【祭りリターンズ】日本の心、ここにあり!――ペルーの日系祭り
ペルー・リマ
ペルーは「祭典大国」だ。南米三大祭りのひとつ「インティ・ライミ(太陽の祭典)」や地域に伝わる伝統の祭礼、カトリックに由来する宗教行事や最近はやりのグルメフェスティバルなど、枚挙にいとまがない。365日間、ペルーのどこかで祭典が行なわれていると言っても過言ではないのだ。その中で、唯一日本語のタイトルを冠したイベントがリマにある。その名も「Matsuri/マツリ」、ペルーの日系人が主催する年に一度のお祭りだ。
「ワッショイッ! ワッショイッ!」
男たちの威勢のいい声が会場に響く
2012年11月10日。Matsuriの会場となるラ・ウニオン運動場には、焼き鳥や沖縄そば、弁当を売る屋台をはじめ、アニメやキャラクター・グッズを扱う出店までが軒を連ねていた。気になる屋台を覗き、ビール片手に串をつまむ来場者の姿はまさに日本の祭りそのものだ。一方で、「IRO IRO/イロイロ」や「YUENCHI SPORTS/ユウエンチ・スポーツ」など、日本語のようでかつて日本では見たことのない店名が、ここが海外の日系社会であることを如実に物語っていた。
焼き鳥、弁当、そば、おにぎり。
これが日系屋台料理の定番だ
Matsuriの会場には特設ステージが設けられていた。会場を照らす提灯に浮かぶ「オリオンビール」の文字。ペルーに渡った移民は沖縄出身者が圧倒的に多い。彼らにとって、この提灯は沖縄県民としての誇りでもあるのだろう。
私が到着したのは、ちょうど若手ロックバンドが演奏を始めたころだった。玄人はだしのその演奏に、女の子たちの黄色い声援が飛ぶ。J-POPやJ-ROCKを日本語で歌い、ファンにスペイン語で語りかける若者たち。彼らがこれからの日系社会を支えていくのだ。
清めの砂を撒くペルー版浴衣美人
Matsuriのメインイベントは御輿の入場だ。清めの砂を撒く浴衣美人を先頭に、屈強な男たちが御輿を担いでやってくる。紅白の飾り綱も鮮やかな、それは見事な大御輿だ。ステージ上の司会者が声を嗄らして会場を盛り上げると、観客席からは大きな拍手が沸き起こり、会場はムンムンとした熱気に包まれていく。「ワッショイッ! ワッショイッ!」 これがMatsuriだ! ペルーのMatsuriだ!! あたりが一気に蒸し暑くなる。あぁ、身体中の血がたぎる。
神輿の興奮の後には、さらなるサプライズが待っていた。『島唄』でおなじみの宮沢和史さんや日本で活躍する日系アーティストたちが、なんとこのMatsuriに特別出演してくれたのだ! ステージ前はカメラや携帯を手にしたファンで埋め尽くされ、皆がともに歌いリズムに身を任せた。物凄い一体感。こんなに心が熱くなるお祭りは初めてだ。気がつくと、取材を忘れてコンサートにのめり込んでいる私がそこにいた。
宮沢和史さんや日系アーティストたち。
素晴らしいコンサートでした!
自分たちのルーツに誇りを持ち、古き良き日本を大切に受け継いできたペルーの日系人たち。日本の歌や文化に対する彼らの強い想いがあったからこそ、今回の宮沢さんたちの来秘が実現したという。日本の心、ここにあり。私の中に温かいものがじわりと広がった一日だった。
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