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編集長!今日はどちらへ?
Here Comes Sumer ‐2‐ デボナ針峰
2014 / 09 / 16
8月3日
シャモニーから車で5時間・300km、ゼグラン山群の麓のクリストフ・アノアソン村?へ。
かなり山奥に来た感ありの小さな村はデボナクライミングの起点として知られ、中心にある教会墓地にはデボナ開拓に寄与したクライマー、登攀中に滑落遭難したクライマーやガイドたちの墓石も数多く、花が絶えることがないように見受けた。
8月4日
8:50、ホテル・ラコルデから車で15分の登山口スタート。4時間20分歩いてソレイエ小屋2730mに到着。「5時間で行ければよし!」だったから40分ショートで行けて、心底ほっとした。
谷を見下ろす細い道、明るく広い草原のような道、谷底の沢沿い。変化に富んだ登山道、しかもヨローッパアルプス特有の多種多様な草花が今を盛りで、それだけでもキョロキョロしてしまう。それにまた、キョロキョロ草花に目が行くゆとりを自らに認め得る、それが何より嬉しいことだった。
幾度となく山壁を回り込み、だんだん「まだかなー」と歩くことに倦み始めたころ、蛇行する山道をまたひとつ回り込んだら、突然目の前にデボナ針峰の姿が飛び込んできた。思わず足を止めて一時見とれる。
「岩石の荒野の真只中から、叫び声のようにほとばしり出た並外れた針峰、狂気のイメージのようなピーク」
山の詩人ガストン・レビュファーがそう現しているように、青空を突き通さんばかり鋭利に尖っている。
あれを攀じるかと思うだに膝に力が入る。登攀に入れば全容がどうだったかよりも目の前のホールドやスタンスに集中するには違いないが、この岩峰の容姿は時代を超えて多くのクライマーを魅了してきたであろうことは推測に難くない。
ほんの3日ばかり前に呼吸困難状態でグランパラディソを敗退したのが夢か幻か、はたまた大嘘のようである。
「時間は長いけれど、フツウのトレッキング山道ですから」「荒川三山行けた人なら、どってことないですから」「のんびりハイキングを楽しむ気持ちで」
デボナ登攀基地のクリストフ・アノアソン村へ向けて出る前夜、ホテル「ラコルデ」で泊まった夜にも、ご飯食べながら、篠原ガイドとこの度一緒にやって来たKさんと二人して注いでくれた「ダイジョブ」シャワー。これが効いた!言っても確実「豚もおだてりゃ木に登る」タイプなんだわワタシ!
言い方変えれば「すぐにへこんで、勝手にプレスがかかっちゃうヘタレ」ってことなんですがね〜
8月5日デボナ針峰マディエダイレクト
なにせデボナはソレイエ小屋のすぐ裏手に聳えているわけで、朝暗いうちから起き出して、などという必要がないのが嬉しい。
いやいや聞きしに勝る標高差330m、18ピッチの厳しいロングルートだった。
「どうれればいいんですか〜」
核心部でほとほと困り果てれば
「頑張ってくださ〜い」
が返ってくるばかりで、なんとか力を振り絞って上がるよりないのである。多くのピッチはIVだといっても、18ピッチ中6ピッチほどあるVで散々手こずると、腕が撚れてしまって、IVすら持ち堪えられなくなる。
「時間がかかり過ぎですよ」
なかでも最難関ピッチのオーバーハングでは、1ピッチに私とKさん二人がかけた時間が1時間もかかったとテラスで聞くまでは、必死過ぎて時間経過すら気づかなかった。その直後のピッチはIVさえ大変!
スタートから山頂・終了点まで優に8時間のクライミング。そこから懸垂、氷河下降も含め2時間半の下山。再びソレイエ小屋にたどり着けばもう7時を回り、夕食の時間はとおに過ぎていたが、夕食を済ませて歓談していたクライマーや小屋番マダムらは、我々の帰着を称賛を以て温かく迎え容れてくれた。
以下はデボナクライミングの画像だ。全て篠原ガイドによる撮影。
数々のドキドキをささ、どぞどぞ!!!(時間経過順)
*Blog「日々楽観」はこちら…
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