ikkieの音楽総研

第372回 俺らの音楽編 ―― オマージュとはなんぞや? 音楽総研的パクリ考察その2

2024 / 09 / 24

先日リリースされたマイケル・シェンカーのニューアルバム、『My Years With UFO 』が素晴らしいです。マイケルが在籍した時期のUFOのトリビュートアルバムで、GUNS N' ROSESのアクセル・ローズやスラッシュ TWISTED SISTERディー・スナイダー などの錚々たるアーティスト達が参加しているんだけど、どのアーティストの演奏も興味深くて、何度も繰り返し聴いています。アクセルがUFOを歌うなんて想像したこともなかったよ。UFOを知らないような若い人たちにもぜひ聴いてもらいたいなあ......。さて、今回の音楽総研は、そのマイケル・シェンカーではなく、前回に続いて音楽総研的パクリ考察その2を。一回だけじゃとても書ききれなくてねえ。マイケルのことはまた次の機会にたっぷりと。

前回、パクリには無意識の盗用と意図的な盗用があって、意図的なものには"オマージュ"や"パロディ"と呼べるものもある......なんてことを書きましたが、オマージュのことはあまり触れられなかったと思っておりましてね。

まず、オマージュとはなんぞや、というと、自分が影響を受けたアーティストの楽曲に似た楽曲を作ることだとは思うんだけど、オマージュというからには、やっぱりそこに愛情やリスペクトがあるかが重要。......しかし、この辺もパクリとの線引きは曖昧だよねえ。前回も書いたように、こういうのが流行っているから頂いちゃおう、というのは明らかにパクリだけど、好き過ぎるあまりにそっくりになっちゃって、本人はオマージュのつもりでも、周りからはパクリだと言われることもあるだろうしね。個人的には、オマージュというからには元ネタを明らかにするべきだし、できればクレジットも入れましょう、と思っています。

同郷の友人のバンド、LADIAの『F』という曲の間奏にCARPENTERS の『Yesterday Once More』のメロディが使われているんだけど、その曲にはちゃんとクレジットが入っています(著作権料も当然発生)。それがまた、アレンジの良さはもちろん、歌詞の内容ともリンクしていて、そのフレーズを入れた意味がちゃんとあるんだよね。安易に引用しただけのパクリとは全然違って、センスもいいし、もうオマージュのお手本のような素敵なアレンジだから、ぜひ聴いてみてください(『Year of 1989 』というアルバムに収録されています)。実はこの曲を聴いた時、やられた! と思いました。なんならちょっと嫉妬した。自分には到底思いつきそうにない発想だったし......。

ただ、俺もオマージュみたいなことはやったことがあって、高校時代のバンドで、いわゆるジミヘンコードを使ったオリジナル曲に、シャレでジミ・ヘンドリックスの『Purple Haze』 のフレーズをそのまま引用していたんだけど、ライヴの後に対バンしたバンドの大学生のメンバーが「あんなの誰も気付かねーぞ!」と笑いながらツッコんでくれてね(お客さんは女子高生ばっかりだったし)。俺としてはその大学生みたいな人に気付いてほしいと思ってわざとやっていたし、その言葉がすごく嬉しくて、30年以上経った今でも覚えているという。当時はまだオマージュって言葉を知らなかったと思うんだけど、今思えば、あれはまさにオマージュで、なかなかセンスのいい高校生だった、と自画自賛。しかしその数年後、EXTREMEが同じジミヘンの『Voodoo Child(Slight Return) 』のフレーズを引用していて、それがカッコいいだのセンスがいいだのと絶賛されているのを聞き、俺のほうが先にやっていたのに! と悔しい思いをしました。まあ、EXTREMEもなかなかセンスいいじゃん、と思うけどね(笑)。

EXTREME 『Rest In Peace』
ギターソロの後、4:03くらいにジミヘンのリフが登場します
 


ジミ・ヘンドリックス 『Voodoo Child (Slight Return)』
こちらが元ネタ。ちなみに、中学生のころに動くジミヘンを初めて観たのがこのライヴ映像でした
 


オマージュと聞いてまず俺が思い出すのは、LADIAとそのEXTREMEの苦々しい思い出だったりするんだけど、奥田民生 さんが手がけた初期のPUFFYのアレンジを思い出す人も多いのかな。THE BEATLESELECTRIC LIGHT ORCHESTRA っぽいフレーズがふんだんに散りばめらている楽曲を初めて聴いた時は、なんてセンスがいいんだ! と感心したものです。ポール・ギルバートをはじめ、あのアレンジを絶賛している海外のアーティストもたくさんいたっけ。

PUFFYのアレンジのように、それっぽいフレーズを使いつつも曲は似ていない、というのもまた、オマージュとパクリの線引きとして重要......というか、センスのいいオマージュの条件じゃないだろうか。メロディやリフをそのまま使って、そっくりな曲を作るというオマージュもあるんだろうけど、それはもう替え歌やパロディのレベルだし、センスがいいとはとても思えない。たとえばPUFFYの『ジェット警察 』はTHE WHOの『Won't Get Fooled Again』 のイントロをほぼそのままやっちゃってるけど、それでも曲そのものが似ているわけではないし、俺と同じで(?)、元ネタに気付いてほしい引用、だよね。PUFFYのオマージュはどの曲もセンスいいけど、やっぱり『これが私の生きる道 』が秀逸。具体的にどの曲に似ている、というわけではなく、いろんな要素が混ざっていて全体的にTHE BEATLESっぽい。これもまた、オマージュのお手本のようなアレンジでしょう。

PUFFY 『これが私の生きる道』
ええと、亜美ちゃんの大ファンです
 


THE BEATLES 『Please Please Me』
これが私の生きる道には、この曲をはじめとして、いろんなビートルズのエッセンスが詰め込まれています。
なんてセンス!
 


前回の繰り返しになっちゃうけど、パクリでもオマージュでも、やっぱりそこに愛情と敬意があるかが重要だと思っています(パクリがいいことだとは思わないけど)。そして付け加えるなら、そこにクリエイティビティがあるか。オマージュであれなんであれ、そのまま持ってくるのであれば、ちゃんと意味があってほしいし、そのアーティストならではのセンスを見せてほしいよね。

ACCEPT 『Metal Heart』
本文中では触れていませんが、クラシックをオマージュした楽曲もたくさんあります(著作権が切れてるから?)。
ギターソロで『エリーゼのために』を引用
 


『もしもビートルズがマライア・キャリー『恋人たちのクリスマス』をカバーしたら』
中島雄士さんというミュージシャンの方がビートルズ風のアレンジでマライアをカバー。
初めて観た時、あまりにそれっぽくて大笑いしちゃった。
めちゃくちゃビートルズ愛を感じるよね
 





※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja 


※ikkieのYouTubeチャンネルです!
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