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編集長!今日はどちらへ?
2017 Sumer in Europe‐4‐Arete des Cosmiquesコズミック山稜(I)
2017 / 08 / 28
2017年7月14日
レスト。
13日にゆっくりトリノ小屋を出て、エギュドミディ経由でシャモニーに戻った。早朝出て、継続でコズミックをやっつけてしまう、という案もあったが、とてもじゃないが体中、疲労感満載でそんな余力はなかった。
それどころか翌日もしんどくて、どうにもならない。どこか適当なマルチでもという案さえ行ける気がしない。かといって1日中、グダグダしているのはなんだからとガイヤンにクライミングに出かけた。
持っているクイックドローの塩梅が良くない。せっかくだから記念にシャモニーで入手しようと、スネルスポーツで新しいのを10本買った。おニュのークイックドローをガイヤンでリードデビューさせようと目論んだのだ。
ガイヤンは相変わらキッズ教室が盛況!小学低学年と覚しき男子女子が、この日はどうやらマルチを想定してのセカンドビレイの練習が課題らしく、ザックを背負って登っている。ピッチの支点構築もセカンドのビレイも大人顔負けのなかなかの安定ぶりだ。
が…
その大の大人の私はというと、なんだかメーターが上がらない。体がシャキッとしないせいか登っていて、トップロープでさえ「怖さ」を感じてしまって、とてもリードできる気がしない。そして暑い! そうそうに引き上げて、翌日のコズミックに備えることにした。
2017年7月15日
コズミック山稜
朝8:10のロープウエイに間に合うように出発。確か。
さて、またあの急な雪稜を降りると思うと、アイゼンを着けているときから緊張する。
急な雪稜を降り切る少し手前で右手に折れ、ミディを回り込むようにコズミック小屋の方角へなだらかな雪面をおりていく。途中ミディの壁にしばし見とれる。クライマーが数パーティー壁に張り付いている。
「ああ、去年はあれを登ったんだっけな」などしみじみ。
画像、左雪面に点々とクライマーが歩いている。その踏み跡の通り歩いていく。見えている岩稜を回り込むとコズミック小屋が見えてくる。それを左、少し上に見ながら右のやや急な斜面をポンプ?発電?小屋に向かって上がったところがコズミック山稜の取り付き点だ。見えている岩稜を画像中央のミディ展望台に向かって何度か岩塔を越えたり、回り込んで、最後は画像中央のテラスに上がれば終了となる。
さほど長くないルートで、しかも難易度もそこそことあって、この人気ルートは何パーティーも取りついている。前日までの積り重なった疲労との闘いで、ちゃんちゃん進めない。歩き要素が少ないのが、せめてもの救いだが、ちょっとムーブが解決してくれる様なピッチはまだしも、乗り越し高低差の大きい箇所では、やはり体力不足が露呈する。
それでも3パーティーぐらいは抜いたのだから、比較的ビギナーでも行ける本格アルパインルートとされるのもうなずける。
がしかし、何が大変て、スリーシーズン登山靴で岩を登るのはことのほかしんどい。それでも、この度は雪が少なく取り付点でアイゼンを外して、そのまま最後まで行けたが、残雪量によってはアイゼンでの登攀を余儀なくされる年もあるとか、想像しただけで疲れる。
よく考えれば、私には登山靴仕様の本チャンルートの経験がないのだった。何度も「クライミングシューズなら楽なのに」と嘆いた。
懸垂ポイントで2パーティーが渋滞していた。待っている間、ゆとりができて周りを見渡したら、目の前にダンデジュアンが!
「I love you Dent du Géant!」
思わず叫んでしまった。後ろのパーティーのクライマーが笑っていた。
前のパーティーはというと、とんでもなく過度に慎重(よく言えば)なセットの仕方をしていて、セットにも時間がかかり、バックアップが厳重?過ぎて下降がスムーズにいかないのだった。
ようやく渋滞がはけて、篠原ガイドが降りていき、「どーぞ!」の声がかかる。
ロープを引き上げて、靴底で踏んで、腰に手をやる。
ん?
なな、なぜ?
右腰のギアループを見て、左腰のループを見て、右見て左見て、また右見て…
あああぁぁぁぁ
ないッ!
ATCがないッ!!
なんでよッ!?
確かに取り付地点でギアチェックした時には右腰に下げていたはずだった。それが安全環付カラビナごと、影も形もないのだ。
ガーン!
どーしよー!!!
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連載 : 編集長!今日はどちらへ? 記:小玉徹子