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第320回 洋楽編 JEFF WATSON ―― エイトフィンガーの魔術師、ジェフ・ワトソン! 表舞台への復帰を期待して......
2022 / 09 / 06
前回トレモロ・アームのことを取り上げて、アームといえばNIGHT RANGERのブラッド・ギルス、なんてことを書きましたが、読み返しているうちに、そういえばブラッドの(元)相方のジェフ・ワトソン のことはじっくりと書いたことがなかったな、と思いまして……。今回はジェフ・ワトソンについてあれこれと。ジェフはアームを一切使わないギタリストなんですよね。
ジェフ・ワトソンはアメリカのハードロックバンド、NIGHT RANGERのギタリストとして1982年にデビュー。相方のブラッド・ギルスとともに、80年代を代表するギターヒーローとして人気がありました。右手の指を4本使うエイトフィンガータッピング(左手と合わせて8本)や、エコノミーピッキングを駆使したフルピッキングでの速弾きなどのスタイルがよく知られていますが、実はアコースティック・ギターの名手でもあり、NIGHT RANGERのバラードには彼の卓越したアコースティック・ギターのプレイが聴ける曲がたくさん。相方のブラッドはNIGHT RANGERの前にオジー・オズボーンのバンドにいたり、アームを使った派手なプレイが売りだったりしたこともあって、ブラッドのほうが目立つことが多かったけど、ジェフのギタリストとしての実力はブラッドにも勝るとも劣らず! こと、プレイの難易度で言うなら、ジェフのほうが上だったのでは……。
たとえば、エイトフィンガータッピングは、普通は人差し指や中指1本でタッピング(ピックを持つ方の指でフィンガーボードの上で弦をタップするテクニック)するところを、薬指と小指も使ってまるでピアノを弾くかのように演奏するんだけど、これがまあ、難しい。俺も若かりし頃に挑戦したことがあるけど、なんとなくは弾けても、なかなかキレイに音が出せないんだよね。……ピアノも弾ける人なら意外と弾けちゃうのかなあ。
『Jeff Watson guitar solo from Japan tour '83』
1983年の日本公演からジェフのギターソロ。エイトフィンガーが冒頭から炸裂!
そして、それ以上に難関だったのがエコノミーピッキング。ギターはピックで弦を弾くときに上から弾くダウンピッキングと、下から弾くアップピッキングとを交互に繰り返すオルタネイトピッキングという弾き方が一般的なんだけど、ジェフは弦移動をする時にはダウン、ダウンや、アップ、アップと弾いて、オルタネイト以上のスピードで弾いちゃうんだよね。一度のストロークで複数の弦を弾けるから、オルタネイトより効率的(エコノミー)なわけです。これはイングヴェイ・マルムスティーンの登場によって広く知られるようになったテクニックではあるけど、実はイングヴェイの登場より前からジェフはそう弾いていたという。
『Don't Tell Me You Love Me』
ブラッドのギターソロに続くジェフのソロのド頭のシーケンスフレーズが エコノミーピッキングでのプレイ。
ただ、もしかするとジェフにはオルタネイトとかエコノミーっていう概念がなく、
その後のフルピッキングも全部エコノミーかもしれないなあ
先にやったほうが凄いという話ではないし、どちらかが真似をしたんじゃないか、という話じゃないよ。それに、どちらも真似をしたってことはないと思う。二人のプレイスタイルはまったく違うし。でも、より速くプレイするための効率的な弾き方を模索していくうちに同じことを始めていた、というのが興味深いよね。彼らが登場するまではエコノミーピッキングという言葉もなかったわけで......なんというか、同時多発的に、新しい弾き方が誕生しているというのが面白いと思いませんか。80年代にはまだまだそういうことがたくさんあったなあ。二人ともDEEP PURPLEが好きだったはずだから、DEEP PURPLEの『Child in Time 』のソロを弾いているうちにエコノミーのほうが弾きやすいと気付いた、なんてことだったら、もっと面白いんだけど。
で、このエコノミーピッキングが苦手なんです、俺。イングヴェイが好きな人なんかはほんとに上手にこういう弾き方をするんだけど、俺はどうしてもリズムが取れなくて、ジェフのフレーズもオルタネイトで弾いてしまう。そうすると、同じスピードで弾こうと思うと、より難易度が上がるわけで、結局挫折。ブラッドのフレーズはいくつか真似が出来るようになったけど、ジェフのテクニカルなフレーズはいまだに弾けません......。
もちろん、ジェフが凄いのはテクニックだけじゃない。作曲能力も高いし、先に書いたようにアコギのプレイは本当に素晴らしい。とくに『Goodbye 』や『Let Him Run 』のアルペジオは必聴! そして、そんなジェフだからこそ、作曲に対するプライドやこだわりが強かったのか、自作曲がアルバムに収録される割合でもめたことがNIGHT RANGER脱退の引き金になったとか......。ただ、これはバンド側の言い分で、ジェフは「妻の父親が危篤でオーストラリアに行っている間に解雇された」とインタビューで語っている。
『Let Him Run』
ジェフのアコースティック・ギターによる名演!イントロ見るとやっぱりエコノミーで弾いてるねえ......
バンド脱退以降、ジェフはジョー・リン・ターナーとバンドをやったりしていたようだけど、現在は表舞台に立つような活動はしていない様子(映画音楽を作ったりしているらしい)。何年か前に当時NIGHT RANGERにジェフの後任として参加していたジョエル・ホークストラと共演したりしていたし、そこまでNIGHT RANGERとの関係は悪くないのでは......と、想像というか、期待をしているんだけど、どうだろう。IRON MAIDEN みたいに、ジェフが戻ってギタリストが3人っていうのもありだと思うけどな!
『Over the Mountain』
ランディ・ローズのトリビュートコンサートでのNIGHT RANGER新旧ギタリストの競演!
エイトフィンガーでハモるのなんて他で見たことないなあ
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