サクラ咲くサク桜丘
多国籍酒場――洋の東西、出会いまくりな新店へ
【今回の桜な人々】
多国籍酒場
手島 恒太さん
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町24-8
新南平台マンション101号(マップ)
ホームページ
http://www.glittertable.com/
何かを言うまでもなく、“別れ”というのは常に寂しい。ああよかったセイセイすらあ、そんなことを言っての別れだとしても、それはそんな関係になってしまったことに対する寂しさが存在する。楽しい別れなど、あるものだろうか。家のローンとやっとお別れとか……それはそれで貸し手側が寂しい思いをしているかもしれない(笑)。
寂しい裏話をひとつ。
当コーナーに登場いただくため、いろいろなみなさんにお願いに上がった際、「もうしばらくで閉めようと思っていまして……」という反応をいただくことがたまにある。極端な話、初めて訪れたお店であってもその瞬間は申し訳ない気持ちと寂しさが込み上げてくる。なんの足しにもならなくても「頑張ってください」とお伝えするばかりである。そしてこの別れが、新しい出会いに繋がりますように、と。
そう、別れがあったからこそ、新しい出会いもある。
今回登場いただくのは桜通りを上がりきり、インフォスタワーと文化総合センター大和田がともに斜向かいというポジションにある『多国籍酒場』。今年初旬には別の飲食店が営業をしていたが、震災後に長年に渡る営業を終了。筆者はその直前に登場をお願いしてしまい、別れの寂しさを感じたその場所に、新しい出会いがやってきた。
「いらっしゃいませ。今年5月18日にオープンしました『多国籍酒場』です。よろしくお願いいたします」、そう迎えてくれたのは店長の手島恒太さん。カウンターの向こうには料理を担当する西田俊信さんの姿が。
もともとはホテルのバーテンダーとして活躍していた手島さんが、自分のお店を開こうと桜丘にやってきたのは数カ月前のこと。
「やはりバーテンダーですからショットバーをと思ったのですが、お店の場所や予想されたお客さんの層などを考えると、なかなか難しいのかな……と感じたのですね。そこで飲食店を……となったとき、西田さんが思い浮かんだのですね。僕らはお互い埼玉県越谷市の出身で、僕がアルバイトをしていたお店に西田さんが来てくれたりしていたのですよ。で、彼は越谷でも有名なエスニック料理店で料理を作っていたので、ショットバーとエスニック料理という妙な組み合わせをまず考えつきました」
メニューを眺めてみると、タイカレーやトムヤムクン、生春巻きなどまさにエスニックなタイ料理が並んでいるのだが、壁に掛かる黒板には今週のオススメとして「ヨーロピアンカレー」と書かれていたりする。さらにメニューに目を戻すと、そこには「蟹あんかけの海老炒飯(中華?)」、「しらすとみょうがの香り胡麻(和食?)」……鶏肉を使った料理だけで「油淋鶏(中華?)」、「タンドリーチキン(インド?)」、「ジャマイカンジャークチキン&ポテト(ジャマイカ?)」と、地球を一周する勢いなのに気が付く。
「それはもう、『多国籍酒場』ですから(笑)。ショットバーとエスニック料理というミスマッチを思いついたのだから、お食事はなんでも出してしまおうとしたのですね。いやいや、メチャクチャなのはわかっているのですが(笑)、いい意味でメチャクチャ、雑多にやっていこうと思っています」
ワールドワイドなお料理とともに、お酒はバーテンダー・手島さんが腕を振るうのだからもちろん間違いなし。いろいろなものをいっぱい食べたい、という居酒屋的な良さから、お酒を楽しんで帰るショットバー的な良さ。バーテンダーとエスニック料理、ここにもあった“出会い”の素晴らしさよ。
「宴会をやっている横で、カレーだけ食べて帰る人がいたり、それこそコーヒー飲んで帰る人もいる。そんなお店にぜひいらしてくみてださい」
桜丘で動き始めた『多国籍酒場』。
この新しい出会いに、感謝。
Q・あなたにとって桜丘とは?
「通っていたのは線路沿いにある桜丘のバーテンダースクールでした。縁のある街、ですね」
桜通りのてっぺん、いわゆる“半地下”に入口が。今の時期、表のテーブルでコーヒーなんてのもいいですね
カウンターと壁に沿うテーブル席で楽しいひとときを。バースペースも厨房も間近に見えるカウンター席はひとり飲みでもテンション上がりそうです
はい、こちらゴイクン......ベトナムの言葉で「生春巻き」ですね。ライスペーパーでレタスや具材を巻いたおなじみのお料理。今回は海老が入っておりますが、「たとえばマグロであったりとか、その日によっての『本日の生春巻き』(500円〜)でお出ししていますよ。もうなんでも巻いちゃいます」(西田さん)
アジアからドーンとヨーロッパに飛んで、カスレ(900円)のお出ましです。こちらは南フランス・ラングドック地方の名物料理です。豚バラとベーコン、ソーセージをトマトで煮込んだ一品ですが、「肉類はたとえば鴨であるとか、ジビエ(鳥や獣など、狩猟によって捕らえられた肉類)を使うことも現地ではあります」(西田さん)
串に打ってありますのが、ピンチョスプレートの9本セット(1200円)。スペインより登場です。「当店では定番のお料理になりますね。ピンチョスの単品も多数揃えておりますので、いろいろとお試しくださいませ」(手島さん)
お酒はやはりバーテンダーさんに振っていただきましょう! 「定番のカクテルももちろんメニューにありますが、どんな雰囲気かお伝えいただければ......」と、ジンベースのオリジナルカクテルの出来上がり。「名前? そうですねえ、それはみなさんいらしていただいて、それぞれで付けてください(笑)
スミノフというウォッカになにか漬かっておりますね。「ショウガですね(左)。ジンジャーエールで割るモスコミュールはこれで作ります」(手島さん)。ん、それって以前も聞いたような気が......「『Bar Barista.』ですよね。高瀬さん、尊敬していますよ(笑)」
Tweet エンタメ : サクラ咲くサク桜丘 記:asobist 編集部 2011 / 10 / 13