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第375回 洋楽編 ―― David Coverdale 過去のソロアルバム3作を豪華6枚組ボックスセットでリリース!
2024 / 11 / 05
WHITESNAKEのデイヴィッド・カヴァデールが過去に発表した3枚のソロアルバムが、リミックスやリマスターを施されWHITESNAKE名義の作品として海外で10月25日にリリースされました(日本では輸入盤国内仕様 として11月6日リリース)。『Into the Light: The Solo Albums 』というタイトルで、なんと6枚組の豪華ボックスセットです。日本でのリリース前ではありますが、すでに配信 は始まっているので、さっそく聴いてみたところ、これが期待を大幅に超える素晴らしい内容でね。今回はそのボックスセットについてあれこれと……。
デイヴィッド・カヴァデールはDEEP PURPLEの解散後、WHITESNAKEの結成前に『Whitesnake 』(1977)、『North Winds 』(1978)の2枚のソロアルバムをリリースし、その2枚に全面的に参加したミッキー・ムーディ (G)と共にWHITESNAKEを結成しています。そして、1997年にWHITESNAKEが2度目の解散をした3年後に久々のソロアルバム『Into the Light 』(2000)をリリース。あれだけの実力と実績を誇るシンガーであっても、3枚ともバンドがない時期でのリリースなのが、(WHITESNAKEが実質デイヴィッドのソロプロジェクトだったとしても)バンドにこだわってきたデイヴィッドらしいね。
ボックスセットの6枚の内訳は、まず3枚それぞれの最新リミックスと、オリジナルバージョンに慣れ親しんでいるファン(俺とか)のために、リミックスはせずに最新技術でリマスター(『Whitesnake』と『North Winds』は1枚にまとめられている)されたものが2枚、『Into the Light』収録曲のオルタナティヴバージョンや当時のデモが収録された1枚で構成されている。リミックスされたものは格段に各楽器の演奏が聴き取りやすくなったうえで、現代的にアップデートされていて、リマスターも以前のものに比べて迫力が増しており、聴き応え十分。そしてやはり興味深いのが、過去作の再リリースで恒例になっている当時のデモだ。
『Love Is Blind (2024 Remix)』
『Into the Light』に収録。いい曲!
『Into the Light』のデモには、デイヴィッドとは因縁のある元WHITESNAKEのジョン・サイクスとBLUE MURDERで活動していたトニー・フランクリン (B)が参加していたりもして驚いた。たしかに『Into the Light』にも1曲参加していたし(他の曲のベースはこれまた元BLUE MURDERのマルコ・メンドーサ )、WHITENSNAKEのツアーに参加したことはあったけど、こんなにがっつり関わっていたとは。このソロアルバムの後に再結成されたWHITESNAKEにはマルコ・メンドーサが参加したけど、トニーが参加する可能性もあったのかもね。
そして、デイヴィッドが10代の頃に自宅でレコーディングしたというデモも数曲収録されており、これがまた凄い! おそらく、『The Purple Album 』のスペシャル・ゴールド・エディションに収録されていたデモと同時期のものではないかと思うけど......、デイヴィッドの歌声は10代の時点ですでに完成されていたことがよくわかる。恐るべき10代! そのデモは時々チューニングが甘かったりもするアコースティックギターとデイヴィッドのヴォーカルだけで構成されていて、シンプルなだけにデイヴィッドの歌の魅力がダイレクトに伝わってくる。楽曲そのものは、WHITESNAKEの『Ain't Gonna Cry No More 』あたりを想起させるほのぼのとしたフォークソング的なメロディのものが多く、のちのHR/HM要素は皆無。こういうことがやりたかったのなら、どうしてDEEP PURPLEに加入したのかという疑問があらたに浮かんでしまったけど(それでもよくぞ加入してくれました!)、THE BEATLESなんかの影響も見え隠れしていて、非常に興味深い。
『Time & Again (Strings Version - 2024 Remix)』
『North Winds』に収録。歌声は1978年のデイヴィッド、映像は2024年のデイヴィッド。
オリジナルはエレピによる演奏だけど、今回のバージョンではストリングスをフィーチャー。
......ごめん、オリジナルのエレピのほうが好きです
WHITESNAKEのファンだという人でも、この3枚のソロアルバムを聴いたことがない人はけっこういるんじゃないだろうか。少なくとも、俺の周りには俺以外にこの3枚のアルバムを持っている人はいないなあ。しかし、そういう人たちにこそ、このボックスセットを聴いてほしいんだよね。初期の2枚はブルーズロックの隠れた名盤だし、実はWHITESNAKEはもともとこういうサウンドのバンドだったわけで、1987年の大ヒットアルバム『Whitesnake』 だけがWHITESNAKEじゃない。デイヴィッドの本質はこちらのはず。『Into the Light』にしても、よく知られているWHITESNAKEのスタイルとは違って聴こえると思うけど、ソウルフルないい曲が揃っているし、未聴の人にはぜひとも聴いてもらいたい! デイヴィッド・ボウイとの活動で知られるアール・スリック (G)が素晴らしいギターを弾いていて、デイヴィッドとの相性も抜群なんだよね。このコラボレーションはまた聴いてみたいなあ。
『Peace Lovin' Man (2024 Remix)』
1977年の『Whitesnake』に収録。ゴスペル風味満載の名演奏!
なんだかいつも書いている気がするけど、個人的には、デイヴィッドはもう『Still of the Night 』や『Bad Boys 』みたいな曲をやらなくてもいいと思う。それらの楽曲ももちろん大好きなんだけど、キーを下げて無理にシャウトするデイヴィッドよりも、70代になったデイヴィッドなりのソウルフルでブルージーな......、今回のボックスセットに収録された楽曲や、デイヴィッドが影響を受けたR&Bなんかの楽曲だけをプレイするデイヴィッドが観たい。今回、これらのアルバムをWHITESNAKE名義でリリースしたことに深い意味はないのかもしれないけど、全曲ではないにしろ、『Only My Soul』や『Blind Man』なんかがWHITESNAKEのセットリストに加わらないかと、ちょっと期待しています。大掛かりなワールドツアーはもうやらないみたいだけど、コロナ禍で来日が流れてしまったし、ソロでもいいからもう一回くらい来てくれないかなあ。ギターはミッキー・ムーディとアール・スリックで、ブルーノートあたりでやってくれると最高なんだけど......。
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
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※ikkieのYouTubeチャンネルです!
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