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アラカン編集長モンブランを行く!
近々近状緊急報告-4:妙義・星穴岳その1
2009 / 11 / 29
11月8日
見るからに怪獣の背中。
どうやら左端のギザギザを行くことになるらしい。
「高岩のアプローチでフーフー言ってるんじゃあ、明日はもっと大変だよ」
とは聞いたが、なあに早めに寝たから元気復活だあよ、と思ったんだが。
あにはからんや、やっぱりアプローチが辛い。急登だからというだけでないような。足が重いし、すぐに息が上がる。おかしいな~?!
「あれが星穴っていうんだよ」
去年いつだったか、どこかの山行の帰り車中から星穴岳を見た。岩山のどてっぱらにつっ通しの穴がぽっかり開いているのが車中からもはっきりわかる。
なんて魅惑!岩山に開いた洞を星穴と呼ぶなんて!!
しかもその洞に降り立つには懸垂下降を以ってしないと叶わない。なんとしてもその空間に降り立ってみたいものだと熱望したのだが、間もなく計画された山行にはよんどころない用事で行けなかった。
1時間半ほどのアプローチで汗だくになった。先に到着したメンバーは涼しい顔。
「それ、何?」
装備をつけてたらメンバーが指差して訊ねた。ハーネスの上に乗っかったプユプユのことだ。
「あ、これ?オッパイなのッ!」
すっかりイジラレ慣れたものだ。我ながらグーな返答ぶり!!!
言っとくけどオッパイは3対ぐらいあるんだからッ!
大きな岩を回り込んだら視界が開けた。枯れ草色の山斜面ににょきにょき生えたかのような奇岩。創造神は案外オチャメだとみえる。ステキないたずら心。
いくつか肝を冷やしながらリッジを渡り、最初の懸垂下降。
「バランスとりながら左、左へ降りて。振られると戻れないよ」
低木、ブッシュに覆われた斜面を左斜め下に向けて降りなければならないが、ロープに下がる身体を左へ運ぶのはいわば重力に抵抗することになる。
ブッシュにつかまりながら右へ振られるのを回避して、少しずつ降りなければ。
「あああぁぁぁーッ!!!」
ドカーン!!!
段差の大きいところで、ブッシュをつかむつもりが、手が届かなかった。大きく右に振られてブッシュに突入。振り戻されて斜面にやっと逆らって生えている低木の幹の上に乗っかる格好でようやく止まった。
大森さんが下からロープを振ってくれて、ようやくルートに戻れた。
ブッシュに突入した時に左手の甲がすりむけた。おそらくあっちこっちアザだらけ?
*用語説明
【リッジ】ridge(英)
稜(りょう)。本来は尾根や稜線のことだが、一般縦走路から外れた岩尾根、岩稜。
【懸垂下降】けんすいかこう/abseilen:アプザイレン(独)rappel:ラペル(仏)
ザイルを使って岩場や氷壁を降りること。ザイルを2つ折りにして岩角などに架け下に垂らす。エイト環など下降器具を使ってザイルと器具との摩擦によってゆっくり降る。
【エイト環】エイトカン/eight-ring(英)
8の字の形をした金属製(ジュラルミンなど)の器具。懸垂下降(ロープにぶら下がって降ること)やクライマーのビレイ(確保)などに用いる。
参考:http://www.sunfield.ne.jp/~tkubota/yougo/
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連載 : アラカン編集長モンブランを行く! 記:小玉 徹子