BacchusうなぎのBar-Hopping
本日の1杯 vol.1【とろみと苦みのあるマンハッタン】
2009 / 02 / 16
日が暮れるころになるとそわそわしだす。今日はどこに行って、何を飲もうか。どのくらい飲めるかは、仕事や予定からの逆算で、許してもらえるなら当然のように朝まで浴びていたい。バーに行かない、という選択肢はない。
徹夜で仕事になりそうな時は、遠出はできないし、長時間飲むわけにもいかない。そこで重宝するのが、近場にあって、あまり遅くまで営業していないバーだ。仕事が忙しい時は電話が頻繁にかかってくるので、電話が圏外になる店なら、なお都合がいい。せめてもの短時間はゆっくり飲めるし、留守番電話が気になって長居せずに済む。
家の近くにぴったりのバーがある。五反田有楽街の入り口から少し入った所にあり、場所は地下1階。バー「樽の水」である。オープンは2年前と新しめの店で、内装にはしっかりとお金をかけたことがうかがえる。一番最初にバーに行く場合、私はマンハッタンを頼む。むろん、大好きだというのが理由だが、作る所を見ているだけで、お店の様々なことがわかるからだ。
磨き上げられたミキシンググラスに、まずは氷を入れて、きりきりに冷やす。そして、材料のベルモットとウィスキーをカウンターに取り出す。ベルモットはチンザノ・ロッソと普通だが、ウィスキーがカナディアンクラブ12年となかなかに贅沢なチョイス。しかし、それよりも冷凍庫からウィスキーを取り出したのにはにやりとした。
マンハッタンは、ライもしくはカナディアンウィスキーとベルモットを2:1でステア。アンゴスチュラ・ビターを数滴たらして、マラスキーノ・チェリーを添えるカクテル。マティーニがカクテルの王様と言うように、マンハッタンはカクテルの女王と呼ばれている。女王というわりにはハードなカクテルで、ステアの技術が必要になる。熟練していないと、氷が溶けすぎて水っぽくなってしまうのだ。そこで、材料のお酒を冷やすという技がある。ウィスキーを冷やしておけば氷が溶ける量を最小限に抑えられるというわけだ。
おいしくなるならのんべぇとしては大歓迎なのだが、この方法を邪道とするむきもある。ウィスキーは温度が低すぎると香りが立ちにくいためだが、そんなのは作っている最中や飲んでいるうちにあがってくるもの。出されたら、3口で開けるような飲み方でないなら、まったく問題なし。冷凍庫にそんなスペースがない、という事情の方が大きいのではと思う。
当然のように冷凍庫にストックされていたカクテルグラスに、琥珀色の液体が満ちる。うまくできた証拠に、お酒にとろみがある。これは期待できそうだと内心舌なめずり。チェリーを沈めて、レモンピールして完成。
一口飲んで驚いた。一般的なマンハッタンよりコクが深い。CC 12年の味もあるだろうが、ビターが効いている感じだ。もちろん冷えていて好みにぴったり。5分もすれば香り立ってくるので、2度おいしい。値段は1100円。やはり1000円を超えるカクテルならこだわりをもって欲しいが、このマンハッタンは大満足。
オーナーの塩田さんは前職が内装業で、バーテンダー歴そんなに長くない。それなのにすごく勉強していて頼もしい。修行中の腕をサポートするためにウィスキーを冷凍庫に入れるなど、賛否両論かもしれないが、その努力は諸手を挙げて歓迎したい。
軽く飲んで仕事に戻るはずが、結局杯を重ねることに。今日もショットバーから自宅に「でかける」のが遅くなりそうだ。もちろん、明日もショットバーに帰ってくることになるだろう。
【樽の水】
東京都品川区東五反田1丁目12-9
イルヴィアーレ五反田ビルB1F
TEL:03-5789-4566
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