【初秋は公園】シベリウスっぽさとは何か?――ヘルシンキ・シベリウス公園
フィンランド・ヘルシンキ
ヘルシンキのシベリウス公園。
中央に見えるのがシベリウスを記念して公募されたモニュメントヘルシンキ西部海岸沿いに広がる「シベリウス公園」の目玉は、シベリウス・モニュメントだ。フィンランドの国民的作曲家と言われ、世界的にも有名なジャン・シベリウスの死後、シベリウス協会が記念モニュメントの建造を計画して広く公募。50の応募作品の中から選ばれたのが、エイラ・ヒルトゥネンの作品。この選考結果がちょっとした波紋を呼んだ。
「シベリウス公園なのに、全然シベリウスっぽくない!」、「抽象的すぎて、意味がわからない!」、「公共芸術作品としてふさわしくない!」というのが世論の大半の意見。確かに、高さ8.5メートル、幅10.5メートル、600本以上のパイプで出来ているこの巨大なモニュメント、パイプオルガンを彷彿させて、音楽っぽいと言えないこともないが、シベリウスっぽいとは言えない。
パイプオルガン風のモニュメント。ひとつひとつに細工が施されておりますモニュメント完成後も反対熱はおさまらず、結局モニュメント製作委員会は、ヒルトゥネンにシベリウスの肖像の製作も依頼することになった。この肖像、モニュメントと向かい合っていて、ちょっと神経質そうな顔のシベリウスがモニュメントに何かひとこと言いたげだ。
このモニュメント、実際に触れることのできる体験型になっている。下から覗いてみると、筒の中は空洞になっていて、風の音や人の声がこだまして聞こえる。遠くから眺めてみると、金属製にも関わらず、周りの木々や岩と調和していて、公園の自然の一部にすんなりおさまって見える。筒の模様も1本ずつ違っていて、レース編みのようだったり、楽譜のようだったり。抽象的であるがゆえに、あれこれと想像がふくらむ。それを眺めるシベリウス、なにやらまんざらでもなさそうに見えてきた。
公園内にはおシャレなカフェもところで、日本でいちばん有名なシベリウスの作品と言えば、『交響詩フィンランディア』だろう。後に合唱用に編曲されたこの作品の最初の名前は「フィンランドは目覚める」。この作品が発表された1899年のフィンランドはロシア統治下にあり、愛国的感情を呼び覚ますという理由で、帝政ロシアから演奏禁止処分を受けていた。私はこの曲を、なぜか中学校の音楽の時間に習ったのだが(どうやら私だけではないらしい)、「フィンランディア」と「フィンランド」という国が全然つながっていなかった。「おお、フィンランドよ、見よ、お前の朝が明ける、朝の光が夜の闇の力に打ち勝ち(松村一登・訳)」という歌詞から、ずいぶんとドラマチックな目覚めの曲だ、ぐらいに思っていて、これはちょっと恥ずかしくてフィンランド人には言えない。なぜこの曲が日本の中学校で教えられていたのか、いまだに疑問なのだ。
改めて作られたシベリウス像。独特な像ですし、表情ですね
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