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アラカン編集長モンブランを行く!
ヒマラヤを詠めり-2
2010 / 11 / 29
鎮魂「友よ、生きててよかった」
11月2日
Thikyapsa Kharkaティキャプサカルカ、到着。
「フラット1時間、アップ1時間、トラバース30分」ほぼ聞いたとおりではあったが、なにしろ3840mから4400mの道行きだ。シンドイ。
朝起きしなの顔の膨れ具合もだんだん「よく膨れました」になるし、時間経過で消失ではあってもなかなかに時間がかかるようになる。それでもまあ、まずまずは元気。
4400mはスゴイ!
表現がみつからないよ。ともかくスゴイ!!
山はますます深く、高く、そして実に至近距離感に圧倒される。わーットと胸が広がって、じーんとまぶたが熱くなってくる。
氷河より
上り来たりし冷気をば
深呼吸せりヒマラヤの御前
目の前で雲ができていったりする。すーッと薄い幕絹が流れてきて止まる。また薄絹が流れくる。そして止まる。見る間に雲になる。
ようやく雲になると、今度は少しずつ移動し始め、山の腹の端から端へ移動し終えるころには切れ切れ。まさしく雲散霧消。
ヒマラヤは
白き首飾りしてすましおり
神々遊ぶなる蒼空を指して
眺めていると時の流れが愛おしくなる。深く深く刻まれた山の脈筋を眺めていると地球生成の不可思議を想い、確かに「神おわします」を実感する。
神々の刻みし地球を我見たり
眼前のヒマラヤに胸広がりて
白い白い
雪あくまでも滑らかに
神おわしますヒマラヤの頂
ひょいと踏み越えれば、滑らかについた白雪の上に降り立てるのではないか、などと想像をめぐらしていると突然、逝ってしまった人のことを思い浮かべた。まりりんやタマちゃん、義母だの父、叔母だの。神々の遊ぶなるかの雪の園であれば、逝ってしまった人らも集い憩うているのか。それなら是非とも加わりたい、など思うだにうら寂しいのは、なぜだろう。
それにしても、なんてテント設営場所なんでしょ!!あっちを見ても、こっちを見ても、ヒマラヤだらけ!!!
何も眺めて飽きない光景だからというだけで、外にばかりいたわけではない。何しろテントにもぐりこめば起きているだけで体力が消耗するのかして瞬殺で眠ってしまいそうだった。眠ると血中酸素濃度SPO2が下がり、高度順応を妨げるから「昼間は寝ない」は本郷さんの絶対指示なのだ。
外で景色を眺めているとだんだん寒くなってくる。薄手の上下のダウンを着て、上はもう1枚ぶ厚いダウンを着ていても身体が冷えてくる。
えっとですね。言うまでもないが、高度順化は大変ですぞ。
「1日に3リットル、水分を摂る」は並大抵でない。どうかすると「えふッ」と酸いのが上がってくるほど、お茶だのコーヒーだのジュースだの飲んでも3リットルにはなかなか達しない。
そうやってガブガブ飲んでいると「えふッ」ばかりではなく当然、排泄頻度も高くなる。そして、脳が「状態」を認識してからの「関係器官」の耐久時間は時として思ったより短かったりする。最初っから「もーイッパイです」シグナルが発せられたりもする。そうなると、どんな感慨もおセンチもそっちのけになる。
ヤバイよヤバイよ~
とうてい結構離れた山斜面に設営してあるトイレテントまで行ってられないぞ~
思わず辺りを見回せば、「しめたッ!」誰も外に出ていない!!
テントの後ろの石積みを乗り越せば、千尋の谷。山斜面がはるかに氷河に連なっている。
いやー!爽快である!!
千尋の谷見下ろして
ヒマラヤをはすに見上げて放尿す
夕暮れ時になって急に辺りがモヤいで真っ白になった。何も見えないのでは外にいても詮なく、晩ご飯までもう少しの時間、テントで横にでもなるか。と思った矢先、雲の層にわずかに隙間ができた。その隙間からうっすら茜色の空を背にした山峰が、厚い雲を押し下げるようにして聳えているのが見えた。雄雄しくも荘厳な山姿。ほんの一瞬だった。
もう一度見たい、それを撮りたいと願った。じっと待った。
雲は割れるどころか、ますます濃くなり辺りはどんどん暮れていくばかりだった。あきらめた。テントに潜り込もうとして、それでも未練で振り返ったら、そこに雲窓が開いていた。神々しいばかりの光景だった。
目にした瞬間「生きててよかった!」なぜかそう思えた。前日は「何時死んでもいいや」と思ったのに…
友よ生きててよかったよ
飽かず眺む暮れ行くヒマラヤ
独りとてなんのわが身が寂しかろ
高きほど凛と孤高ヒマラヤは
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連載 : アラカン編集長モンブランを行く! 記:小玉 徹子