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撮影年月日 |
2012/08/25 |
撮影場所 |
富山県室堂平 |
学名 |
COMPOSITAE Saussurea nikoensis var. sessiliflora |
科目・属 |
キク科トウヒレン属 |
季節 |
夏 |
生育地 |
亜高山帯から高山帯の開けた草地に生える多年草 |
分布 |
本州(福島、群馬、新潟、富山、石川、長野、岐阜県)。日本固有 |
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残雪の谷にも咲く「アザミ」
花を同定するに、ちょっと触れたくない鬼門があるとすれば、すみれの類とあざみの仲間。軽い気持ちで撮って帰って、それからが、さあ、大変!恐ろしく迷う羽目になる。似て非なる同属異種が多過ぎる。分布域や生息環境に特徴があるものはまだしも、同定のよすがが「根粒を持つ」だの「苞」が「下あるいは上向き」など、そんなの「土、ほじくって観察しろってか?」「そこまででけんがな〜」「見なかったがな〜」となる。
そこいくとクロトウヒレンは解りやすい。パッと見「アザミ」。けれど明らかに他とは違う大きな特徴がある。それは「ゼーハー」喘ぎながら精一杯、マックスで山道を急いでいたとしても、チラ見でさえ目の端で捕まえられるほど。何度も傍らを行き過ぎてきた。剣岳に登っていて、御前小屋から剣山荘に至る道すがら、剣山荘周辺、剣山荘から山頂へ向かう道のそこここ「あ、ここにも!」と、それはそれは「気になって、気になって」。それでいて「そんなの目にも入らぬ」平静を装うのは内心、骨も折れる。ついぞ、撮れずにきてしまった。
2012年8月24日。剣岳本峰南壁登攀のために室堂山荘に前泊した。翌朝、集合時間にまでには退屈するほど、時間が有り余っていた。探すまでもなくクロトウヒレンは室堂平にもたくさん咲いていた。花はまさしく「アザミ」だが、その類の葉は大概は細長三角で大きな裂状葉であり、「すごく痛い」か「それほど痛くない」かの違いはあっても十中八九、鋸葉の先端に鋭いトゲを有するのに比しトウヒレンのは、ややハート型っぽい逆卵に近く、裂葉ではない。トゲはない葉もあるほどで、あっても全く痛くもない。
26日、剣山荘から一服、前剣を経て平蔵のコルから、雪渓が後退したガレ場を少し下って南壁A2に取りついた。ノーマルルートから真っ隣りに見るほど難しくはなかったが、やはり緊張はしていたと見えて、「皆見てるよ」本郷さんが何度か教えてくれたが、自慢気に胸を張るゆとりは、とてもなかった。
登頂後は一般下山ルートを降りた。使わなかったアイゼンだのその他デポしたものを取りに、再び平蔵のコルへ降りた。デポ荷物をザックに仕舞い終えて、ふと気が付いた。平蔵谷の雪渓の上端の雪解け斜面にクロトウヒレンの一塊が一段と美しい花を風に揺らせていた。
花期は7月下旬から9月。
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