【夏は市場】市場にお惣菜を買いに行く――小樽手宮市場【北海道シリーズ】
北海道・小樽
生ホッケフライ、揚げなすの煮びたし、カニクリームコロッケ、ほうれん草の白和え、揚げすり身、焼きビーフン、かき揚げ、昆布巻き……。ずらりと並ぶお惣菜の数々、こちらは小樽市手宮市場佐々木商店前。北海道小樽市場と言えば、カニやホッケなど魚介類販売のイメージが強いけれど、お惣菜屋さんも市場の重要な担い手。
小樽手宮市場市場のある手宮地区は、1880年(明治13年)に北海道での最初の鉄道、旧国鉄手宮線が開通し、小樽の中でも早くに開けた土地。手宮市場は1917年(大正6年)に開設された小樽で最初の市場だ。市場近くの通りは港へつながり、明治時代にはずいぶんと賑わったという。現在の建物は、1994年(平成6年)に改築されたもの。今日のおかずを食べる分だけ買っていく近所の人が多い。観光名所というより台所的な市場だ。
寿司やスキヤキのような華やかさがなく国際的知名度は高くないし、テリヤキのように国際的応用度も低いかもしれないけれど、お惣菜はなかなか重要な日本文化の一部ではないだろうか。市場だけでなく、デパ地下、コンビニお惣菜やスーパーのお惣菜コーナーなど、お惣菜をめぐる日本文化的要素はたくさんある。
ずらりと並ぶお惣菜の数々・佐々木商店お惣菜の数々に思わず「なつかしい」感、これぞ「家庭の味」感を抱いてしまったが、よく考えてみるとポテトコロッケは家でも作るが、カニクリームコロッケはめったに作らない。生ホッケフライも同様。ほうれん草の白和えは、かつて母が作ってくれたような気もするが、子どものころ喜んで食べた記憶はない。「家庭料理」としてのお惣菜と宣伝されることが多いけれど、実は気軽だけど家ではなかなか作らない「屋台食」に近いのではないだろうか。
その土地独自の野菜や海産物を使って、地域ならではの食生活スタイルから生まれた料理は、郷土料理よりもう少し気負いがなくて手頃。地元でとれたもの、市場でまかなえるものをできるだけ利用して作られた、佐々木商店のお惣菜。誰がどのように作って売っているのか明確なのは、対面販売の市場ならでは。食に対する安全性へのニーズにも、しっかり対応している。
こちらはトラウトサーモン味噌漬けがおすすめの田中海産店忙しい日々の中、毎日あれこれ作るのは大変。あるいは、旅行者としてその土地の味を試してみたい時、市場のお惣菜屋さんへ行って、お店の人の話を聞きながら季節のお惣菜を選んで買ってくる。そして、たいてい市場の徒歩圏内には美味しいパン屋さんとか面白い喫茶店がある。野菜たっぷりのバランスよいお惣菜を買いに市場にぶらっと出かけるのは、なかなか「文化的健康的な」散歩なのだ。
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