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第319回 俺らの音楽編 トレモロ・アーム ―― これぞエレキギターでしょ! 語りつくせぬトレモロ・アームの魅力
2022 / 08 / 23
先日、久しぶりにBON JOVIのギターソロカヴァー動画をアップしたところ(なんと、ちょうど1年振りでした)、動画を観た友人に「リッチー(サンボラ)って、こんなにアーム使う人だったっけ?」と言われてね。それからしばらくアームの話をしていたら、NIGHT RANGERのブラッド・ギルス(G)を思い出し、気が付けば10月のNIGHT RANGERのライヴ に一緒に行くことになっていました。ブラッドは80年代のギターヒーローだけど、アームといえばブラッド・ギルス、という人は今でも多いのでは? さて、今回の音楽総研は、その“アーム”についてあれこれと。ギターを弾かない人もぜひ読んでみてくださいね。
“アーム”とは、ギター(たまにベースにも)の音程を上下させる棒状のパーツで、トレモロ・アームやヴィブラート・アームが正式名称になるのかな(メーカーによって違ったりする)。英語圏ではWhammy Barと呼ぶらしく、アームは海外じゃ通じないみたいなんだけど、まあ、日本国内で話すなら"アーム"でいいでしょう。Whammy Barはね、なんてしたり顔で言うと、なんだ気取りやがって、と反感を買うこと間違いなし。で、このアームがね、なぜだかギタリストの間でも好き嫌いが分かれるんですよ。
BON JOVI 『In And Out Of Love』
わたくしikkieによるBON JOVIのギターソロカヴァー。
0:12秒のあたりでギュイーンと音程を下げている時に握っているのがアーム。
他のスーパーギタリストたちの動画と並べるのはなんだか恥ずかしいですが、まあ、アームの参考例として......
アームはどんなギターにも必ず付いているものではなく、基本的にはフェンダーのストラトキャスター・タイプのギターに付いていることが多くて、ギブソンのレスポール・タイプのギターにはあまり付いていません。それはフェンダーが商標を持っているシンクロナイズド・トレモロ(以下シンクロ)の影響が大きいんじゃないかなあ。フェンダーとギブソンのギターの構造の違いもあるけど、ギブソンがフェンダーのパーツを採用するというのも考えにくい。ただ、まったくないわけではなく、ビグスビーというフェンダーのシンクロより前からあるアームが付いていたりすることはあるし、改造してフロイドローズ(シンクロの進化系トレモロ・アーム)なんかを付けちゃっている人もいます。
そして、ストラトを弾く人とレスポールを弾く人には演奏スタイルにかなり差があって、ものすごく大雑把に言うと、ストラト派はアームを使ったトリッキーなスタイルにも抵抗がない人、レスポール派はどちらかといえばオーソドックスなスタイルの人、と分けられるかなあ。やっぱり、プレイスタイルによって合うギターと合わないギターがあるんだよね。例外はもちろんいるし、ギターだってその2種類じゃないんだけど。ただ、ストラト派にはエディ・ヴァン・ヘイレンやジェフ・ベックがいて(エディはストラト“タイプ”派かな)、レスポール派はスラッシュやジョー・ペリー......、なんて聞くと、演奏スタイルとギターの相関関係もなんとなく想像がつくでしょ。
Night Ranger 『 (You Can Still) Rock In America』
イントロのギュイーンってところからもうブラッドのアーム炸裂。
ギターソロでもアームのいろんなテクニックを使っているのがわかると思います
アームを使ったプレイにはいろんなものがあるけど、やっぱり「ギュイーン!」と爆弾が落ちるかのような音を出すプレイや、エディがよくやる馬のいななきのようなヴィブラートみたいな、派手だったりトリッキーだったりするプレイが多いから、オーソドックスなプレイを身上とするギタリストはまあ、あんまり使わないよね。リズムギターしか弾かないギタリストもアームを使わない人が多いだろうし。俺の場合は、やっぱりソロが弾きたかったし、エディやブラッドの大ファンだったから、初めてギターを買う時も、当然のようにアーム付きのギターを選びました。「ギュワーン!」とか、「ギュイーン!」って音が出せた時は感動したなあ。「これぞエレキギターだ!」って。ただ、その音がいかにカッコ良かったとしても、やっぱり使う人間のセンスが問われるわけで、センスがない人がやたらと連発するとカッコ悪かったり古臭くなったりもするし、この辺も好き嫌いが分かれる一因だよね。
Jeff Beck 『Where Were You』
アームは使い方次第でギターをこんなに歌わせることが出来るんですよ、という最高の例。
いまだにこれを超えるプレイってないような......
かくいう俺も、アームの付いていないギブソンのフライングVをメインにしていた時期があって、その頃は「俺はアームいらない」なんて、少し気取っていたような......。当時は、ハードロックをやっているのにアームを使わないのがカッコいいとか思っていたのかもなあ。俺のギターヒーロー、ジェイク・E・リーも全くアームを使わないし。......でもある時、「音程を下げるヴィブラートはアームでしか出来ないし、使い方次第だよ」なんてことを言われて、「言われてみれば......」と、またアームを使うようになったんだよね。ははは。それ以降、アームがないと弾けないと思うくらいのアーム使いになりました。我ながら単純だと思うけど、本当に使い方次第なわけですよ。
エディやブラッド以外に俺が好きなアーム使いは、Char さんや足立"YOU"祐二さん。Charさんはシンクロよりチューニングの狂いやすいムスタングのアームをよくあそこまで自在に使うなと感心するし(ストラトのシンクロも使うけど)、タッチの柔らかいヴィブラートも素敵。YOUさんのアームでのニュアンスの付け方にはほんとに影響を受けました。アームを使うとピッキングの回数が減ったりするし、少しニュアンスが柔らかくなったりもして、それもまた好き嫌いが分かれるところではあるけど......、YOUさんの使い方はエロいというか、色気があっていいんだよね。俺のギターもエロいと言われることが多いけど、YOUさんの影響が大きいかもしれないなあ。
Char 『Smoky』
かの有名なイントロのキメの後でやっているように、
ハーモニクスの音程を変えたりヴィブラートをかけたりするのもアームの魅力!
最近売れているようなバンドに疎いので、現在のアーム事情がどうなっているかわからないんだけど、俺が知る限り、テレビに出るような人でアームを使っているのはTHE ALFEEの高見沢俊彦 さんくらいだよね。高見沢さんのアームも好き嫌いが分かれそうだけど、俺は「どんどんやって!」と思っています。だってやっぱり、エレキギターといえば「ギュイーン!」でしょ!
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