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編集長!今日はどちらへ?
ヨーロッパクライミングツアー2016夏-5
ドライチンネ-I-
2016 / 09 / 26
8月7日
イタリアでの最greate climbingであるCima Piccola 2856 m,マルチピッチクライミング当日。
コルチナからやや東寄りに2時間ほど北上して行き、車窓からの風景の趣が変化してくると南チロル地方に分け入ったとわかる。
南チロル地方は、ハプスブルグ家に始まり、イタリア、フランス、ドイツなど、様々な巨大国家に編入されてきた過去があり、国境線では第一次世界大戦中酷寒のアルプス山中で塹壕戦が繰り広げられたのだとか。塹壕跡だの兵舎跡だの歴史遺産として残されてる。
(今だから、こんな説明もしているが、その時は緊張で気もそぞろで、心を入れて見やるゆとりがなかった。)
そうした諸事情がチマピッコラが通称ドライチンネ・チマピッコラと認識されている所以だ。Drei Zinne Tre Cime di LavaredoのCima Piccolaといったところ。
ドイツ語でdrei,・ドライは数の3、Zinne は大きな岩壁をもつ尖峰。すなわち3巨岩峰。そのうちの一つがチマピッコラなのだ。
岩連峰名はドイツ語なのに各々の岩峰はイタリア語というあたり、国境を接しているお国事情を体現している。
チマピッコラの南面は陽があたるので黄色に輝いていて見える。そのイエローウォールをダイレクトに登るラインもあるが、我々がこの度登るのは写真のちょうど右のスカイラインをたどる2・イエローエッジのルート。
お願いした現地ガイドの恐らくリーダー格のリコはNさんと組み、若手のローマンはKさんと、私は篠原ガイドと組むことになった。私の遅い歩きを考慮してのことだ。駐車場で車を降りたところからもう、緊張していた。チンクトレとはまた趣を異にしている岩峰の山並みにカメラを向けるゆとりなどさらさらなく、ただ必死に歩くんだが…
どっかんと聳えているのがチマピッコラ。近づくほどに圧倒されるスゲー!!!
これ、ほんとに登るんかよ〜
「Sorry I’m late」
「No probrem!」
取り付きについてまずは、そんなやりとりから。
カムはハングルーフに差してあり、回収は体をかがめてルーフ下に潜り込まなければならないが、歩を進めるのは一段下がっていかなければならない。案外怖いのよ!
ステミングは慎重に。落ちたら、いくらロープで確保していても、間違いなく怪我をする。
「下見てごらん」
わー、駐車場の小屋があんなに小さく見える!2pですでにこの高さ!!
主な3峰のどれだか?その支峰だか?周りの岩岩が美しい!フーフー言おうが何しようが、ここにいること自体がスゴイと感じる。
最終ピッチと聞けば、急に元気になってしまう。1ピッチずつ、難易度はさほどではないが、なにせ1ピッチが長い。それに間でほぼ「歩き」なピッチも出てくるわで、くたくた〜
やった〜!!!
見渡せばグレイト ランドスケイプ!周り中岩峰だらけ!!
大大大感激!
「こっちきて、見てご覧!」
篠原ガイドが手招きする。みれば分厚いノート。登頂者がその記録を記すことができるようにと山頂に置いてある。もちろん雨に当たっても大丈夫なように上蓋をかぶせるようになっている。
「この人、こだまさんの知り合いじゃない?」
覗き込んでみる。
思わず息をのみ声を失った。
Tomohiro Takano
高野さんだ!
2013年の7月に高野さんが1ルートか2ルートかは分からないがチマピッコラに登頂していたのだ。この3月に北岳で帰らぬ人となった高野さんと、こんなところで再会するなんて!
名前の横に「最高!」の言葉が添え書きされている。
このサミットクロスを背に親指を立てて、ちょっとはにかんだように笑う高野さんが目に浮かぶようで、思わず胸が熱くなった。目が湿っぽくなる。
*画像はほとんど篠原ガイドの撮影です。
山頂からの眺め・映像もどうぞ!
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連載 : 編集長!今日はどちらへ? 記:小玉徹子