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第371回 俺らの音楽編 ―― 音楽総研的パクリ考察! アリかナシかは置いといて
2024 / 09 / 10
いつの間にかもう9月ですねえ。朝晩は少しずつ過ごしやすい気温になってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。俺は猛暑のピークは過ぎたと気を抜いてしまったのか、はたまた夏の疲れが出てしまったのか、久しぶりにぎっくり腰をやってしまい、2週あけての更新となりました……。楽しみにしていてくださった方、すみません。……さて、今回の音楽総研はいつもと趣向を変えまして、音楽業界とは切っても切れない(?)、盗作、パクリ問題についてあれこれと。
パクリと聞くとまあ、それはやっちゃいけないことですよ、というのが普通だと思うし、俺もそうは思っているんだけど、知らない曲に偶然似ちゃうことだってあるし、意図的にやったのかどうかが重要なんじゃないか、とも思っていてね。その辺の心境なんかをミュージシャン側から書いてみようかと。で、まず俺はパクったことがあるかというと……ええ、ありますよ、ありますとも! しかし、高校生の頃ですよ、と言い訳を。今はしていないはず……はず、というのは、気付いていないだけかもしれないからね。
盗作騒動でも有名なジョージ・ハリスンの『My Sweet Lord 』は、『He's So Fine 』という曲の盗作だと訴えられて、“潜在意識の内における盗用”だったとジョージが認めて敗訴している。『My Sweet Lord』は大好きな曲だったし、まさかあのジョージ・ハリスンが盗作なんて……と、最初は信じられなかったんだけど、初めて『He's So Fine』を聴いた時はずっこけました。だってそっくりなんだもん。ほんとに気付いていなかったかどうかはジョージにしかわからないけど、こういうこと、個人的にはよくあります……。だいたい途中で気付いてボツにしちゃうんだけど。
ジョージ・ハリスン 『My Sweet Lord』
名曲! ですが……
The Chiffons 『He's So Fine』
そのまんまやないかーい! ちなみにこの曲のジョディ・ミラーのカヴァーヴァージョンはアレンジもそっくりで、
そのせいで『My Sweet Lord』との類似が発覚したらしい
すごくカッコいい曲がスラスラと浮かんで形にしてみたものの、どこかで聴いたことがあるような気がする……で、よーく考えてみると、頭の中で聴こえていた誰かの曲を再現していただけだったことに気が付いてがっかりするという。いい曲が出来たと思ったらU2の曲だった、とかね。でも、これ気が付かずに発表しちゃうこともあって、完成させた後に他の曲に似ていたことに気付いてしまった、なんて経験のあるミュージシャンはけっこういるんじゃないだろうか。ジョージはどうだったんだろうねえ。もしかしたら……もしかしたらだけど、あの曲みたいな雰囲気にしたいなと、あえて寄せて作っていたのかもしれない、とも思う。そして、それが訴えられるとは思っていなかった、とか。
というのも、60年代や70年代の音楽業界は今よりももっとおおらかで、オマージュというか、自分が影響を受けた曲をモチーフにして別の曲を作る、なんていう、和歌でいうところの“本歌取り”のようなことは当たり前のように行われていたんだよね。リッチー・ブラックモアが悪びれもせず、DEEP PURPLEのあのリフは○○って曲から拝借したんだ、なんて話しているのを聞いて驚いたことがあるけど(しかも何曲も)、ロックがまだまだ発展途上の音楽だったあの当時は、そういうことが当たり前のように行われていたんだろう。LED ZEPPELINなんかもいっぱいやっているし……。ただ、ツェッペリンはやり過ぎたのか何度も訴えられていて、敗訴した曲は後にオリジナルの作者もクレジットに入れていたりするんだけど。今の感覚で聴くと、正直なところ、これでよく自分の曲だって言えたもんだな、と思うくらいそのまんまな曲もある。タイトルまで同じだったりするし、なんでカヴァーとして発表しなかったのか。でも、オリジナルよりもカッコいいんだよね……。ツェッペリンのパクリ問題はそこが悩ましい。
リッチー・ブラックモア 『Rare Interview (1997)』
これはBLACKMORE'S NIGHTのDVDに収録されたインタビューだったと思う。
あの曲はあのリフを参考にして......と自ら解説。「I stole it(盗んだんだ)」って言ってるね(笑)
ジョージや俺の無意識の盗用と、リッチーみたいに意図的に人の曲を参考にして別の曲を書くのは同じパクリでもやっぱり違う。どっちのほうが悪いなんてことは言えないけど、ミュージシャン側から見ると、意図的かどうかの違いは大きい。そして意図的なものにはもう一つあって、○○みたいな曲が作りたいからと、その曲から持ってくる、またはその曲のフレーズを少し変えただけというもの(ツェッペリンもこれ?)。これは個人的に、それは作曲じゃなくて替え歌だ、と思ってしまう。そしてこれもまた、好きすぎて真似しちゃうのと、この曲はこうやっているから売れたんだな、ここ頂いちゃおう、だとか、今はこういうのが流行っているから似たような曲を作っちゃおう、というのではまた違う。好きで真似するのはオリジナルに対する敬意と愛情があって、まだ可愛げも感じられるけど、そうでないものはやっぱり悪質だよね。
LED ZEPPELIN 『Dazed And Confused』
言わずと知れた大名曲ですが......
ジェイク・ホルムズ 『Dazed And Confused』
こちらが元ネタ。そのまんまやないかーい! タイトルも同じ、歌詞も引用......。
当然ツェッペリンは訴えられたみたいだけど、のちに和解したみたいです
そして、失礼ながら、ここ日本でよくパクリ論争が起こるのがB'z 。これにはちょっと思うところがありまして......。B'zのパクリ論争が始まったころは、スティーヴィー・サラス や、AEROSMITH、VAN HALENなんかにそっくりな曲(アレンジ)を聴いて、これはダメだろ、なんて、元ネタのアーティストのファンだった俺は腹が立ったりしていたんだけど、今となってはもう、こんなにあからさまにやるからには何か明確な意思があってやっているのに違いないと、腹が立つようなことはなくなりました。B'zの二人は両人ともに、ひと声、ひとフレーズを聴けばすぐにわかるくらいのオリジナリティの塊でしょ? その二人がああいうことをやっているのは、アイディアがなくて盗んだようなパクリではなく、ヒップホップ系みたいにサンプリングしているような感覚なのか、あるいはパロディくらいの気持ちで楽しんでいるんじゃないのかなあ。やり過ぎだと思うこともあるけど(笑)、敬意も愛情も感じられるし、さらに元ネタのスティーヴィーやAEROSMITHとも共演しているわけで、本人たちも問題なしと認めているってことだよね。
B'z 『GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-』
残念ながら公式動画はなし。この曲は歌だけになるところが
MÖTLEY CRÜEの『Live Wire』にも似てるって言われてるみたいだけど、
下の動画の 『The Harder They Come』が元ネタでしょう。
そしてソロのところでジミヘンの『Purple Haze』も引用してる。こういうことやるのが好きなんだろうね
STEVIE SALAS COLORCODE 『The Harder They Come』
スティーヴィーが登場した当時、ファンクとロックを大胆に融合させたスタイルがロックギター好きの間で
かなり話題になりました。ハードロックにファンキーなカッティングを入れるのが流行ったのは、
スティーヴィーの影響もあったと思う。久しぶりに聴いたけど、やっぱりカッコいい!
ちなみに、スティーヴィーはのちに稲葉さんとユニットを組んだりもしているんだよね。つまり、お咎めなしってこと......
パクリなのかオマージュなのかの線引きは難しいけど、オマージュは元ネタに気付いてほしいというか、気付かれないと困る、くらいの気持ちでやっていて、パクリは気付かれない限りは黙っています、って感じでやっていそう。まあ、聴く人がどう思うかで線引きは変わってきそうだけど、その是非はとりあえず置いといて、パクリもオマージュも結局センス次第ってところはあるよね。ツェッペリンくらいカッコよくやられちゃったら否定しにくいもの。ただ、どちらにせよ、指摘されたならクレジット入れるくらいの潔さはほしいね。......最初から入れろって? 俺もそう思う。
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber
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