マーライオンは何を見つめているのか――海の国シンガポール
シンガポール
シンガポールのシンボルと言えば、マーライオン。頭はライオンで胴体は魚のこの像は、1964年シンガポール観光局のロゴマークとしてデザインされた。シンガポールのガイドブックには必ず載っているはずのマリーナ・ベイ、マーライオンパーク初代の他にも、その後ろにたたずむ小さなマーライオン、セントーサ島、マウントフェーバー公園、シンガポール観光局本店の計五つが公式なマーライオンとして認められている。「世界三大がっかり」として語られることもあるけれど、頭がライオンで胴体が魚という姿は、よく考えてみるとちょっと不思議で神秘的だ。
マーライオン、君はなにを見つめているのか魚部分は、かつてシンガポールの地が“トマセック”と呼ばれる漁村だったことに由来している。トマセックはジャワ語で「海の町」という意味だ。複数の航路が合流するマレー半島の先端に位置するという地理的条件によって、様々な王国の船が寄港し海の交易で栄えた町だった。
ライオン部分は、国名シンガポールの由来となった「シンガプーラ」からきている。マレー年代記によると、シュリービジャヤ王国の王子が船で現在のシンガポールの地にやってきたところ、ライオンが現れて、王族にその土地を治めることを許して立ち去った。このことから、王族はその土地をサンスクリット語で「ライオン(Singa)の町 (Pura)」を意味する「シンガプーラ」と名付け、ライオンを国の守護神として祀った。マーライオンは、海を現す「マー(Mer)」と「ライオンの町(シンガプーラ)」であるこの国の伝説に由来しているのだ。
マーライオンが見つめるシンガポールの海、そして街現在のシンガポール共和国は1965年に成立したのだが、この土地は海洋交通の要所として、複雑な歴史をたどっている。植民地としての歴史により、中国、インド、インドネシアなどから多くの移民が渡来し、現在の多民族国家の起源となった。港町の運命は華々しくそして激動だ。
現代的ビルのはざまにヒンズー教寺院海を通して、東南アジアの国々、オーストラリアや太平洋の国々、そして中国やインドをつなぐ役目を果たしてきたシンガポール。移民の数が全人口の約三分の一を占めるというこの国は、面積は小さいけれど、多様な文化背景をかかえることを強みとして、ちょっとたくましくて肝っ玉が座っている。そんなシンガポールを見つめる像。なんだか、マーライオンが俄然頼もしい奴に見えてくるのだ。
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