サクラ咲くサク桜丘

たごころ亭――名店から名店が生まれようと、している

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【今回の桜な人々】
たごころ亭
阿部 奈津子さん


〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町12-5 桜丘Kビル1階
マップ

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「近々移転を考えているのですが、場所は同じ桜丘になります。桜丘を離れるという選択肢はまったくありえませんね」
場所は当コーナーに登場いただいたあるお店、そこでの取材中のヒトコマ。いざお話しをうかがい始めたところでの「移転を……」という言葉に、「桜丘じゃなくなっちゃう!?」と焦ったものだが、続いた言葉にホッとし、また嬉しかったのも覚えている。
こちらは“桜丘に選ばれしそば屋”としてご登場の『多心』。最近では渋谷を紹介したグルメ本の表紙にも名前を見つけることができる、このそばの名店。もちろん『多心』に限らずだが、ご登場いただいたみなさんが別の媒体でスポットを浴びているとなんとも嬉しい気持ちとなる(みなさんも探してみてくださいませ)。

その『多心』が今年3月20日に桜丘町内で移転を決行。同時におそばを楽しめる人数が倍以上になったにも関わらず、相変わらずお客さんで溢れかえっていると聞きつけ、移転と繁盛の祝言にうかがったところ、名物ご主人の山田心さんからこんなひとこと。
「わざわざありがとうございます(ニッコリ)。ところで移転前の場所には行ってみましたか? おもしろいものを見つけてもらえると思いますよ(笑)」
その言葉を受け、徒歩3分(信号待ち1分30秒を含む)で“旧・多心”に向かってみると……かつての入り口には新しく『たごころ亭』の文字が。おもむろに扉を開けてみると、替わらぬカウンターにお酒や酒肴が並んでいる。

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いらっしゃいませ! と迎えてくれたのは、この『たごころ亭』を取り仕切る阿部奈津子さん。
「3月10日で『多心』の営業が終わり、それからいろいろと内装など……カウンターのペンダントライトなどを替えたりしながら、3月20日の『多心』移転と同時にオープンしました。居酒屋……というより私としては“食堂”ですかね、そんなイメージのお料理とともにお待ちしています」

『多心』の移転で空くことになるこの場所をどう利用しようか……山田さんがそう考えていたときに、「もともと飲食系の販売をやっていたり、ここの前は鉢山町にあるお店でシェフの手伝いをしていたりして、いつかは自分で飲食店をやってみたかったんです。そんなときに『多心』移転の話があり、(山田さんと)知り合いでもあったので、ぜひとも私に……とお願いしたのですね」ということで結成された“タゴコロ組”。
「移転を知らずに間違えてやってくるお客さんもまだいらっしゃいますけれど(笑)、『多心』と使い分けていただければと思いますね。私は岩手の出身なのですが、『たごころ亭』ではその岩手で食べていた家庭の味、家庭の料理を中心に出しています。ですから肩肘張らずに……たとえばお客さんでも飲みながら本を読んでいたり、パソコン出して仕事の続きをしていたり、私と話していたりと、リラックスして使っていただいているお客さんが多くなってきました。私は住んでいるのも隣の鉢山町なので、近所の人と顔を合わせると『お店やってるんだよね? 今度お昼に行くねー』なんて声をかけてもらえるのも嬉しいですね」
そう、本家では山田さん曰く「夜中2時までやってますから諦めました(笑)」とやっていないランチが『たごころ亭』では食べることができる。
「その分、夜は早い(23時LO)ですけれどね(笑)。おっしゃるとおり『多心』はランチをやっていませんし、桜丘でのランチだと世界各国の料理を食べられますから、逆に和食の定食は目立つ……と思ってやっています。でも、昼でも夜でもそうですが『これはウケるだろうな、出るだろうな』と確信していた料理があまり出ないという発見があったりします。『なんで肉ジャガが出ないんだ』とか(笑)。焼き魚とかはウケがいいんですけどね。肉ジャガなんて出そうでしょ、そう思いません? あとこれも出そうでしょ、鶏の唐揚げ。なのにあまり出ないんですよね(笑)。『桜丘は肉より魚か……』なんて、毎日が発見だらけですよ」

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話を聞いているうちほのぼのとした“空気”に包まれてきた。名店が生まれた場所で、その名を引き継いだ姉妹店。飲食店の切り盛りを願っていた女将さんと一緒に刻まれ始めたその歴史が明るい物になることは、この“空気”がきっと約束してくれている。リラックスしたお客さんが多いのも頷ける。
家庭料理と、そして阿部さんが醸し出す優しさ――優しい。優しいよ、このお店は。
希望も期待も溢れる、さらに優しさの溢れる店がそして人が、これから刻んでいく歴史――そこには「肉ジャガを食べなくてはこの店は語れない」などとも記されているかもしれない――に想いを馳せながら杯を挙げよう。
名店から、名店が生まれようとしている。「たごころ亭」に、乾杯――。


Q・あなたにとって桜丘とは?

「なにせ地元ですからね(笑)。そんな地元で、これからはお店と一緒に歩んでいきたいと思います」


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メインテーブルはもちろんカウンターです。照明がペンダントライトになりました

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仲間内とでしたら引き続き個室もありますよ

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さあ、いただきましょう。こちらは定番のマカロニ入りポテトサラダ(580円)。「まさに実家から持ってきたメニューです」嬉しい家庭の味ですね


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「ごはんセットがまずありまして、そこに一品......今日はアジの開きでいかがでしょう」これまた嬉しい。キュッとグラスを傾けて、これで締めたら最高ですね


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岩手県出身の阿部さん。南部美人から南部美人をいただきましょうよ(850円)。「お酒ですか? 以前に比べればだいぶ量は減りましたけど......(笑)」お、阿部さんいけるクチ。いやいや嬉しい。嬉しい三連発







  エンタメ サクラ咲くサク桜丘   記:  2012 / 05 / 14

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