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わたしこんなの買ってはる
春を呼ぶイタリアワインの祭典『Vinitaly』
イタリア・ヴェネト
毎年4月初旬に開催されるVinitaly/ヴィーニタリーは、イタリア最大のワイン国際見本市。イタリア国内及び世界のワインが紹介される一大イベントである。開催地はロミオとジュリエットの街、ヴェネト州ヴェローナ市。
この期間、イタリアはもとより世界各国のワイン関係者、リストランテ関係者、ワイン愛好者がここヴェローナに集結する。
今年の出展社数はなんと4,215社(そのうち148社が海外)、全日程の来場者数は15万7,177人と発表された。
会場は州ごとに別れている。
さて、今年のこの見本市のテーマは「The word we love」。今世界中で声高に叫ばれている環境を意識したもの。つまりはワインを通して土地、環境、人間相互の関わりをテーマとしている。
そして「Anti Crisi」。“crisi”とはイタリア語で“危機”を意味する。現在世界中の深刻な問題である経済的な危機を取り上げている。
会場内は各州ごとにパビリオンが分けられ、皆お目当ての建物へと足を運ぶ。各ブースでは今年のヴィンテージワインを来場者に試飲させてくれるので、短期間で多くのワインの試飲のできる貴重なチャンスの時でもある。
同銘柄でも製造者により味わいに違いが出たり、ブースの担当者により説明の表現が異なったり…同一州内の建物だけでもじっくりと見て(飲んで?)周ると半日なんて軽く過ぎてしまう。
全ブースで試飲可能
全てのワインを試飲することなど到底無理なので、各パビリオンのお目当てのブースに寄り、新たなお気に入りを発掘する。
ワインのバイヤーでもない私は、この日(日曜日)の来場者の大半がそうであるのと同様、気になるワインの産地の建物に入り、ヒョロヒョロとあちこちに立ち寄り試飲する、といった感じ。こう飲み比べると、やはり違いがあるものだ、と思いながらも気づくとどれ位のグラスを空けているのか?(専門の人々は口に含むだけで全てを飲むわけではない)
ワインのラベルも美しいデザインのものが多い
こんな風なので、会場内は真赤な顔をした人たちでいっぱい。午前中はまだおとなしいにしろ、午後になるとあちこちで上機嫌な人たちが大きな声でおしゃべりが始まり、会場内は熱気でムンムン。暑さとほろ酔いで人々の赤ら顔は一層の拍車がかかる。
各パビリオンのなかでも、やはり人気のあるワインを産するトスカーナ、ピエモンテ、シチリアなどの建物はスペースも多くとられ、人も多く集まる。
こんなお茶目なブースも。
小学校の教室をモチーフ。
期間中は様々なイベントも催されており、ワインの将来を語るシンポジウムや各州ごとに特徴を説明する座談会やテイスティング会、ソムリエ協会によるワインを語るセミナーの開催など、興味深いものが目白押し。
日本からももちろん多くのワイン業者、レストラン関係者などが参加している。日本の大手百貨店はこのVinitalyと公式に契約を結んでもいるほどだ。
ワインだけではなくオリーヴオイルその他、食品の展示会場もあったりもする。ワインをベースにイタリア自産物の良いものが一同に会するイベントといえる。
各種催し物も。
イタリアはいわずと知れたワイン生産王国。このような大きな見本市に出展するのは大手の製造者のみならず、実はまだまだ知られていない小さな農家、つまり畑作りからワイン製造までを家族で賄っているような製造者たちの数のほうが多いのである。イタリアワインを支える“底”は果てしなく広いのである。
最終日を翌日に控えた4月5日の朝方、イタリア中部アブルッツォ州で大規模な地震が発生。死傷者の数は時間を追うごとに増加する。
同州のブースの担当者は皆早々と荷物を引き揚げ、故郷への足を速める姿が。
様々な珍しい形のパスタ。
災害は回避できないものとはいえ、日々の穏やかな生活を一瞬にして一変するもの。“日常”では忘れがちな“非日常”はいつ訪れるとはわらない。
季節の移り変わりを、当然のごとく楽しい雰囲気で楽むことができ、またそれを共有できる家族や仲間がいること。そしてささやかではあるが、ごくあたり前に毎日の食卓があること。
さらにはワインに酔い知れる環境に自らを置くことができる状況。日々の平安に感謝せずにはいられない。
改めて被災者の方々へのお悔やみを申し上げ、一刻も早く日常を復帰できることを祈るばかりである。
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特集 : わたしこんなの買ってはる 記:白浜 亜紀 2009 / 04 / 16