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わたしこんなの買ってはる
桜の頃のキノコ狩り・アミガサタケ
京都府・京都市
春といえば桜。桜といえばアミガサタケ。きのこ好きにとってはそうなるのである。桜前線とともに、アミガサタケ前線がやってくる。そうなると、きのこ好きたちの気ははやる。もう生えているか、もう大きくなっていると。そこで私は、母と友人と3人で、近くの里山にアミガサタケ狩りに行ってきた。
山の桜は遅い。まだちらほらとほころびはじめているところだった。その木の下に、アミガサタケが、ひょっこりと1本、しわしわで黒い頭を出していた。
ひとつ見つけると、目が慣れてきて、あとは次々と見つけることができる。この日は、3人で、あわせて約30本の収穫があった。私は9本持ち帰ることにする。獲物を手に、めいめいが家路につく。
その日の晩は、アミガサタケ料理だ。うちでは、生のアミガサタケを4本豪勢に使って、シンプルなクリームパスタを作ってみた。
中は空洞になっているので、たてに2つに割って刻んでいくと、まるでセンマイのようだ。
バターで炒め、牛乳と生クリームを加える。クリームに茶色がかっているのは、アミガサタケの色が出たのであろう。
これを、茹でておいたパスタによくからめて、口に運ぶと、いっぱいに広がるアミガサタケの香りに、うっとりとなる。豊かな香りと、クリームに移ったコクがおいしい。
きのこでありながら、一般的に日本で食されている他のきのことは、味の印象がかなり違い、例えるのが難しい。強いていうなら、異国の、古い石造りの町並みを散歩するようなイメージの香りとでもいえようか。
味にはうまみがあるが、ゴムのような独特の歯ごたえに関しては、きのこ愛好家の中でも賛否両論があるようだ。もっとも、生のものは、乾燥ものに比べて比較的歯ごたえの切れがよく、食べやすい。
残ったアミガサタケは、中が空洞なので、そのまま置いておくだけでも乾燥する。天日で乾燥し、シリカゲルと一緒に密閉して保存すれば、いつでも、いっそう香りを増したアミガサタケを味わうことができる。
こう書いていて、アミガサタケの味を讃えたい一方で、アミガサタケを狙うライバルが増えることも、ちょっと心配している。現に、今年は先客があったような様子で、腐葉土がひっくりかえされているような痕跡があった。
味には好き嫌いが分かれるきのこでもあるので、資源と自然を守るために、見つけてもあまり採りすぎず、食べる分だけを採っていくという心がけが必要だ。私たちも、来年のために、アミガサタケをすべて採らずに、山に少し残してきた。
また来年も、桜の頃には、私はあの里山に行くだろう。
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特集 : わたしこんなの買ってはる 記:堀 博美 2009 / 04 / 17