BacchusうなぎのBar-Hopping
本日の1杯 vol.11【古き良き特級表示時代のウィスキーを懐かしむ】
2009 / 08 / 07
渋谷のホテル街に、入り口はわかりにくいが渋いバーがあると紹介され、探したのだが見つからず、あきらめてどこかに行こうとしたところ、交差点に看板を見つけた。紹介されたところとは違うのだが、「BAR 渋谷 CARROT」の文字に見覚えがある。ふらふらとその看板を手がかりに店に向かう。やはり、来たことがない。
扉を開けると、重厚なバーカウンターの向こうにたくさんのボトルが並んでいる。調度品がことごとく新しく、最近できた店のようだ。とりあえず、カウンターに座り、ロブ・ロイを注文。ホワイトホースの特級ものとベルモットにカルパノ・アンティカフォーミュラを使う贅沢な一品。マスターは販売が中止されたオールドボトルを探すのが趣味のようで、温泉街まで探しに行ったこともあるという。デッドストックだからと言って、イコールでおいしいわけではないが、こだわって集めただけあり、クオリティは高い。
作っている間、いつオープンされたんですか、と聞くと2008年という。やはり、新しい。ただし、新規オープンではなく移転とのこと。
あぁ、思い出した。宇田川町の古いビル地下にあった「CARROT」じゃないか。数えるほどしか行っていないので、バーテンダーの顔を見てもすぐにわからなかったわけだ。センター街は騒がしいのであまり行かないが、渋谷で用事があったときに寄っていたバーだ。オーセンティックで、お酒にこだわっており、リーズナブルに飲めるので重宝していた。連絡先をもらっている人には、移転を知らせたそうだが、この店ではまだ自己紹介をしていなかったのだ。
バーテンダーと会話が弾むと、名前や職業はさりげなく聞かれることが多い。とはいえ、プライバシーを守るという職業意識から、それ以上はあまり踏み込んでこないのが普通だ。しかし、名刺を渡せば顧客リストに入れてくれるし、常連になれば連絡先を交換することもある。
常連になれば自然とバーテンダーとは仲がよくなる。向こうは接客業なのだから、なおさらだ。ときどき顔を出し、楽しく飲み、深酒する前に引き上げる。これだけでいい関係が保てる。仲良くなりたい、という雰囲気を出していれば、なおさらバーテンダーが絡んできてくれることだろう。無言の雰囲気を出すのが難しいなら、バーテンダーが酒を作るところをずっと見ていたり、作業をしていないようなら話しかければいい。
ただし、金を払っているのだから、と思い違いをする人がいる。バーテンダーが若いと上から目線になり、口調も「お前」呼ばわりになるのはいただけない。バーテンダーの中にはとても若い人がいるし、場合によっては腕前がイマイチのこともあるだろう。それでも、相手はプロなのだから、そういう上からの関係はNG。本当にそう思うなら自分が店を変えればいいだけだ。たいていはつまらない顕示欲だが、他の客は非常に不愉快。そのバーテンダーのお酒を楽しみに来ているのに、それ以上に偉そうな態度の人がいたら最低だ。バーテンダーには丁寧な態度をとるべし。敬意の対象は、その人のみならず、その店、ひいてはバーそのものであると考えればいいだろう。
では、敬意を持って2杯目をプリーズ。とんでもないシャルトリューズがあるというので、それにチャレンジする。今宵もすばらしい酒が、列をなして待っている。
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