ikkieの音楽総研

第301回 洋楽編 WHITESNAKE ―― マイケル・デヴィン脱退からのWHITESNAKEベーシスト考

2021 / 12 / 07

2022年の5月から始まるツアーを最後に、ツアーからはリタイアすると宣言したデイヴィッド・カヴァデール率いるWHITESNAKEから、ベーシストのマイケル・デヴィンが脱退して驚いていたところに、新しく加入するベーシストがTanya O’ Callaghan (タニヤ? ターニャ? オキャラハン? オキャラガン?)なる女性だと聞いてさらに驚いた。近年、女性のHR/HMバンドも増えてきているし、男女混合のバンドも増えてきている……とはいえ、WHITESNAKEクラスのレジェンドバンドに女性が加入したというのは凄いこと。今回のTanya加入はHR/HMの歴史の上でもなかなか画期的なことなのでは……! さて、今回の音楽総研はTanyaの加入を受け、WHITESNAKEにこれまで在籍したベーシストたちについてあれこれと。

tanya.jpg WHITESNAKEは、DEEP PURPLEのシンガーだったデイヴィッド・カヴァデールが1978年に結成したバンドで、初代ベーシストはニール・マーレイ。ニールは1982年の『Saints & Sinners 』まで在籍し、一時的な脱退を経て、1984年の『Slide It In』でバンドに復帰(UK盤、日本盤はコリン・ホッジキンソンがベース)。そして世界的な大ヒットを記録した1987年の『Whitesnake 』でもプレイするも、発売前に解雇されるという憂き目に合う。ブルーズやR&Bをルーツに持つニールのプレイは初期のWHITESNAKEのサウンドにマッチしていたし、その堅実かつ、グルーヴィーなプレイは歴代のベーシストの中でナンバーワンだと思う。当時のロック界のフィクサー的な存在だったゲフィンレコードA&Rのジョン・カロドナーが、WHITESNAKEを大ヒットさせるためにニールを解雇するよう、デイヴィッドをそそのかしたらしい……。

ニールの後任として加入したのが、QUIET RIOT オジー・オズボーンのバンドで活動していたルディ・サーゾ。そのルディをはじめとするHR/HM界のオールスターキャストが集められた当時のWHITESNAKEはとにかく見栄えが良く、派手なMVが次々と話題になり、アルバムは全米2位を獲得したほか、世界中で大ヒットを記録する。ルディは続く『Slip of the Tongue』でもプレイしたけど、ベースを舐めたりするような派手なパフォーマンスの印象が強くて、ベーシストとしての実力に気が付いたのはルディが後に参加したMANIC EDEN DIOでのプレイを聴いてからでした。現在のルディは様々なバンドで活動しつつ、今年から古巣のQUIET RIOTに復帰。


『Fool for Your Loving』
ベースはニール・マーレイ。こういう曲こそがWHITESNAKEの真骨頂だと思うんだけど......

 


1997年の『Restress Heart 』でベースを弾いたのはベテランスタジオミュージシャンのガイ・プラット。俺はこの人の演奏をTHE POWER STATIONCOVERDALE・PAGEで観ているんだけど、あまり印象に残っておらず......、それよりも、ツアーに参加したのが元BLUE MURDERのトニー・フランクリンだったことに衝撃を受けました。BLUE MURDERはWHITESNAKEをクビになったジョン・サイクス(G)が結成したバンドで、ジョンとデイヴィッドの間にはずっと確執があったからね。トニーはすでにBLUE MURDERを辞めていたし、演奏曲が大幅にかぶるWHITENSNAKEに参加するのは自然な流れだったのかもしれないけど、トニーの大きな特徴であるフレットレスベースはあまり活躍していないように感じたし、別にトニーじゃなくてもいいんじゃないか、と思ってしまった。そして、次のツアーに参加したのが、またしても元BLUE MURDERのマルコ・メンドーサ だったのには、さすがに呆れた。

『Give Me All Your Love』
音源はニールがプレイしているんだけど......、ルディ・サーゾってやっぱりこういうイメージだよね? カッコいい!

 


トニーもマルコも、ある意味でHR/HMをプレイするのがもったいないほどの卓越した技術を持ったミュージシャンで、WHITESNAKEに参加する実力は当然持っている。それにしても、わざわざジョンのバンドから連れてこなくても......まあ、いつまでも動かないジョンに、付き合っていられないと思ったのかもしれないけどね。しかし、マルコはトミー・アルドリッチと共にWHITENSNAKEが休止している間に復活したBLUE MURDERに参加、デイヴィッドの怒りを買ってバンドを解雇されてしまう。......なんだかなあ。

ゴタゴタのあとに完全復活したバンドに新たに加入したのはユーライア・ダフィーなる当時はまだ無名だったベーシスト。ルックスも良く、どっしりとしたベースを弾くユーライアはいいプレイヤーだったけど、アルバム1枚のみで脱退、その後任がLYNCH MOBなどで活動していたマイケル・デヴィンだ。マイケルは70年代のバンドが好みらしく、プレイもニール・マーレイに一番近いかもしれない。ニールがベストだと思っている俺からすると、ルディ以降ではいちばんWHITESNAKEにいてほしいベーシストだった。脱退理由ははっきりしていないけど、友好的な別れのようだし、ベースだけでなく、歌も歌えてルックスもいいマイケルならば、いずれまたどこかで彼の音楽を聴く機会もあるだろう......。


『Love Will Set You Free』
マイケル・デヴィンがベース。
ダグ・アルドリッチはWHITESNAKEはこうあるべき! っていう曲を書いてくれていたんだけど......

 


デイヴィッド・カヴァデールという人は、良い意味で計算高い人物だ。これまでも、時流に合ったミュージシャンをチョイスしてきている。今回加入することになったTanya O' Callaghanも、女性であることが大いにプラスに作用したのではないか......とは思うけど、ディー・スナイダーや、元GUNS N' ROSESのスティーヴン・アドラーなどのバンドでプレイしていたという彼女には、確かな実力が伴っているはずだ。実力に加えてのルックスやパフォーマンスが重視されるのは当然のこと。願わくは、この日本で彼女の雄姿が見られんことを!

Tanya O'Callaghan 『Showreel 2021』 
新しいベーシストのTanya O'Callaghan。
この動画を観ると、すごく幅広いバンドでプレイしているから、スタジオミュージシャンタイプなのかな......?
ステージ映えはすごく良さそうだね

 

 


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