BacchusうなぎのBar-Hopping

本日の1杯 vol.14【強烈な一升瓶入りの地ウィスキーをガツンと味わう】

2010 / 05 / 18

バーは十人十色というか百花繚乱というか、1軒ごとに店の作りや雰囲気、客層が異なる。静かで暗い店内、ジャスが流れている店もある。少しざわついているくらいがかえってよい、と好みも人それぞれ。とはいえ、いつも同じバーに通っていると、ときどき新しい刺激がほしくなる。

変わりどころといえば「バー・松田」。恵比寿駅西口から坂を登ったところにある隠れ家風情で、なんとバーカウンターがない。そして、カクテルは(基本的に)作らない。店内は正方形で、四隅にテーブルが4つ。ひとつのテーブルには3〜4人が座れるものの、ひとりの客が4人来たら、それで満席だ。中央にオーナーの松田氏が立つ斬新なスタイルとなっている。

vol.14_01.jpg 最初はシングルモルトが充実しているので、珍しいボトラーズを飲んだりしていたのだが、そのうち、好みを伝えてオススメしてもらうほうが面白いことに気がついた。とにかく、見知らぬ酒を出してくるのだ。ワインを作るぶどうジュースにコニャックを入れて熟成させる「ピノデシャラント」もここで知った。頻繁に飲むようになった。そんなある日、驚きの瓶を出された。

一升瓶なのだが、ラベルに「シングルモルト」とある。モンデ酒造のモルトを石塚商店がプライベートボトリングしたものだ。25年物の樽出し原酒で、アルコール度数は64%。アイラウィスキーを彷彿とさせるスモーキーな香りで、味は苦味がきいており、強め。あまりにも個性が強いので目を白黒させていると、開けてすぐのときはこんなもんではないと松田さん。
普通に「美味しいです」とは言えないが、味わい深く癖になりそう。何杯もお替わりしたくなるわけではないが、ときどき飲みたくなる。

バー・松田は4つの客席が中央を向いているので、客同士が会話を始めることもある。程度の差はあれ、これはどのバーでも起こり得る。もちろん、バーテンダーがさりげなく仲介することもある。バーで知らない人と会話するのに、ノウハウはない。本人のコミュニケーションスキルによるところが大きい。ただし、嫌われる行為はあるので注意。

大騒ぎしない、喧嘩をしない、などは常識。酔って声が大きくなるのも程度問題。金の絡んだホラ話も虚実いずれにしても顰蹙。
おごったり、おごられたりもケース・バイ・ケース。あくまでもスマートにいきたい。酒をせびるなど言語道断。かつて、カウンターでウィスキー談義になっているとき、「美味しそうですね、飲ませてください」と言われた。店のボトルなのでなんのことやらと思っていると、なんとおごれ、という意味だったので仰天した。女性ならともかく?男性に。手が出そうになったが、バーでの暴力はご法度。「自分のサイフでね」と言い、その後は無視することにした。

セクハラも論外。普通に飲んでいた男性が、隣に女性が座ったら、俄然張り切ってしまう。普段一人で飲んでいるときは、静かでダンディなのに、豹変して最低のオヤジになるのは男性心理とはかたづけられない。
よしんばバーで女性にアプローチするとして、「愛のキューピット」だとてスマートでないと期待の矢は決して放たれまい。

おっと、女性がひとりで入ってきた。狭い店内で、客は我々だけ。さて、ヘビーなウィスキーは飲み干して、お代わりには「ピノデシャラント」といきますか。


【バー・松田】
東京都渋谷区恵比寿南1-12-5 恵比寿Kビル1F
TEL:03-3714-1340













連載 BacchusうなぎのBar-Hopping   記:

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