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第376回 俺らの音楽編 ―― ロックバンドやるのに音楽理論っているの?
2024 / 11 / 19
急に寒くなったと思ったらまた暖かくなったり……、急激な気温の変化で俺の周りにも風邪をひいている人がたくさん。皆様ご自愛くださいね。……さて、今回の音楽総研はインターネットやSNSで定期的に話題になる、音楽理論の要、不要についてあれこれと。この話題、ちょっと不毛な議論だとも思っているんだけどね。
まず、音楽理論とはなんぞやというと……、まあ、ざっくり言えば音楽の構造や手法についてのルール、とでも説明しておくと、音楽をやっていない人にもなんとなくイメージしていただけるでしょうか。ただ、その内容は多岐に渡るし、クラシックとポピュラーミュージックでも必要とする理論は違う。雅楽やインドなんかの民族音楽もまた違うよね。なので、今回の主旨としては、何をもって音楽理論とするのかだとか、必要だとするならどこまで必要なのか、ということではなく、シンプルに「ロックバンドやるのに音楽理論っているの?」です。
で、先に結論を書いてしまうと、音楽をやりたい、作曲したり、バンドをやったりしたいと思っているなら、ロックバンドだろうがなんだろうが、音楽理論は必要です! ……で終わらせてしまいたいところだけど、まあ、俺も40年近くのバンド経験からひしひしと実感しているわけなので、その辺りを少し説明しないとね。別にいらないんじゃないかと思っている方も、しばしお付き合いください。
なんでこういう話題が定期的に出てくるのか、というと、やっぱり有名なミュージシャンたちが「音楽理論は知らない」、「楽譜は読めない」なんて発言をしたりすることが多いのも、その一因ではないかと思っています。ピアノやヴァイオリンを子供のころに習うとなると、楽譜(が読めること)は必須だよね。しかし、ギターやベースを独学で覚えるとなると、楽譜は必須じゃないんですよ。ギターにはコードの押さえ方を図で表現したダイアグラムというものがあるし、ギターの弦の数と同じ6本線の楽譜に押さえるフレットが数字で書いてあるタブ譜というものもある。ギターはピアノと違って同じ音が出るポジションが複数あるから、音符だけが書いてある五線譜よりも、どこを押さえるのかがわかるタブ譜のほうが簡単で、場合によってはより正確に弾けたりもします。
そうすると、いわゆる五線譜が読めなくても、それなりに練習すればギターが弾けるようになっちゃうんだよね。俺もそうでした。ただ、弾けはするけど、音名を気にせずに押さえるフレットだけを覚えて弾いているから、自分が何の音を弾いているのかわからずに弾いていたりするという。これ、ピアニストなんかにはすごく驚かれます。耳コピも出来るし、チューニングのズレももちろんわかる。それでも、今弾いた音は何? って聞かれると、えーっと、なんてフレットを確認するギタリストって意外と多いんじゃないかな。でも、それがギターのいいところでもあるわけで。それに加えて、エディ・ヴァン・ヘイレンみたいな有名ミュージシャンが、俺は楽譜なんか読めないよ! なんて言っているのを聞いて、エディだって読めないんだからいいじゃん! となってしまうのでは。日本だと、桑田佳祐さんとかあいみょんちゃんとかもそうみたいね。
スティーヴ・ヴァイ 『For the Love of God』
音楽理論に詳しそう、といえばこの人。バークリー音楽大学で学び、キャリアのスタートが
あのフランク・ザッパの採譜係というロックミュージシャンらしからぬ経歴の持ち主です
でも、エディは幼少時にピアノのレッスンを受けていたんだよね。しかもお父さんはプロのクラリネット奏者で、兄のアレックスはヴァイオリンを弾いていたんじゃなかったかな。そんな音楽一家で育って、楽譜が読めないとは考えにくい。エディのその発言はおそらくポーズでしょう。苦手だったかもしれないけど、まったく読めないなんてことはなかったはず。そして音楽理論もしかり。まったく知らないであんなに凄いギターを弾いたり、世界中で大ヒットする曲を書いたりしたらそれは天才だ……って、エディは紛れもなく天才だった。しかし、音楽理論だってちゃんと理解していたと思うよ。エディの真面目なインタビューってあんまり読んだことがないし、あの人のそういう発言は話半分くらいで聞いておくのがいいと思う。桑田さんやあいみょんちゃんはわかんないけど。
オジー・オズボーン 『Mr. Crowley』
オジーのバンドのギタリストだったランディ・ローズは、
デビュー前、母親が経営していた音楽学校でギターを教えていました。
実は、セカンドアルバムのツアーが終わった後はオジーのバンドを脱退して、音楽大学に入り、
修士号を取るつもりだったといいます。ランディのプレイはとても音楽的だよね
少し自分の経験も話しておくと、楽器の経験が音楽の授業でやった縦笛くらいだった俺は、楽譜は苦手だったし、音楽理論も知らないままバンドをやっていたんだけど、それでもしばらく真剣にやっていれば自作の曲が音楽的に正しくないことに気が付いてくるんだよね。それが、音楽理論の初歩の初歩をかじっただけで、劇的に改善されたという。それまでが酷かったから余計にね。そうすると、もっといい曲を書くには自分がやっていることをちゃんと理解していないとダメだと思ったし、自由自在にギターが弾けるようになりたかったから、音楽理論の勉強を始めました。プロになるには絶対に必要だと思ったからね。ちなみに、プロの現場で音楽理論がいるかどうかなんてことを話したことはないけど、それはみんなが理解している前提だからじゃないかなあ。とはいえ俺はまだまだ知らないこともたくさんあるから、バックバンドのリハーサルなんかで、「こんな転調の仕方があるのか!」とか、「ここでこのコードありなの? しかしこの雰囲気が出るのはこのコードのせいか!」なんて、平気な顔をしながらもこっそり驚いていたということは何度もあります。そしてその都度、その方法を覚えていって、次の現場や自作曲に活用するという。楽譜は今でもスラスラとは読めないけど、ギターレッスンをやるようになって、人に教えるのには便利だと思ってね。なんとか頑張っています。
イングヴェイ・マルムスティーン 『Far Beyond The Sun』
イングヴェイと新日本フィルハーモニー交響楽団との共演動画。
少年時代にはパガニーニの楽譜を見てヴァイオリンのフレーズを練習したというイングヴェイ。
彼のキャラクターから意外に思う人もいるかもしれないけど、音楽理論がわかっていないとこんな曲は書けないよね
もしも、音楽理論って知らないとダメなのかなあ、と思っているミュージシャン志望の人がいれば、自分がどうなりたいかと、あらためて考えてみてください。俺がやりたいのはパンクだし、なんて思っていても、音楽理論を知れば、きっと頭の中に浮かんだ名曲のカケラをより完璧な形で表現することが出来るようになるよ。その道で一流になりたいと思うなら、音楽理論を身に付けて損はないです。......音楽理論を知らなくて損をすることはあっても、得をすることは絶対にない。それは断言します。エフェクターだって、マニュアルを読んだほうがちゃんと使いこなせるようになるでしょ。音楽もそう。本気で音楽が好きなら、苦手なことも頑張ろうぜ。
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber
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