ikkieの音楽総研

第318回 特別編 UNPLUGED ―― 実はBON JOVIが火付け役?! 90年代のアンプラグド・ブームを振り返る

2022 / 08 / 09

コロナ、いっこうに収まる気配がないですねえ。俺は一応シンガーでもあるので、喉に悪そうな病気には絶対かかりたくないし、すごく気を付けているほうだと思うんですが、こんな状況だといつ感染してもおかしくない。出かけた次の日に厚労省のアプリ「COCOA」の陽性登録者との接触通知があったりもするし......。まあ、今のところ感染の兆候はないけど、ほんと、気を付けるしかないですね。......さて、気を取り直していきましょう! 今回は90年代に一大ムーヴメントになったアンプラグド・ブームについてあれこれと。

5月に書いた90年代私的ランキングMR.BIGの『To Be With You 』を取り上げて、アンプラグド・ブームを象徴した楽曲だ、なんてことを書いたけど、あのころはちょっと異様なほどアンプラグドが流行っていたな、と当時のことを思い出したりして、近いうちにアンプラグドのことを書こうと思っていたのです。しかし、気が付いたらもう3ヶ月も経っていたという。わはは。

"アンプラグド"とは、エレキギターやシンセサイザーのような"プラグ"を挿して音を出す楽器を使わずに、アコースティックギターやピアノなんかで演奏することで、90年代に『MTVアンプラグド』という番組が大流行してから、アコースティックでの演奏をそう呼ぶことが流行ったんだよね。アコースティックよりちょっとカッコいいし。ただ、もしかすると商標登録的なものがあって、アルバムタイトルなんかに"アンプラグド"と付けることが出来たのは、MTVの番組に出演したものだけかもしれないけども。

『MTVアンプラグド』のそもそもの発端はMTVの授賞式でのBON JOVIのパフォーマンスだと言われていて、ジョン・ボン・ジョヴィリッチー・サンボラがアコースティックギター2本で演奏したのを観たプロデューサーが『MTVアンプラグド』を企画したらしいんだよね。エリック・クラプトンニール・ヤング のようなアコースティックでの演奏に違和感のないアーティストだけでなく、NIRVANA ALICE IN CHAINS のようなハードなサウンドのバンドまでもがアコースティックでライヴを披露するという、なかなか画期的な番組でした。


Bon Jovi 『Livin' On A Prayer / Wanted Dead Or Alive』
これがMTVアンプラグドのヒントになったというMTVでのパフォーマンス。カッコいいー!
この映像を放映したMTVジャパンのVJが「BON JOVIやるじゃん! 見直した!」みたいなことを
言っていたのを覚えているけど、それまでナメてたんだな、なんて思ったなあ......

 


そして、あの当時は本家MTVの番組だけでなく、いろんなアーティストが自分たちの曲をアコースティックで演奏するライヴアルバムを作ったり、前述した『To Be With You』や、EXTREMEの『More Than Words 』のようなHR/HMバンドによるアコースティックソングが全米ナンバーワンを獲得したりもしていました。TESLA の『Five Man Acoustical Jam 』も大ヒットしたし、ほんとに大ブームだったんだよね。ただ、この辺のヒットはMTVより前だった気もするし、MTVだけでなく、いろんなアーティストたちが同時多発的に始めたことだったのかも。

TESLA 『Signs』
この曲、めっちゃ流行ってたなあ。この曲はFive Man Electrical Bandの
カヴァーで、このバンド名をもじってアルバムタイトルを『Five Man Acoustical Jam』にしたんだよね

 


正直なところ、個人的にはアンプラグドものが全然好きではありませんでした。とくにクラプトンの『Layla 』なんかは大嫌いだった。アコースティックブルーズやフォークソングなんかは大好物だし、HR/HMにアコギが使われるのも効果的であれば大歓迎なんだけど、もともとエレキやシンセで演奏されているものをアコースティックにするとなると、エレキならではの迫力やダイナミクスが根こそぎなくなっていると感じてね。『Layla』なんてあのスピード感あってこそのあの切なさなのに、なんだかほんわかした演奏になっちゃってさ。いやいや『Layla』はこうじゃないでしょう! って、腹が立っちゃった。

あの当時はHR/HMバンドもこぞってアンプラグドスタイルで演奏していて、ライヴの真ん中辺りにアンプラグドコーナーを設けるなんてことも多かったんだけど、それも俺は好きじゃなかったなあ。というのも、エレキで弾いているフレーズをそのままアコギで弾いているだけだったりするバンドが多くてね。アンプラグドにするならがっつりアレンジも変えて、また違う感動を与えてくれるような演奏だったら大歓迎なんだけど。


GREAT WHITE 『Babe I'm Gonna Leave You』
MTVアンプラグドに出演時のLED ZEPPELINカヴァー。これ、来日ライヴでもやったんだよね。凄かった!

 


......とまあ、悪い面というか、気に入らなかった面ばかりをつらつらと書いてしまったけど、もちろん良い面もありました。余計な装飾がなくなった分、楽曲そのものの魅力や、アーティストの本当の実力を感じられたりもしたんだよね。たとえば、DOKKENGREAT WHITEのように歌唱力や演奏力が高いバンドのアンプラグドは聴くのが楽しかった。DOKKENはジョージ・リンチ(G)をのぞくメンバー3人が代わる代わるリードヴォーカルを歌っていて、シンガーのドン・ドッケン以外の二人の歌の上手さに驚かされたし、別の曲かと思うほどアレンジがガラッと変わっていたりもして、バンドの懐の深さにあらためて気付かされた。GREAT WHITEは、エレクトリックよりもジャック・ラッセルの歌の凄さがより伝わってくる感じ。生で観た時も凄かったな。

Dokken 『Tooth and Nail』
オリジナルからかなりアレンジを変えてのアンプラグド(ジョージはエレキ)。
リードヴォーカルはドラムのミック・ブラウン。これ、オリジナルよりカッコよくないか(笑)

 


アンプラグドのブームはグランジやオルタナが流行るちょっと前のことだったけど、グランジやオルタナと同じように、やはり80年代の派手になり過ぎたロックに対するアンチテーゼだったんじゃないだろうか。......しかし、80年代ロックの代表的な存在だったBON JOVIがそのブームの火付け役のひとつだったというのも、なんだか皮肉な感じがするね。


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