百花繚乱の様相を呈するフィンランドのロックシーンだけど、80年代にワールドワイドで活動していたフィンランドのバンドはHANOI ROCKS以外にいなかった。HANOI ROCKSが礎を築いたんだよね。


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