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第345回 ライヴレポート編 MR. BIG ―― ザ・ビッグフィニッシュ、フェアウェルツアー......、MR. BIG、最後の日本公演!! (番外編)
2023 / 08 / 22
(前編・後編)
7月25日にMR. BIGのライヴを観てから、はや1ヶ月ほどが経ちましたが、あれ以来ずっとMR. BIGロスが続いています。日本公演の後は東南アジア方面でツアーを行っているし、ヨーロッパやアメリカ大陸でのツアーも控えているはずで、まだ解散したわけではないんだけど、もう生で観られないのかと思うとどうにも寂しくてね。......さて、今回の音楽総研はそのMR. BIGについてもう少しあれこれと。前後編の2回に渡ってライヴレポートを書いたけど、まだまだ話したいことがたくさんあるのです。
MR. BIGのライヴを観て、あらためて感じたことがいくつかあったんだけど......、まずはやはりビリー・シーン(B)の凄さというか、特異さ、でした。本番のプレイはもちろんのこと、ライヴが始まる直前にスタッフが軽くベースを鳴らすと、もうそれがすぐに、ビリーの音だ! って感激してしまうほどの個性的な音でねえ。本人が弾く音とはもちろん違うよ。でも、ベースなのにガンガン歪んでいて、ベースなのにギターみたいに中音域が強調されている、あんな音はビリー以外に聴いたことがない。他にいるとしたら、それはもうビリーのフォロワーでしょう......というくらいに特徴がある。俺はギタリストだから、たとえばポール・ギルバート(G)の音を聴けば、ああ、ポールの音だとは思うけど、他の人が軽く鳴らしただけでポールの音だとは思わないんだよね。でもこれ、誰が弾いてもビリーの音がする、って意味ではないので誤解なきよう。ああいう傾向の音作りをする人が他にいないから、誰が弾いてもビリーの音にしか聴こえない、ということ。
そして本番が始まると、ベース中心に音を作っているんじゃないかと思えるほどベースがデカい! ライヴにおける音作りは、各楽器の音がバランスよく聴こえるようにセッティングするものだけど……、ことHR/HMというジャンルにおいては、やっぱりギター中心で音作りがされることが多いし、ベースは音量がどれだけデカくても、はっきり聴こえるというよりは“響く”という感覚が近いように思う(武道館のような大きな会場ではとくにそう)。ライヴ会場で、お腹や足にベースの重低音が響いて驚いたことがある人も多いんじゃないかな。でも、ビリーの場合はフレーズがはっきりと聴こえるんだよね。これはやっぱりビリーのプレイがクリアーだからだと思う。プレイが粗いと、普通はあんなに歪んでいたら何をやっているかわからなくなってしまう。もちろんベースらしい重低音もあるし、その大音量と、厚みのあるサウンドのおかげでギターソロになってもサウンドが薄くなることが一切ない。
ここでは細かく書かないけど、ビリーのベースのフレーズの特異さについては皆さん知っての通り。ビリーの前にあそこまでタッピングや速弾きをしたベーシストはいなかったし、やればすぐにビリーのフォロワーだと思われてしまうほどの、唯一無二のベーシストです。そして、そのビリーがエリック・マーティン(Vo)を中心とする歌ものをやった、というのがMR. BIGの凄いところ......。
『CDFF-Lucky This Time / Billy Sheehan Solo』
パットのドラム大好き! そしてビリーのベースソロの凄いことといったらもう
そのエリックはなんだか喉の調子が悪そうだったのが少し気になったけど、それでも彼の歌声は魅力的で、この歌声があったからこそのMR. BIGだよな......と感慨深く聴いていました。ポールは相変わらず正確無比なプレイを聴かせてくれたし、レポートにも書いたとおり、以前よりもエモーショナルなプレイが増えたようにも感じた。そして、ポールが書いた『Green-Tinted Sixties Mind 』のようなポップな楽曲はファンに愛されていて、それらの楽曲が他のHR/HMアーティストとは違うMR. BIGならではの個性を際立たせていたと思う。後任のリッチー・コッツェン がどれだけ素晴らしいギタリストだったとしても、ポールがまとうその空気感も含めて、MR. BIGにはやっぱりポールがいなければダメなんだよね......。
『Green-Tinted Sixties Mind』
この当時はポールがこういう曲を書くのは意外だったけど、この曲以降のポールは、ポップセンス爆発! って感じだったよね
そして、今回のライヴで俺がいちばん注目していたのが、パット・トーピーの後任として参加したドラムのニック・ディヴァージリオ でした。発表前に他のメンバーたちが「誰もが知っているドラマーだ」なんて言っていたものだから、俺も含めていろんな人たちが的外れな予想をしてしまっていたんだけど......、ニックの参加が発表された時は、「それ誰?!」って反応が多かったように思います。俺も知らなかったし。しかし、実はニックは自身のバンドの他にもGENESIS やTEARS FOR FEARS などの超有名かつ、超一流のバンドでプレイしていた経験があるドラマーで、HR/HMシーンではあまり知られていなくとも、それ以外の音楽シーンではたしかに誰もが知っているドラマーだったのでした。
パットの大ファンだった俺は、パットと似ても似つかないプレイをされたら嫌だなと不安に思っていたんだけど、ポールとの共演経験からポールに推薦されて参加したというニックは、メンバーの言う通り、たしかにパットと似たグルーヴ感を持っていたし、これまでの経験からもテクニック的には問題があるはずがない。実は、始まってすぐはパットよりスネアのピッチが高いだとか、パットはこうだった......なんて、アラ探しをしてしまっていたんだけど、ニックはそんな俺の猜疑心を吹き飛ばすほど素晴らしいプレイを聴かせてくれたのでした。ニックがいなければ、最後のツアーもなかったかもしれないものね。ニックに感謝!
『Nick D'Virgilio - On Tour with Mr. Big: VLog # 2』
ニックのツアーVLOG。日本公演の裏側を少し見せてくれています。ニックの人柄の良さもよくわかるよね
前回の解散時には未練タラタラに見えたエリックも、インタビューなどを読む限り、今回の解散については気持ちの整理がついているように見えて、ファンとしてはなんとも複雑な気持ちになっています。以前は再結成の可能性があるかもしれない、と思えたけど、今回はその可能性は限りなく低そうなんだもの。でもね、ツアーを続けていくうちに、お互いのケミストリーを再確認して、解散やーめた! ってなる可能性もゼロではないのでは......なんて、未練タラタラの俺なのでした。
※おまけ
ikkieのバンド、Antlionがシングルをリリースしました! 各種配信ストアで聴くことができますので、ぜひ聴いてみてくださいね。
ダウンロード&ストリーミングはこちら↓
https://linkco.re/vPZ00Quz
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber
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