サクラ咲くサク桜丘

アジア女性資料センター――身近にあるジェンダー問題

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【今回の桜な人々】
アジア女性資料センター
本山 央子さん


〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町14-10 渋谷コープ211 (マップ

ホームページ
http://www.ajwrc.org/jp/



昨年3月11日、東日本大震災が起こった日の真夜中のこと。
筆者を含め、この「あそびすと」の関係者数人もいわゆる“帰宅難民”となり、桜丘の事業所で夜を過ごすことになった。そのとき夜っぴいて聴いていたラジオでは、災害の状況や道路状況、鉄道の復旧などのほか、公の施設や、民間でも事業所や所有施設を開放して帰宅難民を受け入れている旨の情報も流されていた。著名な寺院や大学施設、有名芸能プロダクションの稽古場などが上げられていたが、そのときこんな住所の案内があった。
 

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「……お手洗いなどが開放されております。住所は渋谷区桜丘町14-10渋谷コープ……」

渋谷コープとは「あそびすと」の事業所があるビルだ。ああ、この建物の中には立派な貢献をされている方がいるものだなあ、私たちにもなにかできないだろうか……そう考えているうちに闇に閉ざされた11日は明け、不安を抱えながら朝日とともに私たちは帰宅をしてしまったのだが。

大震災から1年以上が過ぎた先日、そのときの記憶を基に渋谷コープ内を歩いてみた。おそらくここであろうと211号室のドアをノックする。
「昨年の大震災のとき……はい、たしかに私たちのこの部屋を開放させていただきました。このような災害時こそ、率先して動かないといけないのが私たちですので」
そう教えてくれたのは、NGO(非政府組織)団体である『アジア女性資料センター』の事務局長である本山央子さん。まずは本山さんから『アジア女性資料センター』についてうかがおう。
 

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「HPのトップにも記載があるのですが、私たちは、『暴力のない公正で持続可能な社会を目指し、国境を越えて行動する女性たちを支えるフェミニスト団体』です。もともとは30年ほど前になりますが、当時の日本人男性の海外観光というと、いわゆる“買春観光”目的のものが多数を占め、それに反対するアジア人女性とともに行動した日本人女性のグループが77年に設立した“アジアの女たちの会”が前身になっています。そこでの設立メンバーでもあった朝日新聞記者の松井やよりさんが94年に定年退職をされる折りに、国際連合と協議する資格を持つNGO団体『アジア女性資料センター』に組織改編しました。買春や人身売買などの問題のみならず、身近なところでは職場環境なども含め、幅広くジェンダー(社会的な面から着目した性別)の問題に取り組んでいます」
約20年前の組織改編時にこの場所で活動している『アジア女性資料センター』、その本棚の資料区分には女性差別問題を想起させる様々なタグが付けられている。男性としては心苦しいものも数多い。
「そうですね……しかし、このセンターに訪れたり、会員として支えていただいている方には男性も数多くおられますよ。会員数ですか? 現在は全国で600人といったところです。私どもには政府や各種団体からお金が出ているわけではないので、みなさんの会費によって会報の『女たちの21世紀』を作成したりしています。そんなわけで専任のスタッフも私と二人くらいのものでして、カフェでジェンダー問題を語る『ジェンダーカフェ』などのイベントはボランティアさんやみなさんの力があってこそ、ですね。男性の方もお気軽に訪ねていただいたり、参加されてみてください」

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さて、冒頭の東日本大震災のときのお話しである。「率先して動かないと」という意味を本山さんはこう語る。
「災害時、人間というのは本音の部分がいちばん出てくるんです。ふたつの側面がありますが、たとえば“誰しもが生きることに執念を見せる”場合。これは男女かまわずでもありますが、女性のほうが不利な状況となるのは否定できません。そして“避難場所を運営する場合に、男性だけが切り盛りすると女性になにが必要かわからない”場合。お手洗いを例にするとわかりやすいかもしれませんが、とても遠くて暗いところにしかトイレがないとして、男性はともかく女性はいろいろと対処が難しいのが現実です。
こういった問題が噴出するのが災害時で、95年の阪神淡路大震災の時も関西在住の会員さんなどには動いてもらい、そこでの経験などを踏まえた提言を国や自治体に働きかけたり、そして今回のような災害にも活かしていく……桜丘への道程が案外複雑なためか、最終的にたどり着けない方もいたということは、次に万が一のことがあったときに活かさなければなりませんよね。3月11日は最終的に4人の方が避難されてきました」

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ジェンダートラブルに関する様々な資料が並ぶ
ジェンダーの問題というと『アジア女性資料センター』の設立理由のような悲劇的な連想ばかりを思い浮かべてしまうが、本山さんが教えてくれたように災害時にも様々な側面から噴出してくる――“食”から“趣味”までいろいろな顔を持つ桜丘の町にも、このような活動を長く続けている人々がいる。
「長い付き合いになりましたが、私たちのような市民的な活動が、街同様に静かに受け入れられていく、そんな桜丘であってほしいですね」
最後に本山さんはそう締めくくった。どうもお邪魔いたしました。


Q・あなたにとって桜丘とは?

「ずっと東京には住んでいるのですが、何回か引っ越しをしているためいちばん長く縁があるのは桜丘になりました。この"裏渋谷"がもう地元みたいなものですね」

 

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アジア女性資料センターのこれぞまさに「旗印」
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製作されている機関紙女たちの21世紀』。
会員さんへ配布されているが、HPから購入も可能

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漫画家の高野文子さんがデザインしたオリジナルトートバック。
こちらもHPや直接訪問で。1000円で販売中です





  エンタメ サクラ咲くサク桜丘   記:  2012 / 05 / 21

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