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編集長!今日はどちらへ?
リューカン・ノルウェーアイス2018-4・day4
2018 / 03 / 20
2018年2月13日
マルチ2日目。晴れた!
晴れても谷筋の街には依然として日が射さないが、目に飛び込む光景が全く違う。クリアかつ美しい。「こんなロケーションだったのね」とびっくりする。
初日に行ったレストランの壁に写真が飾ってあった。
「これって、なんてお山?」
と聞いたのがガウスタトッペンだった。
「うーん、晴れてればそこらから見えるんだが」
レストランのおにいさんがほっぺを両手で挟んで言う。
え!そっち系?!
まさかッ!
*ガウスタトッペンGaustatoppen 360 degree photoGaustatoppen:ノルウェーの最高峰、1883m。サミットからノルウェー本土の6分の1の約60,000km²の面積を見ることができる。「世界で最も残酷な鉄距離のトライアスロン」として知られる「 Norsemanトライアスロン 」の競技の場でもある。
【RJUKAN CENTRエリア】
Tjonnstdbergfossen(oに/が入るんだけどもね)
とっても素敵なルートだったよ。1P目が緩斜面でふくらはぎがメリメリしようが、緩斜面に溜まった雪が起こすチリ雪崩れを浴びようが、このルートはリューカン周辺で最高のルートだ。
なぜなら…
街の中心部ほどないところから谷筋とは逆に山斜面を幾ばくか登った取り付き点。ジョンが登り、他のパーティーも来たりして、ジョンのセカンド、サードが登り始めると、あれれ?な現象が現れる。
写真左上を注視されよ。明らかに明度が違っている。そうなのよ、このルート日が射すのよ。
日が射すって、なんて素晴らしい!背中が温かい。なんだか、とてつもなく嬉しい気持ちになってくる。
と思っていたら…
何やら下方からワイワイガヤガヤと共に歌声が聞こえてくる。見下ろせば街の中心部に日が射していて、そこに人々が集まってきているようなのだ。
なんて歌てるのか聞き分けられないが(聞き分けられてもノルウェー語はわからないけど)
想像に難くない。たぶん…
「お日様ニコニコ楽しいな&嬉しいな」
もとい「ありがとう」だろうな。
これには深〜いわけがある。
約3500人の住民が住むリューカンの街は首都オスロ南西部テレマーク地方の峡谷地帯にあり、2000m級の山々に囲まれているため9月から3月の半年間はほとんど日が当たらなくなる。
1928年に北欧初のケーブルカーが建設されると、住民はこぞって山頂に登って日光浴を楽しんだという。その状況を一変させたプロジェクトとは山頂に巨大な鏡を設置して太陽光を反射させ、街の中心部の広場を照らすという奇想天外なものだった。
それが構想から実に100年の余を経てプロジェクトが実現したのが2013年のこと。山頂部に設置された鏡3枚は、高さ6メートル、反射面の合計は50平方メートル。コンピューター制御で太陽の動きに合わせて10秒ごとに角度を変え、街の中心部の600平方メートルの範囲に太陽光を反射させる。総工費約85万ドル(約8400万円)をかけて完成させたのだという。その巨大な反射鏡が設置されているのが、このルートの終了点に近い山頂なのだ。
実はこの氷柱はここまで発達することは稀で、従って正規ルートは氷柱を回り込んだ凹角斜面を行くのだとかで、先行チームはそれを行ったというが、ここまできちんと育っているのを見てこれを行かない篠原ガイドでもあるまい。後でメンバーから「いいな〜」と羨ましがられたのは言うまでもない。(回収にパンプしてハンギングしたのは内緒だからね〜)
背中ポカポカなありがたい素敵なルートを勝手に「ニマルート」と内心呼びたい。ほんとに太陽がこんなにもありがたいものだと身に沁みたから。(花谷さんのキャシャールになぞらえるのはおこがましいのだけれども…)
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連載 : 編集長!今日はどちらへ? 記:小玉徹子