暑い日はプラヤへGO!――アマゾンならではの海水浴
ペルー・プカルパ
「サン・フアンの祭り」を見に、ペルー・アマゾンの街プカルパを訪れた。タラップを降りた途端、熱帯雨林特有のねっとりと蒸した空気が身体に纏わりつく。首都リマはセーターやマフラーなしでは過ごせない寒さだというのに、やはりペルーは広い。空はどこまでも青く、容赦なく照りつける太陽が眩しかった。
ヤリナコチャの湖岸はサン・フアンの祝日を楽しむ人々で溢れかえる「サン・フアン」とは、イエス・キリストに洗礼を授けたという洗礼者ヨハネのこと。とはいえ教会主導の宗教的な催しはほとんどなく、街ではミス・サン・フアン・コンクールや盛大なパレード、アマゾン料理コンテストなどが行なわれていた。会場にはさまざまな屋台が軒を連ね、辺りには川魚やバナナを焼く香ばしい煙が立ち込めている。人気クンビアグループのコンサートも開催され、街は夜遅くまで賑わっていた。
そんな祭りに欠かせないもうひとつのイベントは、意外にも家族で「プラヤ」に出かけることだという。「playa」とはスペイン語で「海岸・浜辺」を意味し、「プラヤに行く」は「海水浴に行く」と同義語である。確かに、暑い時期に砂浜でのんびりするのは贅沢な過ごし方だ。気の置けない仲間と過ごす休日のひとときは、なにものにも代えがたい。しかし、祭りの最終日にわざわざ泳ぎに行かなくてもいいのではないか? ましてやここはアマゾンだ。太平洋まで直線距離で400km以上離れており、それこそ、生まれてこの方一度も海を見たことがないという人も少なくない。そんなプカルパの人たちが、一体どこのプラヤに行くと言うのか? そもそもアマゾンにプラヤは存在するのだろうか。
そんな私に、ホテルスタッフがヤリナコチャの港へ行くよう教えてくれた。ヤリナコチャは街の北側に位置するV字型の河跡湖だが、アマゾン河の源流ウカヤリ川に合流しているため緩やかながら流れもあり、一見河川のようである。
子供も水しぶきもキラキラ!ヤリナコチャの港では、ボートを並べた船頭たちが「プラヤ行きが出るよ! さあ早く乗った、乗った!」と威勢良く客を集めていた。私はプラヤなるものの正体を突き止めようととりあえず乗船、ボートは10分ほどで湖の対岸に到着した。
人の流れに沿って奥へ進んでいくと、湖畔はゴザやパラソルを広げた人たちで埋め尽くされていた。老いも若きも水着を着用、いや、服を着たまま泳いでいる人もいる。輝く太陽の下で思いっきり水と戯れる様子はまさにプラヤ、海水浴の風景そのものだ。違いがあるとすれば、青い塩水か茶色い淡水かくらい。緑が多く、木陰でハンモックが揺れている光景は、ここアマゾンならではと言えようか。
お母さんと一緒に赤ちゃんも水浴び。この子たちに幸あれ!洗礼者ヨハネは、ヨルダン川でイエスに洗礼を授けたと伝えられている。サン・フアンの祝日に川に入ることは、聖なる水で清められることを意味するのだ。ミスコンやらゲイコンやらで大騒ぎしていた人たちも、この日に川(正確には湖だが)で水浴びをすることの大切さだけは忘れない。水しぶきを上げながら聖なる日を楽しむアマゾンの人々。眩しい陽射しの下、ヤリナコチャの水はいつまでもキラキラと輝いていた。
Tweet |