ikkieの音楽総研

第330回洋楽編 JEFF BECK ―― 巨星墜つ〜追悼ジェフ・ベック

2023 / 01 / 24

またしても訃報が届きました。1月10日、ジェフ・ベックが細菌性髄膜炎で亡くなったとのこと……。12日の朝に友人から届いたLINEでベックが亡くなったことを知って、その日からどうにも気がふさいだままでいます。ベックは今年78歳だったけど、見た目は若いころとほとんど変わっていないし、音楽的にもレイドバックしたり、老け込んだりすることもなく……、病気や、ましてや亡くなるなんてことからはほど遠い人だと思っていたから、この訃報にはほんとにショックを受けました。まさかベックが亡くなるなんて……。

ジェフ・ベックはここであらためて書く必要のないくらい、世界中の音楽ファンが世界最高峰のギタリストだということを知っていると思います。ピックを使わずに指で弾くその独特なフレーズや個性的なサウンドは、一発でジェフ・ベックだとわかる個性的なもので、“唯一無二”とは彼のためにある言葉なんじゃないかと思うほど。

前にも書きましたが、俺がベックのことを知ったのは彼がアルバム『Flash　』を発表したころで（ベック自身もあまり気に入っていないらしい）、当時はそれほど気に入らず。名盤と名高い『Blow By Blow　』や『Wired　』なんかも一通りさかのぼって聴いてはみたものの、中学生の俺にはちょっと敷居が高くてね。俺がベックの凄さに気付いたのは、それから4年後に発表された『Jeff Beck's Guitar Shop With Terry Bozzio and Tony Hymas　』でした。一度その凄さに気付くと、不思議なことに、よくわからなかった過去の作品でもスッと聴けるようになって、今では他の作品もすっかり愛聴盤になっています。その中でもやっぱりシンガーがいる作品がお気に入りで、ロッド・スチュワート　がいたころのJEFF BECK GROUP　や、BECK, BOGERT, APPICE　をとくによく聴いているかな。まあ、ベックのファンとしてはちょっと邪道なのかもしれないけど、俺は歌ものロック愛好家なので。しかし、フェイヴァリットはオールインストの『Jeff Beck's Guitar Shop With Terry Bozzio and Tony Hymas』ですよ。

『Scatterbrain』
圧巻......！

ここでも何度も書いてきたけど、俺はこのアルバムに収録されている『Where Were You』という曲のベックのプレイがほんとに好きでね。ベックはトレモロアームを使ってギターを歌わせるプレイがトレードマークのようになっているけど、この曲ではその真骨頂が聴ける。トレモロアームを使ってハーモニクスの微妙な音程をコントロールするというテクニック面での凄さもあるけど、なにより、そのエモーショナルで歌心のあるプレイの素晴らしさ......！　まさにギターが歌っているかのよう。この曲でのベックのプレイは、ギターを弾かない人にもその素晴らしさが伝わると思う。以前、俺の友人がこの曲を聴いて、「（アームを使ってこんなに凄い演奏をして）アームを作った人が喜んでるね」と言って、言い得て妙だと感心したんだけど、アームを作った人だけじゃなく、ギターという楽器そのものを作った人も喜んでいるんじゃないだろうか。

『Superstition』
スティーヴィー・ワンダーがベックのために書いたのに、
自分でもレコーディングして先にリリースしちゃったといういわくつきの楽曲。
スティーヴィーによるとレコード会社の指示によるもので、ベックには事前に話していたとのこと。
こうやって共演もしているし、二人の間に確執はなさそうだよね

今回の訃報でいろんな人が追悼記事を書いていると思うんだけど、ちょっと音楽総研らしく、他ではあまり触れられないであろうベックの参加作品についても書いておくと、ベックは1990年にリリースされたジョン・ボン・ジョヴィのファーストソロアルバム、『Blaze of Glory　』に全面参加し、ほとんどの曲ですぐにそれとわかるギターソロを披露しています。セッション的に参加したものなのか、アドリブっぽいプレイが多く、ベックのオリジナル作品ほどの鬼気迫るソロはないものの、例えばタイトル曲のソロなんかは、やはりベック以外にはこんなフレーズは思いつかないだろう、という名演。BON JOVIのことはノーマークなベックのファンって多そうだけど、カラっとしたアメリカンロックでギターを弾くベックって珍しいと思うし、ベックのファンも気に入るんじゃないかな。未聴の方はぜひ！　余談だけど、このアルバムのメイキング映像で、ベックにこう弾いてほしいと指示を出した後に、「わー、俺なんかがジェフ・ベックに指示を出しちゃった！　殴ってください！」とベックに言ってしまうジョンがかわいいんだよね。

『Where Were You』
ため息が出るほどの名演。こんなギター弾ける人、他にいないよね......

世界三大ギタリストとして並び称されるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジと比べても、ベックは驚くほど若く見えて......、それはやはり、彼のあくなき向上心や、若いミュージシャンたちとの積極的なコラボレーションと無縁ではなかったと思う。常に進化し続けた偉大なアーティストでした。残念です......。

R.I.P. Jeff, My sincerest condolences to you and your family.

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