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編集長!今日はどちらへ?
Play back 2012-1
2012 / 11 / 26
ああ、気が付けばもう、11月の声。矢のように流れた月日でありながら、思えば重く切ない1年。「女性は7の倍数の年に体調に変化が」というようなどこかのコマーシャルに、思わず頷いてしまうような年回りだった。
「『登りがけのだちん』、いい加減更新してくださいよ」
再三、苦言を呈していたスタッフももう、あきれ返って言わなくなってしまうぐらい、私の山コーナーは止まって長い。
5月にヨセミテクライミングに出かけたまではまだ、よかった。その前の春山では「もうひとつ調子が出ないな」感はあったが、それでもクライミングは手放しで楽しかった。帰ってきて、そのルポを上げなければと思っていた矢先の6月11日に母が亡くなってしまった。
余にもの喪失感の大きさに、そしてそれが、なんというか全くの想定外、思いがけなかったことであったがゆえに、大きく心身のバランスを崩してしまって、厳密に言えば半年以上経った今も、どこか心の置き所が座らない感じがしている。
何をしても母の面影がよぎり、ことあるごとに母との因縁に結び付けて感じてしまう。
気楽に山行ルポに手が付けられなくなった。山の途中、岩の途中で突然降って湧いてくる感情を「そもそも」から説明しなければと思えば思うほど、書くのが億劫になった。
書けなくはあったが、心底では様々に揺れながら変化を遂げ、半年がかりでグリーフワークと自己回帰は進捗していったと思われる。
2012年のPlay Back、とりもなおさず、その変遷をお伝えすることになる。ごくごくの私ごとに心苦しくもお付き合い願いたい次第である。
ほんに不思議なことばかりなのだ。決して愛深き母娘というわけではなく、むしろ私にとって母は常に悩みの種、もめごとの根源で、寄ると触るとすったもんだの騒動。仕舞いにはこともあろうに「2度と敷居は跨ぐな」「とっとと死んじまえ」などという、人様が耳にしたら犬畜生にも劣る母娘の罵詈雑言のやりとりになる。挙句、自らの吐いた毒気にやられてしまって、自己嫌悪で立ち直るのにしばらくかかる。にもかかわらず、母ときたらものの1週間も経つか経たないかで「アキコちゃ〜ん」などと電話をかけてくる。それでまた、ぶち切れる。いい加減懲りればいいのに、何度も同じことを繰り返す。だから、母は私にとっていつも、できれば遠ざかっていたい存在だった。
現に一番最初に母が「具合が悪い」と聞いた時も長らく寝込んだりしたら7月中旬からのアララト山登山(トルコ)へ行けなくなるやもしれぬことの方を心配したぐらいだった。
ところが蓋を開けてみれば、母は寝込むどころか、あれよと言う間に逝ってしまった。最後に母の顔を見た時によもやそのまま逝ってしまうとは思いもかけなかった。あまりにもあっけなく、想定外だったので、最後に見た母の様子が心をとらえて離さない。母が最期にした仕草の意味を探らずにはいられなかった。
予定通り7月19日に成田を発ってトルコ入りした。きっと母は私がヨセミテから帰るのを待ち、アララトへ心置きなく出かけられるよう時を選んで逝ったのだと思った。
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