【魅惑的な世界の山々】「天地人」のロケ地をたどる - 直江兼続の弟の城跡 -
福島県田島町
梅の花も満開を過ぎ、硬くて赤かった桜のつぼみが、やわらかなほころびを見せ、吹く風もあたたかい。
東北の春は東京よりも遅いが、遅く来る分、桜の開花もありがたみが増すというものだ。
鴫山城は、主演に妻夫木聡さんを迎え、直江兼続の生涯を描いた大河ドラマ「天地人」のロケ地にも使われた福島の城跡である。
城の入り口には、真っ赤な鳥居を見守るように桜が枝を垂れ、天地人の「のぼり」が揺れている。
確かな築城年代は定かではないが、今をさかのぼること約500年前。福島県田島町の中心にある愛宕山に鴫山城は築かれた。
時を遡ること780年前、小山氏の一族・長沼氏は、下野国(現在の栃木県)最大の勢力を誇っており、この一帯を領地とし、おさめていた。
鴫山城は、長沼氏が室町時代に築城、整備し、変遷を経て、元和一国一城令で廃城になるまでは、蒲生氏が治めたといわれている。
岩を切り出して積んだ石垣や整備された遺構を目の当たりにすると、復元した城郭よりも城跡のほうが、想像力をはるかに刺激することに気づかされる。
城郭の規模は、田島の市街地から山城を含む3ブロックから構成されており、鎌倉時代の館跡なども含まれた大城郭の体をなしている。
それぞれの時代によってちがう機能と役割を担いながらも、すべてがリンクしているのだ。
山の頂にある本丸跡に辿り着くまでの道程は、岩盤に囲まれ、自然の地形を利用した山城ならではの醍醐味が味わえる。
本丸には愛宕神社があり、軍神が祀られている。
この山城を徹底的に整備したのは、かの直江兼続の弟・大国但馬守実頼(おおくにたじまのかみさねより)で、室町時代には、すでに城としての機能は万全で、当時の技術の最高峰をゆく城郭だったという。
城郭をぐるりと囲い込むように空堀と二重の土塁が長く張り巡らされ、削平した平場、曲輪、井戸跡など、見所は満載だ。
この城が、いかに政治、戦、暮らし、どの面から見ても、中心的な役割を担っていたことは、想像に難くない。
城の背景を知ってから見る桜は、感慨深いものになるにちがいない。
参考文献:鈴木 著「ふくしまの城」
田島町教育委員会編集・著者・西ヶ谷 恭弘
「史跡 鴫山城」
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