サクラ咲くサク桜丘
若鮨――新風が吹き込んだ桜丘の歴史ある名店
【今回の桜な人々】
若鮨
浅香 秀雄さん
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町16-10
(マップ)
桜丘が誇る桜通り。その麓には楽器店の『KEY』とライブハウスの『RUIDO K2』が入っているビルがあり、その隣が駐車場。そしてそのまた隣りに今回登場いただく飲食店がある。
この“桜通りを上がってすぐ、駐車場の隣り”というシチュエーションは当コーナーが始まってから普遍のものだった。ただその老舗な佇まいになかなか直撃できないでいた昨年の初旬、休業する旨の貼り紙を目撃する。あ……縁をなくしてしまったのかな……と落胆していた初夏、老舗な佇まいは屋号こそそのままながら外見は赤壁へとガラリ一変して、再び営業を開始する。
これは今度こそ直撃してみよう、そう思って引き戸を開けたのが桜通りの『若鮨』なのであった。
ごめんください。
「いらっしゃいませ」と迎えてくれたのは、いなせな雰囲気を漂わせる店主の浅香秀雄さん。たしか以前は年配の大将が切り盛りされているとうかがった覚えがあるが……。
「このお店を取り仕切っていた先代が休業されることになり、縁あって私がその後ここでお寿司を握るようになりました。以前はとある下町のほうで18年ほど自分のお店をやっておりましたが、昨年の6月29日からはここ桜丘で握っております。
桜丘にはそれまで来たことがなかったのですが、最初に来てみたときがちょうど桜の季節でしてね。いやあ、あれはいい雰囲気でした。桜通りのいちばん上から桜を眺めて、『ああ、ここで頑張ろう』と思ったのをよく覚えていますよ」
カウンターに囲まれたツケ場(厨房)でにこやかに話す浅香さん。「いろいろ変わっていまして。よかったら二階もご覧になってください」と促されて上がってみると、テーブル2席の他にカラオケセットも。たしかに外観の赤といいカラオケといい、以前のお店から感じなかった空気があります。
「はい。二階はカウンターが一杯だったりした場合に使ってもらったり、宴会などで使われますね。カラオケはひとりのお客さんでも歌っていただけます。……営業も深夜までにしましたので、周辺の飲食店が終わった後というお客さんにもいらしていただいていますよ」
大将やお店の雰囲気が変わって営業も夜中まで……なんとはなしに発した「先代から足を運んでいたお客さんは驚かれたんじゃないですかね」なんて言葉に、浅香さんは胸を張ってこう答える。
「いや、それは『食べてさえいただければわかる』と確信してやっています。自慢のインドマグロを使ったお寿司やお刺身、焼き物に、市場直送の様々な魚介類、おいしいお酒を手頃なお値段で取り押さえています。赤酢と合わせたシャリと自慢のネタのお寿司を召し上がっていただければ、新しいお客さんにも以前から来ていただいていたお客さんにも必ず伝わると思っています。なので、夜中までやっているのでお酒中心のお客さんもいらっしゃいますが、『お酒だけでしたら居酒屋でも……』とご案内してしまうこともあります(笑)。とにかくお寿司を食べていってもらいたいんですよ」
5000円でお任せの握りをということでお茶で食べて帰られるお客さんもいますよ、そう笑う浅香さんから溢れ出ているのはこの店、そして寿司に対する情熱そのもの。外壁が赤くなったのは浅香さんの情熱の赤なのではないか、そんなことを思った。
さあさあ、よかったら召し上がっていってください――
煮切り醤油が塗られて輝くにぎり寿司。ごはんと合わせていたときは“すごい強いお酢っぽい”と感じた赤酢のシャリのまろやかさ、そしてインドマグロの香りといったら、もう。
ごちそうさまでした――
寿司に情熱を燃やす店が桜丘にある。
『若鮨』
名店を、見つけた。
Q・あなたの桜丘の魅力は?
やはり桜でしょう。初めて見たときは感動いたしましたよ。お店の前が桜並木、またもうすぐ桜の季節がやってきますね。桜を眺めながら、ぜひ足をお運びください
調理場が見渡せるカウンター。楽しいやり取りでおいしいお寿司にお酒がいただけます
ネタにお酒に品書きに……出てくるのが楽しみですね。あ、鰆の西京焼き、食べたーい!
トントントンと階段を上がればそこは2階のテーブル席へ。カップルで仲良くもよし、みんなで宴会もよし、そして歌うもよし
さあ若鮨と浅香さんご自慢のインドマグロ、こんな冊で見ちゃうともう夢のようですね。「奥にあるのがもう大トロに近い中トロです。これは……おいしいですよ!」
焼き物、いただいちゃいましょう。こちらはマグロのホホ肉とアゴ肉(いずれも1000円)。ひと噛みすると軽い歯応えのあとに旨味がジュワーっと出てきます。おおおおお、うまい!
「マグロの中でもよく動く部位ですから、おいしいですよ。貴重なところですが、ナントカみなさんに食べていただけるように毎日揃えております!」
お寿司屋さんでまずはお刺身、なんか嬉しい瞬間です。「その日のオススメも店内に書いてありますので、そこから選んでもらっても、ご予算を言っていただいても……」。写真のツブガイ、コリコリの歯応えと滋味あふれる“貝味”がたまりませんよ
さあお待ちかね、握っていただきましょう。若鮨おすすめ握り盛り(3000円)でございます。10カンに1巻き、そして赤だしまで付いております。赤酢のシャリがまろやかにネタと合わさります。うまいぃぃぃぃぃぃぃ!
「インドマグロにアジ、赤貝、ウニ……これぞ若鮨!という自慢のネタばかりですよ。ぜひ召し上がってみてください」
お寿司屋さんです。酒はやっぱり日本酒ですよ。オススメをうかがったところ、来ました「貴」と「日高見」(いずれも1合780円、2合なら1500円!)。どちらもネタを引き立てるキリッとした飲み口。ああ、お寿司に酒にいい気持ちになってきちゃった
Tweet エンタメ : サクラ咲くサク桜丘 記:asobist 編集部 2013 / 03 / 04