アラカン編集長モンブランを行く!

シャバの灯

2009 / 05 / 31

09053101.JPG通りの向こう側がシャバ。ひとつ通りを隔ててこちら側が病院の敷地。結界ともいうべき一線は恐らくこちら側の住人になったればこそ見えるもので、あちら側からは単なる病院という機能を有した建造物として認識されるに過ぎないのだ。

5月18日からこの結界の住人になっていることはご承知の通り。読者の皆様には多大なご心配をいただき、誠に面目もない。

青息吐息で痛みに耐えるが精一杯の3、4日を過ぎると、嫌でも我からの「気持ち」と面と向かうことになる。「なんという愚行!」と柄にもなく反省してみたり、「覆水盆に返らず」など嘆いてみたり、3分に1回ため息をつく。

トイレで用をたす際、パンツの上げ下ろしから難儀し、手洗いは必ず片手を台につき、片手ずつ洗わなければ済まなかったのが、だんだんにふつうにできるようになると「青菜に塩」はどこへやら、今度は「退屈で死にそー」など友人にメールして「退屈ぐらい我慢しろーッ」と返される。生来の日々楽観「ま、いっかー」性分は褒めるべきとも、禍の種ともいうべきか、当人ですらあきれる。

入院したその日、開口一番息子に「そろそろ大人しくしてろってことなんじゃない?」など言われれば、思わずむっとする。
「いいえー、モンブランは企画そのものは続行よ。ただ実施だけ年送りになっただけ」
「ま、そのぐらい元気なら安心だよ」
まではまだしも
「岩だって止めない。そのうちヨセミテだよ」
など大法螺吹いて息巻くに及び、ドン引きさせてしまう。

そりゃあねー、そうでもしないと、やっとれんのよ。 モンブラン登頂まで2ヶ月を切り、トレーニングも胸突き八丁というこの時期に、なんでまた骨折なのさ。それも、よりによって第2腰椎、大事な脊椎骨だよ。いくら空元気は得意技といったって「回復から再トレーニング」の道のりの困難に思いを巡らせば「来年、ほんとに登れるんだろか?」と不安にもなる。 

どんより沈む胸を抱えて4階の面談室からシャバの灯りを見下ろす。バスが来て止まる。車が通る。自転車が走り抜ける。レストランにも人影。
ああ、トゥーリーズのカフェオレ、飲みて。

病棟は夜9時が消灯。面談室にもいられなくなる。
9時なんてね~まだまだこれからって時間帯だよ。山時間じゃあるまいに。

人目を忍んで下へ降りる。
結界の最も外側、すなわち病院の玄関先に出てタバコする。
シャバの空気とさほどに違いない夜のしじまに煙を吐く。

なんてね…

「これを機にタバコやめれば」
息子に拒否されたもんだから、ヨメに泣きついて持ってきてもらったは序の口で
「なんも要らないからタバコ、お願い」
見舞いに訪ねてくれようという友人知人にも場違いなリクエストをする始末。
救い難いやね~

特に切なくなくても、1日に幾度となくタバコ吸いたさに病室を脱走する。

「いつもどこ行ってるんですかッ?!」
看護師さんのご機嫌を損ねる。

「あ、この人、よくいない人ね」
回診のドクターがサブ?のドクターに訊ねる。

朝晩?のナースステーションのカンファレンスで「チョー不良患者」の行状が話題に上がっているとは想像に難くない。

いやあ、まったく久しぶりに投稿したと思ったらこんなことで…






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連載 アラカン編集長モンブランを行く!   記:

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