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アラカン編集長モンブランを行く!
回復の途-2:ものの「怪」が落ちた
2009 / 07 / 23
7月15日
VIVA ASOBISTの取材に出かけた。インタビュワーはスタッフが担当したが、仲介の紹介者がOFFICE ALPINEの大森氏だったということもあって、同行した。
取材対象者は冒険スキーヤーとして名を馳せる和田好正氏。
世界初のマッターホルン山頂からの滑降を始めセブンサミットに数えられるマッキンリーやビンソンマシフからの滑降などの偉業を成し遂げ、登頂するのも困難な世界の山々からスキーで滑る降りるという超人的スキーヤーだ。
同行するからには和田氏について相応の予習をせねばならない。
オフィシャルサイト掲載の情報の他に著書があれば一読したかった。取材日程が急に決まったこともあり、日東書院「和田好正 地球を滑る」を探し出したのはいいが、書籍自体は絶版となっていて、とある筋から実際に手元に届いたのは取材直前だった。
当日、約束の時間より2時間ほど早く到着すべく家を出た。斜め読みでもいいから目を通しておきたかった。電車の中で広げ「前書き」を読み始めるが早いかもう胸がいっぱいになった。
和田氏の初期の冒険スキーと氏がそうなるに至った経緯や生い立ちが綴られた文章の一字一句が胸に染みた。こともあろうに、僭越なことか和田氏の歩んできたプロセスと自らの想いとを重ね合わせて感じ入ってしまったのだ。
取材開始前には、名刺交換するかどうかのうちに図々しくも握手を求めた。そうしなければいられなかったのだ。「ご本読ませていただき、涙が止まりませんでした」
和田氏にしてみれば「なんのことやら」だったろうが、しっかり握り返してくれた手は逞しく分厚く、心に染みて温かかった。
和田氏は胸椎骨折の憂き目にあっている。ハングライダーで失速して、30m上空から転落。3ヶ月の入院生活のうち、最初の1ヶ月は胸から上を完全に固定されて、病床でただ仰臥していたという。
数々の冒険がまだ始まってもいない時期だった。むしろその怪我を克服してから後に冒険スキーヤーとして台頭していく和田氏の生き様は驚異であり衝撃であった。
身動きもならず病院の天井を見つめて暮らした日々、さぞかし回復に対して不安を抱いたのではないかと訊ねたが、あにはからんや
「一切なかった」
と即答が返ってきた。手前のこととダブらせて邪推したことが馬鹿馬鹿しくなった。
病棟内を動き回れるようになると、それこそ「走り回ったりして」ドクターを怒らせてしまったあたり、つい嬉しくなってしまった。
同じようなバカがいたっけね~と。
「最後に」とインタビュワが問うた。
「うちの編集長もこの7月にモンブランを目指していたのですが…何かひとこといただければ」
「諦めないことですね」
瞬間、ものの怪が落ちた。
紹介者の大森氏が和田氏の経緯を知って、激励の意図を以って取材日程をこの時期に急いだのかと思いきや、どうもそんなふうでもない。
さすれば、なおのこと、これほどの符合はないではないか。
はなから風は吹いていた。ただ感応する力がなえていただけに過ぎないことを改めて知った。和田氏との邂逅に心から感謝した。
取材後外で一緒に撮らせてもらった。後で見たら、和田氏がピースしている!
なんだか嬉しくなった。
あ、やっぱり、もしかしたら大森氏お得意のおとぼけだったかな~?
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連載 : アラカン編集長モンブランを行く! 記:小玉 徹子