ikkieの音楽総研

第275回 洋楽編 AC/DC ―― 徹頭徹尾AC/DC! 最強の新譜を引っ提げて、世界一のロックンロールバンドが帰ってきた!

2020 / 12 / 08

acdc powerup.jpg コロナウイルスが蔓延し、エンターテインメント業界が軒並み大打撃を受けるなか、ミュージシャン達がどうしていたか……、配信ライヴなどに新しい可能性を見出したミュージシャンもいれば、作品作りに没頭していたミュージシャンもいるようです。その影響もあってか、このところ大物や注目作のリリースが続いているのは、このコロナ禍のなかでの明るいニュースと言っていいんじゃないでしょうか。今回の音楽総研は、6年ぶりのニューアルバム『Power Up 』が英米をはじめとする各国のチャートで1位を獲得したAC/DC! その不変の魅力をあれこれと。

近年のAC/DCはいろいろあり過ぎた。2014年にバンドの創始者であり、アンガス・ヤング(G)と共にバンドのメインソングライターだったマルコム・ヤング(G)が、認知症を患いバンドを脱退。そして同年、フィル・ラッド(Dr)が殺人教唆の疑いで逮捕されるという衝撃的な事件が起こってツアーに不参加。それにくわえてブライアン・ジョンソン(Vo)の聴力に問題が発覚しツアーを離脱、代役にはなんとGUNS N’ ROSESのアクセル・ローズが名乗りを上げ、アクセルがAC/DCのフロントマンを務めるという、信じられないラインナップでのツアーを行う。2016年のツアー終了時にはそういった様々な出来事に嫌気が差したクリフ・ウィリアムズ(B)が引退を表明(健康上の問題もあったという)。そして、2017年にマルコムが亡くなってしまう……。

正直なところ、AC/DCはこのまま終わってしまうんじゃないか……、と不安に思っていたのは俺だけじゃないと思う。代役を立ててツアーが行われたといっても、それはあくまで1ツアーに限った応急処置みたいなものだろう。バンドの象徴であるアンガスがいればAC/DCと名乗ってもいいのかもしれないけど、さすがにブライアンやクリフまで抜けてしまうとね。とはいえ、アンガスがAC/DCを終わらせるとは考えられないのも確かで、他のメンバーを入れて続けるのか……、最悪リズム隊はサポートメンバーでなんとかなったとしても、今さら無名のシンガーは入れないだろう、でもアクセルはないよな……と、ぐるぐると考えていました。ブライアンにしても、代役を立ててツアーを行ったバンドに対して複雑な感情を抱いていたようだし。

マルコムの葬儀の際に、フィルも含めたメンバー全員が集まり、メンバー間の問題は解消されたという(フィルはセラピーを受けるなどして自身の問題を解消したとのこと)。そして、治療の甲斐あってブライアンの聴力が回復! そして2018年の8月から今作のレコーディングを開始、本来なら今年の初頭にリリースされる予定だったらしいが、コロナウイルスの感染拡大により11月にリリースとなった。アルバムがリリースされてすぐに一聴した感想は、「AC/DCだ!」というものだったけど、じっくり何度も聴いた今の感想も、「AC/DCだ!」で、変わらない。クレジットは全曲アンガスと亡くなったマルコムで、アンガスによると、今回の収録曲はマルコムと書いた未発表曲をもとに完成させたという。どの曲も3分前後の骨太なロックンロールで、徹頭徹尾AC/DC! いつも通りだ。

『Realize』
ニューアルバムのオープニングトラック。ブライアン・ジョンソンって、もう73歳だよ。
耳のことで引退してたって誰も文句言えないのに、復活してこの歌声って!

 


この「いつも通り」というのは、他のバンドでは批判の言葉になることもあるし、AC/DCだってそうやって批判されたこともある。しかし、メンバー自身が「聴いてすぐにAC/DCだとわかるだろ?」と、そのサウンドにこだわっていることを語っているし、ファンだってそれを望んでいる。そうでなければ、1973年に結成されたバンドのニューアルバムが、2020年に世界中でナンバーワンになるなんてありえないよね。そして、還暦を過ぎたメンバーたちが、20代のころと変わらないサウンドを出していることの凄さといったら! 進化し続けているからこそ、変わらないサウンドが出せるんだよね。

『Shot In The Dark』
ニューアルバムのリードトラック。何も変わらない。それが凄いんだ。

 


今年は名盤『Back in Black 』が発売されてちょうど40年。通常ならば、あのロック史上に残る名盤のアニバーサリーイヤーとして、アルバム再現ツアーや、記念盤を出すといった活動をしていてもいいのかもしれないが、AC/DCはニューアルバムをリリースすることを選んだ。マルコム・ヤングの最後の楽曲を発表するという、マルコム追悼の意味も大きかったようだけど、AC/DCはやはり前進し続けることを選んだとも見てとれる。コロナ禍が収まれば、彼らはまたツアーに出るはず。そして、ずっと変わらない、徹頭徹尾AC/DCの、ロックンロールを聴かせてくれるはず! 一日も早くその日が来ますように。

『Demon Fire』
素晴らしいタイトル! こちらもニューアルバム収録です。ちょっと『Whole Lotta Rosie』を思い出すよね。

 


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